変態からイタ電 もとい一献寺香良から着信 2
「……で、何の用ですか?」
「そうそう、君の<ユニークスキル>に関してだがね、先程、新たな解析結果が出た。聞きたいかい? 聞きたいだろう? そうだろうそうだろう。では言おう。君の<
魔力耐性、読んで字の如く魔力への耐性。つまり耐性があれば魔力を根源とするスキルによる被ダメージを下げたり、効果を弱めたりすることができる。
耐性には五段階あり、数値が大きくなるほど強力になるのだが、
「耐性のレベルは?」
「それはわからない」
「えっ」
「君の<魔力筋>には膨大かつ複雑な情報量が収められていてね、ちょっとやそっとじゃ解析できないのだよ。今は我が国自慢のスーパーコンピューター『那由多』を空いている時間にちょっとずつ借りて解析を進めているのだが、それでも一筋縄ではいかないね。私が今回のダンジョン攻略の現場に来れなかったのもこれが一因なのだよ。いやはや、忙しくって困っちゃうな~。これじゃデートの時間も取れないよ」
「へぇー、デートする相手なんていたんですね」
「なんだ? 嫉妬かい? ふんっ、つくづく私の美貌も罪作りだな。でも安心したまえ、私のモットーは『いい男には平等に』だからね、ちゃんと君との時間も作ってやれる。早速スケジュールに入れておこう」
どうやら
「いえ、結構です。とゆーかダメでしょ? 筋肉ムキムキのマッチョタフガイとはいえ俺、まだ高校生なんですけど」
「愛に歳の差なんて関係ないよ? 私は君みたいな花も恥じらい青春が青草のように匂う逞しい少年から腐りかけの朽ちかけの棺桶に両足どころか首までどっぷりつかっているクソジジイでも大歓迎だ」
「いや、そういうことじゃなくて、俺が言いたいのは法律的なことで、ってか口悪いですね」
「法律? あはははは! 私を誰だと思っている? 私は『ダンジョン攻略研究調査室』室長、一献寺香良だぞ? 一献寺香良! さぁご一緒に?」
「いや、言いませんよ。意味分かんないですから」
そんなバカっぽくて意味不明なノリに付き合ってられるか。マッチョの包容力にも限度がある。
「ふぅ、ノリが悪いな君は。そんなに厚い筋肉のくせに心は冷え切っているのだね。まぁ、そんなアンビバレンツなところも君の魅力的ではあるのだが。わかるだろ? たとえば普段は大人しい子がベッドでは激しく淫らだったりしたら? ギャップ萌えってやつだよ。君からはそれに近いエロティシズムがムラムラメラメラムキムキ漂ってるよ……えへへ、ズビッ。あ失敬、よだれが」
おいおい、こいつマジか!? さすがのマッチョもドン引きするしかない。
よだれって……つーか言わなきゃわかんなかったのになんで言っちゃうのかな!?
なんでもかんでも正直に口にすればいいってもんじゃない。場合によっちゃ戦争だって起こるんだから。
もういい加減相手するのも疲れてきたよパトラッシュ。ルーベンスの絵が目の前にあったら死んでたかもわからんね。
「『ダンジョン攻略研究調査室』の権力ならたとえ少年を毒牙にかけたとしても無問題なのだよ! なぜなら私を処分すればこの国のダンジョン研究は大幅に遅れを取ることになるのは目に見えているからさ! ビバ権力! 権力最高! 能見琴也くんも今回のダンジョン攻略に成功すれば、私みたいに、いや、私以上に権力を濫用するのも夢じゃないぞ! さぁ、君もダンジョン攻略に貢献して、強大な権力を私利私欲のために濫用しよう!」
まーだ言ってるよこの人……。
いや、でもしかし……一献寺香良以上に権力を濫用可能……それって、あんなこといいな、こんなこといいなと思ったらドラえもんも不要でやりたい放題できるってこと……!?
それはかなり魅力的……いや、イカンイカン!
なんてこと考えてるんだ俺!
◯ャニー◯多川みたいなこと言っちゃってる(というより既にやっちゃってるっぽい?)
マッチョたるもの清廉潔白とはいかずとも最低限の自制心は持っておきたいところだ。だって乱暴で横暴で権力振りかざすマッチョなんてイヤだろ? 主人公として間違ってる。それじゃただのジャイアンだもんな。ジャイアンは映画じゃないとただの悪ガキでしかないしね。
「あ、あともう一つ。君の所持ユニークスキル、<魔力筋>は体内魔力を常に全力で筋肉に変換しているようだ。だから君は常人より圧倒的にムキムキのゴリゴリの激烈マッチョになれるが、その代償としてこれからも未来永劫魔力を得ることはないだろう。魔力関係のスキルは金輪際スッパリ諦めるしか無いね。<魔力筋>は
一人で言って一人で笑ってる……あんたはまるちゃんの野口さんか。
「で、もう用は済みましたか? 忙しいんでさっさと切りたいんですけど」
「相変わらず冷たい男だね。せっかくこっちが盛り上げてあげたのに」
「誰もそんなこと頼んでないんですけどね」
「ふふっ、まぁ、これで君も少しは緊張が解れただろう? 冗談は良いよね。冗談は心を解してくれるからな。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないか? いかりしん――」
俺は通話を切った。昔なつかしくもあるのにわりと最近まで映画でやってたアニメのパロディが始まってたが遠慮なく切ってやった。
この冷たさもマッチョゆえの優しさだって、いつか一献寺香良にも気付いて欲しい。じゃないとこっちの身が持たない。マジで。
しかし一献寺香良は冗談だとか言ってたけど、一体どこからどこまでが冗談だったんだろう? 正直に言って、俺には全部冗談に聞こえなかったんだけど。
いくら本人が冗談だと言っても、既に俺の中じゃ一献寺香良は
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