レベルアップ! 陰キャも卒業! これもやっぱり筋肉のおかげ!?

「うおーっ!? マジかこれ~!?」


「うっそぉ! 桁ヤバー!」


「能見、マジか、これ……!」


「能見くん凄っ!」


「なにこれ!? こんなん見たことねー!?」


 俺のステータスを見て、場が再び盛り上がった。


 俺も自分のステータスを確認する。



 能見琴也


   レベル:18

   クラス:???

 ステータス:異常なし


    体力: 99221138

  スタミナ: 88793224

    魔力:        0

 物理攻撃力:100065437

 魔法攻撃力:        0

 物理防御力:103690002

 魔法防御力:        0


   スキル:<魔法不能症>? <龍殺しドラゴンキラー

   その他確認不可能スキル有り



 ドラゴンを倒したせいかレベルが上がっている。


 ステータスの方は……桁が多すぎて前の数値を覚えていないので確かなことは言えないが、多分上がっている。スキルも増えてるし。


 この『その他確認不可能スキル有り』とはなんだろう? やっぱバグってるのかな?

 でもたとえバグっていたとしても、ステータスはある程度信憑性があると考えていいと思う。じゃなければA級の魔物であるドラゴンを一撃で倒せるわけがない。数値の正確性はともかく、ドラゴンを一撃で倒せるだけのステータスが俺に備わっていることは間違いない。


「凄い……凄すぎる……能見くん、なぜこれだけの力がありながら、今まで黙っていたの?」


 師炉勇魚の宝石みたいにキラキラと澄んだ純粋かつ鋭い目で言われ、俺はちょっと狼狽した。

 言葉の柔らかな感じからして、師炉勇魚はおそらく純粋に疑問を口にしただけで俺を責めているわけじゃないとは思うが、美少女のきれいな瞳ってなぜかわからないけど圧力を感じてしまう。


「そーだそーだ! 水臭いぞノーキン!」


 グラは責めるようなニュアンスもりもりだ。多分、茶化しつつからかいつつなんだろうけど、なんとなくイラッとくる。


「えっ、いや、黙ってたってわけじゃなくて……なんて説明すればいいのか……」


「ごめんなさい、言い方が悪かったかしら。別に責めてるわけじゃないわ。いつそれほどのステータスを得たのか、どうやって得たのかが気になるだけなの」


 師炉勇魚はそう言うが、瞳の圧力は変わらない。

 おそらく本人の言う通りに責めたつもりはないんだろうけど、美人の目っておっかないよね? ヘビに睨まれたカエルみたいにビビってしまう。それともこれって俺が陰キャなだけか?


「いやぁ……うぅ~ん、俺もたしかなことはわからないんだけど……」


 とりあえず思い当たる節を語った。

 <魔力無能症>が発覚してからそれを補うために筋トレに勤しんだこと。

 ある日一晩にしてマッチョメンになったこと。

 マッチョメンになってから今日初めてステータスを確認するとおかしなことになっていたこと。

 バグを疑って石舟先生に相談し、やっぱりバグかもしれないし、マンポテンツ(笑)なので授業を見学することになったこと。

 それ以前のステータスはとても見せられないような悲惨なステだったし、それが急に桁違いのステになったからって、バグかもしれないのでとても他人に見せたくならなかったこと。

 これらをできるだけかいつまんで話した。


「つーことはさぁ……筋トレでそんなステータスになったってこと? う、ウソくせ~……」


 おそらくこの場の誰もが多少なりとも持っている疑惑をグラが露骨に口にしやがった。


「お、俺だって信じられねーよ! でも、そうなってるんだし、筋トレ以外に要因がないんだから仕方ないだろ!? ほら、実際にこの身体なわけだし!」


 見よ、このムキムキマッチョボディを!

 俺は各種ポージングで見せつけた。

 どーだ凄い説得力だろう?

 しかし、周りの反応はあまりよろしくない。

 うん、わかってる。多分俺だってそっちの立場だったら信じてないよ。

 でも、それ以外に本当に心当たりがないんだからしょうがないじゃない。


「た、たしかに肉体的には説得力があるんだけどさぁ、いや、でも筋トレでこんなバグったステータスになるかなぁ……?」


「私は信じるわ。実際にムキムキだし、ドラゴンを一撃で倒したわけだし、私たちを助けてくれた能見くんがそう言うのなら、私にとって疑う理由はないわ」


 またしても、師炉勇魚が助け舟を出してくれた。


「先生も能見くんの言っていることにウソはないと思いますよ。そもそも能見くんはウソをつくような子じゃありませんから」


「あ、いや、別にノーキンを疑ってるわけじゃあないんだ、疑問に思っただけで、あはは……」


 グラはバツが悪そうに苦笑いした。


 先生の加勢もあって皆納得してくれたようだ。

 皆、師炉勇魚の言葉は素直に受け止めるんだよなぁ。

 これがカリスマの違いってやつか。


「でも、私たちが能見くんみたいに筋トレしても、能見くんみたいにはなれないでしょうね。私が思うに、それは能見くんだけの才能だと思う」


 師炉勇魚が微笑を浮かべた。高山の可憐な花を思わせる小さな笑顔だ。初めて師炉勇魚に笑いかけてもらった。


 あれ? なんかやけに胸がドキドキする……。恋……!?

 ってわけじゃないとは思うけど、師炉勇魚の笑顔には男心をくすぐる危ない作用があるらしい。


「ひょっとしたら能見くんには未知の『ユニークスキル』が備わっているのかもしれないわね」


 ユニークスキルとは世界でも数人程度しか確認されていない珍しいスキルのことだ。平たく言えば『激レアスキル』だ。ユニークスキルは強力なのだが、珍しいだけに研究も進まず、発現条件や因子も解明されていない。


 そんなレアものが俺に備わってる?

 というより、急に備わったのか?

 そんなことってある?

 じゃ、この筋肉もユニークスキルのおかげか?


 にわかには信じられないけど、でも師炉勇魚が言うと信じてみたくなる。彼女の言葉はなにかやたらと説得力があるんだよなぁ。Cクラス冒険者だし、美人だし、両親が世界的な冒険者のサラブレッドだし。


 あ、ちなみに俺が絶賛患っている<魔力不能症>はユニークスキル扱いじゃない。なぜか? それは簡単、希少だけど貴重じゃないからだ。

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