第8話 宇多方ファッション


 宇多方について語ろう。


 桃乃華市や奈楽市に暮らす中高生の私服は少し変わっている。

 全国的な流行色やファッションとは無関係に、オリジナルのものを追及していると言われているのだ。


 ファッションの専門家によると、「中高生の多くは赤系のカラーを好み、できるだけ素肌を隠し、露出を避ける傾向にある」という見解を示した。


 赤には魔除けの意味合いがあるので、もしかしたら無意識のうちに魔物の気配を察知して、日常的に警戒しているのかもしれない。


 ただ、知人の戻り人は、異なる見解を述べている。

「赤は夕暮れを意味している」というのだ。黄昏たそがれ雀色時すずめいろどきという言い方もする。どこか物悲しく、郷愁をあらわす色だ。戻り人の言葉を借りると、「神隠しと関係がある」らしい。


 黄昏色に魅かれる者は、「あちら側」に誘われているのかもしれない。

「あちら側」とは言うまでもなく、境界線の向こう側である。

 戻り人によれば、黄昏色に支配されている、異空間を指す。


 前にも述べたが、その場所は「別界」と呼ばれている。



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