第9話 ミリア
お嬢様が私に命令した。
でも失敗してしまい、少ししか蜜は取れなかった。
腕を組んで苛立っているお嬢様に頭を下げる。
私は蜜の入った木の葉の包を彼女に差し出した。
「申し訳ございませんお嬢様。鎌蜂に襲われ僅かしか蜜を入手できませんでした」
「全然蜜も取れなかった癖に無傷で帰ってくるなんて、あなた良い度胸しているじゃない」
私の髪を掴んで、お嬢様はヒステリックな声を上げる。私はそのまま振り回されて木の幹にぶつかる。周りにいるお嬢様のお仲間は私の姿を見て笑う。鋭いヒールのブーツで私の足を踏みつける。鈍い痛みが走るが、ここで声をあげてしまっては、彼女を喜ばせるだけなので必死に我慢する。
彼女は私から包を取り上げると、地面に叩きつけて足で踏みつけた。
「でもいいわ。私は蟲の産物なんて食べたくないもの。私はただあなたのその憎たらしい顔がズタズタになっているところが見たかったのに。なんなら、死んだって良かったわ」
「ダメだろ、リリア。こいつの良いところは顔と体力だけなんだからさ。荷物持ちがいなくなったら困るだろ?」
ニヤニヤしながらご主人様の許嫁は彼女を
「...さっさと荷物持って来いグズ」
「かしこまりました、ご主人様」
美しく巻かれた金髪を手で払うと彼女は許嫁と手を組んでさっさと先に進んでしまった。その後にお嬢様の護衛2人が続いていく。
「荷物が多くて大変だなぁ、まあせいぜい頑張れよ別嬪さん」
「ははははっ」
私はお嬢様と許嫁、護衛2人の合計4つの荷物を背負う。生まれた頃から体は丈夫だったので、持ち辛いがこの重さなんて苦ではない。
黙って彼らから離れた位置を淡々と歩き続ける。
私は幼い頃の記憶がない。気がついた時にはすでにお嬢様の奴隷だった。
彼女の館に優しくしてくれる人もいたが、お嬢様はそれに激怒し、彼らを処罰した。
それから、館の人たちは私を避けるようになった。
お腹が空いた。
いつも私に与えられるのはパサパサの携帯食料1本か彼らの食べ残し。
人間として扱われることなんてない。
空腹にならない、満たされない。
カインとシノのパンケーキ...美味しかった。
何年振りに甘いものを食べただろうか。
また彼らに会いたい。楽しかった。
お嬢様から逃げたい。
...でも逃げれない。
契約刻印がこの体にある限り。
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