第3話 同類
「えーっと。念のため聞きますけど、何かの間違いとかじゃないんですよね? もしくはドッキリとか……」
「間違いなんかじゃないよ。言っただろう? 迎えにいくって。それと、なんだい? ドッキリって」
あれよあれよという間に、王族の紋が施された馬車に乗り、目の前のニコニコしたイケメンとずっと目を合わせながら、辿り着いた王宮。
今まで通っていた区画ではなく、王族に住む豪奢な宮殿群がある区画へと馬車は進んでいく。
今までは王宮の中まで馬車で入れたことがないから、さすがは王族と、変なところで感心してしまった。
そして今は、フォン殿下、つまり私の婚約者らしい人物の宮殿の一室で、二人きり。
彼が王子様だということは疑いようがない事実だろう。
私ごときが王子様と結婚するなんて。
これが何かの間違いじゃないかと思うのも仕方がないことだと思うの。
「確かに、えーと……フォン殿下が仮面舞踏会でおっしゃったことは記憶しています」
「やだなぁ。殿下なんてよそよそしい。フォンでいいよ」
「さすがにそれは……フォン様ではいかがですか?」
「うーん。とりあえずはいいかな?」
先ほどからニコニコをやめないフォン殿下、違った……フォン様に、私は戸惑いを隠せなかった。
遺物のことで意気投合したのは理解できる。
だけど、たったそれだけで王子様であり、いくらでも相手が見つけられるフォン様が、私と結婚したいと思うだろうか?
正直、自分が逆の立場なら思わないけれど……
そんなことを考えていたら、フォン様は懐から板のような物を取り出し、私の目の前に突き出した。
途端に私の思考は別の回路に繋がる。
これはっ!
「これが何だかわ――」
「遺物ですね!! しかもこの紋様は、古い時代のものです!! 私も近くで見るのは初めてですが! わぁ……素敵ですねぇ。触りたいなぁ……触ってもいいですか? 触りますね?」
「もう触ってるよね?」
「なるほど! 指が触れたところに微弱な魔力の流れを感じますね。きっと接触型の魔術が施されているんでしょう。触るところで極々わずかに流れや強さが違いますね。触り方? 触る手順で何かが変わる仕組みなんですかね」
凄いなぁ。
これを研究したら、一体どんな魔術が作り出せるんだろう?
あー、研究したい。
研究したいけど宮廷魔術師を解雇されてしまったから、無理なんだよなぁ。
自分の世界に入り込んでいたら、笑い声で現実に意識が戻った。
どうやら、いつのまにかフォン様の手から遺物を奪い取り、勝手にいじくり回していたみたいだ。
そして、フォン様はそんな私を見てお腹を抱えて大声で笑っていた。
「あっはっはっは。いいね! やっぱり君は
「すいません。つい……でも、同類ってどういうことですか?」
「遺物が好きで好きでたまらないんだろう? 僕もさ。ずっと集めているんだ。小さい頃からずっとね。兄弟の中には無駄遣いだと呆れるものが多いけれど。それ、しばらく貸してあげるよ。どうだい? 僕と結婚したら、いつでも僕の所蔵している遺物を好きに見せてあげるよ?」
「ええ!? いいんですか!? します! 結婚でもなんでも!! 研究させてくれるなら!!」
フォン様からの夢のような提案に、私は即座に飛びついた。
王子様と結婚する理由が、研究したいから、なんて他の人が聞いたらどう思うか?
なんてことは、その時の私の頭にはなかった。
そして、王子様の妻になる、ということがどういうことかも。
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