第24話 詐欺師さんの過去がちょっと分かるみたいです

 碧は下を向いたまま。

 言葉を返せずにいた。



 暗闇の巫女は愉快気に言う。



「現実は貴方が思うほど綺麗に出来ていないの。余計なことはしない方が良いわよ」



「余計なこと、だと?」



「そう。余計なこと。……どっかの並列世界じゃ。とある奇人が。いえ、狂人が、伏羲の創り出した時代の流れから逸脱させたけど。その結果、英傑なき空白の時代に。違うわね、あの世界では逆ね。英傑が溢れに溢れた。戦渦の時代へと突入した」



 暗闇の巫女は目を瞑りながら。

 言葉を続ける。



「数多の並列世界を観測したけど。あそこまで酷い時代は見たことがないわ。確か、あの世界では、春秋六国しゅんじゅうろっこく時代って呼ばれているのよね」



 碧の目が大きく見開く。



「……春秋、六国」



 碧の脳裏に膨大な映像が浮かび上がる。

 膨大な光景と人物。

 そして、数多の戦場が浮かび。



 一人の少女と青年の後ろ姿が浮かび上がった。



 少女は聖女のような。

 気高い雰囲気を纏っており。



 其の側に控える青年は。

 覇者の風格を身に纏う。



「……嬢ちゃんに、っ」



「ああ、そうだったわね。貴方、前世であの世界にいたんだっけ。なら、アイツの名も知っているでしょう。人の身でありながら。伏羲に一太刀を浴びせた。六華りっかの國、宰相、りっ……」



「俺の前でソイツの名を口にすんじゃねぇ!」 



 碧の瞳が紫眼に光り輝き。

 声を張り上げる。


 

 聖者の圧とも呼べる。

 その圧によって。



 暗闇の巫女すらも僅かばかり。

 身体が硬直する。



「…………っ!」



 暗闇の巫女は冷や汗を流し。

 漏らすように呟く。



「まさか、此程とは、ね。……でも、やっと理解したわ。あの伏羲が。この者を調停者に任命した理由が」




 碧は周囲を見ながら。

 困惑した表情に変わる。



「つうか、何処だ。此処? あのクソ野郎何処へいきやがった。嬢ちゃんとの約束を違えた。あいつに。一発ぶん殴らねぇと気がすまねぇのに」



 碧が頭を抑えながら。

 状況を整理しようとしていると。

 妲己が揺らめきながら近づいてくる。



「詐欺師さん」



「……ん? 誰、アンタ。おっ、すげぇ美人さんじゃん」



「五月蠅いです!」



 妲己が袖から出した。

 なんかの宝具の布によって。

 碧の顔に布が巻き付き。



 強制的に窒息状態に陥らせる。



「…………!」



 碧の意識が落ち。

 首が垂れると。

 妲己は宝具を解除し。



 再び、青年を枕にして。

 再び快眠へと向かう。



「さてと、五月蠅い人も大人しくなったし。寝ますか。……ぐー」



 暗闇の巫女は困惑した表情で。

 倒れている三人を見据える。



「えっ、何、此の状況。と言うか、これどう収集つけたら良いの。……つうか、此の女、邪魔しかしてなくなくない」



 暗闇の巫女は困惑した表情のまま。

 玉座に座っていた。

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