第八話 体調不良

「休んだほうがいいよ、後は私達がやるから…」

 立ち上がると同時によろけた僕を心配したのだろうか、ラル会長が珍しく先輩らしく僕に語る。先程、サッス先輩にも心配されたばかりだ。

 優しさだとわかっている、だが、それと同時に必要とされていない気がして酷く寂しくなる。もしも、ここを追い出されたら僕の居場所はどこにもないのだ。

「大丈夫です!」

 僕は力を振り絞って答える。クラクラと揺れる視界も気を抜けば襲ってくる気持ち悪さも気づかないふりをする。認めなければ現実ではない。

「無理しないで!」

 ラル会長は僕が持っていた書類を取り上げ、サッス先輩へ投げつけた。案の定、書類は床に散らばり、サッス先輩はため息をつきながら拾い集める。

「まだ、頑張れます!」

「僕はきっと皆さんの役に立ちます!」

「才能に恵まれた先輩に何がわかりますか?」

「誰よりも頑張りますから」

「だから…」

 頭痛が判断を邪魔する。言葉を選ぶ余裕なんてなかった。ただ、思いのまま叫んでいた。いや、実際には叫ぶ余力すら残っていなかったかもしれない。

 呼吸が苦しくなり、床に倒れかけた僕をラル会長が慌てて支える。

 息をすることで精一杯な僕の背中を優しく擦ってくれる。

「もう、僕、死n」

 僕の口から漏れかけた弱音を阻止するようにラル会長は僕の口に指を入れる。

 その途端、静まりかけていた吐き気が猛烈な勢いで襲いかかった。

「どうして…」

 今にも消え入りそうな声で僕は叫ぶ。


 その後、保健室で目覚めるまでの記憶は全くない。

 誰の能力なのか分からないが僕は現実を確かめる前に気絶してしまったらしい。

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