第7話 カーナビと道路標識


 宇多方について語ろう。


 宇多方のドライバーは皆、カーナビを愛用している。道の入り組んだ場所が多く、何度も訪れたことがあっても、道に迷ってしまうからだ。


 最新型のカーナビでも、まるで役に立たないことがある。うっかり表示にない路地に入ってしまい、同じ場所をグルグル回り続けてしまう。


 しかも、行き止まりにぶつかると、「吹き溜まりです」と言い出す始末である。言い間違いや聞き間違いではない。「行き止まり」ではなく「吹き溜まり」なのだ。


 宇多方では、同じ場所をグルグル回っていて、何とか戻ってきたら数日が経っていた、ということも起こる。


 おそらく、時空が不安定なのだろう。「吹き溜まり」では、とりわけ不可解な現象が起こりやすい。神隠しにあいやすいし、幽霊やUFOの目撃例も多い。


 山間やまあいに入ると、奇妙な標識を見かけることもある。「飛び出し注意」の標識に不気味な怪物が描かれていたり、「爆発注意」の意味なのかキノコ雲が描かれていたりするのだ。


 関係性は不明だが、恐竜らしきものが目撃されたり、謎の爆発音が聞こえたりすることがある。後者は、爆発音がしたはずなのに、その場所が見つからないという現象である。


 山間の奇妙な標識は、現世のものではなく、別界のものなのかもしれない。





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