第14話 化学工場
宇多方について語ろう。
桃乃華市の化学薬品工場で、爆発事故があった。有毒ガスの発生により、七人の死者が出た。遺族の要望という理由で、企業は死者の氏名を公開しなかった。
遺体を目撃した者には
爆発事故の被害者を調べ回った新聞記者がいる。
意外な事実が判明した。七人の履歴書はすべてデタラメであり、遺族など存在しなかったのだ。しかも、有毒ガスに人体を溶かすような成分はなかった。間違っても、クラゲ状になるはずがない。
まさか、七人の被害者は、人間ではなかったのか?
その後、新聞記者は取材中に失踪した。宇多方の事故を調べていて、神隠しにあうことは、決して珍しいことではない。
僕は偶然、この話を耳にしたのだが、「クラゲのようだった」という記述が気になった。確か、別界の獣にそういう形状のものがいる、と記憶していたからだ。(第4話「ステーキショップ」参照のこと)
これらを考慮すると、やはり別界がらみなのだろう。
さらに、宇多方の郷土史家の方から面白い話を聞いた。古い絵巻物の中に、クラゲに似た獣が出てくるというのだ。早速、確認してみようと思う。
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