第20話 感動の親子の再会です(勘当しました)

 青年が剣の柄に触れると。

 昆吾伯は笑みを浮かべる。



「おいおい。玉座の前で剣を抜くとは、本当に何も考えてねぇんだな」



 昆吾伯が言い終えると。

 憲兵が一斉に青年を取り囲んだ。



「はっ、てめぇこそ。この程度で俺が止まるとでも思ってやがんのか」


 

 青年が剣を抜刀しようとすると。

 碧は手で制止させる。



「ツンデレ。お前の怒りは分かるが。今は控えろ」

「うっせぇ。てめぇの都合なんぞ知らねぇよ」



 青年が剣を抜刀すると。

 眼前に立ちはだかった憲兵を斬り伏せる。



 昆吾伯が口笛紛いに言う。



「おお、やるねぇ。だが、助かったよ。俺が始末しなくとも、勝手に始末されてくれんだからな」



 憲兵の一人が斬られたことで。

 他の者が一斉に青年に斬りかかる。



 青年は口元を緩めて。

 迫り来る剣筋を避け。


 

 六名の憲兵を瞬く間に切り伏せた。



 青年は剣に付着した血を払い。

 昆吾伯を見据える。



「次は、てめぇだ。クソ親父」



 昆吾伯は含みを持った笑みを見せ。

 髪を掻き分けて言い放つ。



「だから、てめぇは馬鹿なんだよ。俺を殺したきゃ。寝首でもかきゃ良いだろうが。真っ向から殺そうとする時点で、頭が足りてねぇんだよ。その思慮の足りなさ。あの女そっくりだな」



「てめぇ!」



 青年が地面を蹴り飛ばし。

 昆吾伯の下に飛び込もうとすると。



 百を超える飛刀(クナイの様なモノ)が放たれ。


 

 青年は弾く為に後退を余儀なくされる。



「……邪魔すんのか、てめぇ」



 王の背後には王師おうしと呼ばれる。

 仮面を被った王の近衛兵がおり。

 長髪の男がゆっくりと玉座前の階段を降りる。



「……貴方は今。三つの大きな罪を犯しました」



 長髪の男は階段を降りながら告げる。



「一つ、玉座にて剣を抜いたこと。二つ、警備の者を斬りつけたこと。……そして、三つ。大陸の秩序を担う。伯の位ある者を討とうとしたこと。全てが死罪に当たります。覚悟はよろしいか」



「上等じゃねぇか。てめぇごと叩き斬ってや……」



 青年が言い終える前に。

 王の後ろに立っていた。

 仮面を被った髪の長い女性が。

 前に出ると。



 長刀の柄に手を当て。

 納刀音が高鳴る。



 数十の真空を纏った。

 太刀筋が放たれており。



 全ての太刀筋が。

 青年の五体に向かっていた。




「……っ!」


 

 青年は辛うじて躱すが。

 地面は深く斬りつけられ。

 壁に掛けられていた。

 青銅の剣は壁ごと斬り伏せられる。



 青年が荒い呼吸のまま顔を上げると。

 仮面を被った八名の者が。

 一斉に動いており。

 青年を圧倒する。



「……ば、馬鹿な。俺には、時代の加護が」



 長髪の男は青年の髪を乱雑に掴み。

 持ち上げて言う。



「幾ら、加護を得たとしても。闇雲に力を振るうだけでは、私らには敵いませんよ。我々、王師には魔術がありますので」



 青年が意識を失いかけると。

 長髪の男は乱雑に。

 地面に投げ捨てる。



「王よ。不忠者は誅伐しました。」

「そ、そうか。ご苦労であった」



「昆吾伯よ。話を聞くところ。この者は、貴方様の子息と類推されますが。我々が処分しても宜しいでしょうか」



「構わねぇよ。とっくに勘当してっからな」

「ざっけんな。俺の方から勘当してやったんだろう……」



「貴方の言葉は聞いてません」



 長髪の男は青年の額を地面に叩きつけ。

 気絶させる。




「さて、許諾を得たところですし。後は、この首をかっ斬るだけです」



 長髪の男が剣を抜くと。

 碧が手で制止を促す。



「その者の処理は俺がやる。だから、下がれ」



「……幾ら、暗闇の巫女の命とは言え。其れは出来かねます。王の前で狼藉を図った者を処分しなければ、夏の社稷しゃしょくに関わりますので」



「社食、社食、うっせぇな。俺が良いって言ったら。良いんだよ。其れとも何だ。此処でおっぱじめてぇのか」



「…………」



 長髪の男は仮面越しに。

 殺意を持った目で睨み付ける。



 碧は動じずに言い放つ。



「良いのか。此処で、俺らとやり合うって事は。妲己ちゃんの宝具がまた火を噴くことになるぞ。物理的に王宮に火が噴くぞ。本当に良いんですね」



 長髪の男は。

 妲己に視線を移すと。

 妲己は朗らかな表情で。

 鼻歌交じりに袖を捲っていた。

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