第三話 生徒会長の光
「うそー!自家製なんですか?!ありがとうございます」
僕を生徒会室へ強制連行している途中、偉大なる生徒会長はすれ違った人に野菜を配っていた。どうやら、生徒会長の実家は農家らしく余った農作物は生徒にあげているらしい。
どうしてみんな当たり前のように受け取るのだろうか、僕には生徒会長がヤバい人にしかみえない。
「
「…いえ」
僕は首を横に振る。魔族の食べ物は魔力が溜まるので食べられない。そんな僕を察したのか生徒会長は「大丈夫だよー」と笑う。
「これ、両親の努力で魔族も異能力者も無能力者も食べられるよ。すごいでしょ」
ドヤ〜と効果音のつきそうな笑みに僕は拒否権を失い、野菜を受け取った。
「ありがとうございます。あと…その…」
「んー?」
「僕、ソウではなくてカナデです」
「…ん、そっか。…うん、ごめん」
先程とは違い、はっきりとしない返事に僕は不安を覚える。なにか不都合だったのだろうか。
「そういえば、生徒会長さんのお名前は…」
「入学式でもさっきのクラスルームでも名乗ったよ?」
「すみません、自分のことで精一杯で…」
「そっかそっか、私はラル。みんなにはラルちゃん先輩とかそんな感じで呼ばれてる。君も好きに呼んでくれていいよ」
「生徒会長なのにそんな呼び方…」
「大丈夫、大丈夫!失礼な呼び方は出来ないように能力で操作しているから」
笑顔で怖いことを言うラル会長はどうやら能力をいくつも持って生まれているようだ。羨ましいなと心のどこかで嘆く。
「鑑定スキルってどれくらい僕のことわかるのですか?」
「鑑定スキルを持っていないことや魔族であること…君はどれくらい自分のことを知っているの?」
「僕は…」
「魔族無能力者だと思っている?」
「はい」
「君は異能力者だよ」
ラル会長は悲しそうな微笑みを浮かべ囁く。一方、僕は人生で一番間抜けな顔をしていた。
僕に能力はない。それは何度調べても誰に診てもらっても変わらない事実である。
からかっているようにも見えないその瞳が何を意味するのか僕は全く分からなかった。
「着いた、いくよ」
ラル会長の合図とともに生徒会室の重いドアは唸るような音をたてて開いた。
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