第24話 人間焼失
「宇多方」について語ろう。
桃乃華市の市民プールで、奇妙な事件が起こった。遊泳中の少女が突然、全身から火を吹きあげたのだ。火柱は水の中でも火勢をゆるめず、数分後には跡形もなく燃え尽きてしまったという。いわゆる、人体発火現象である。
監視カメラの映像を確認したのだが、少女は遊泳中、右腕にサポーターを装着していた。調べてみると、やはり、少女は「別界」からの「戻り人」だった。彼女の右腕には、VとCが重なった黒い刻印があったのだ。
少女は刻印を嫌い、手術で消し去るために、整形外科に通っていたという。もしかしたら、その行為が、「別界」の怒りを買ったのかもしれない。人体発火現象とは、刻印を消そうとした報いだったのだろう。
蛇足になるが、少女の灰の大半は、水に溶けこんでしまった。泳いでいた者の中には、少女の灰を誤って飲んでしまった者もいただろう。そのせいで神隠しにあったとしても、何ら不思議ではない。
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