第13話 被害者担当が現れますよ

 あおいらが宮殿に入ると。

 宮殿は奥に行くほど損傷しており。

 


 天井は落雷によって。 

 殆どが燃え尽きていた。



「うわぁ。勿体ねぇ。これ売ったら。ぜってぇ、現世で資金周りになったのに」



 碧が砕け散った。

 青銅の祭礼品を見つめながら。

 進むと。



 簡易で造られたドアがあり。

 王師の仮面を被った男がドアを叩く。



「……暗闇の巫女よ。調停者を連れてきました」



 僅かな静寂の後。

 凜とした少女の声が放たれる。



「入らせなさい」



 王師の男はドアを開き。

 天井が突き抜けとなった。

 大部屋が姿を見せる。


 

 玉座に向かう。

 階段は崩れ落ち。



 階段の先には。

 素顔を見せぬように。

 簡易で造られたすだれがかけられていた。



 急ごしらえで造られた。

 椅子に座った。

 


 暗闇の巫女は。

 言葉を発す。



「よくぞ参られた。伏羲ふっきに誘われし、調停者よ。……先に聞くが。妲己だっきよ。何か、私に言う言葉はあるか」



「貴女に言うことですか?」



 妲己は心当たりがないのか。

 凄く悩みながら。

 思案し始める。



 暗闇の巫女は口元を噛みしめると。

 声色を上げて言う。



「そうだな。例えばの話だが。……宮殿を破壊し。私に落雷を落としたことについての。謝罪とか、謝罪とか、謝罪とか、あと、謝罪とか、言うべきではないのかな」



 妲己は思い出したかのように。

 ポンと手を当てて言う。



「はい、一つだけありました。……宮殿に飾っていた祭儀品。全部、安物でしたよ。青銅鏡の質も悪かったですし。剣には気泡も入ってました。こう言った宮殿には気品が求められるのですから。あんな安物を置くのは、メッですよ」



 少女は簾越しに分かるほどの。

 眉間に皺が寄り。

 緩やかに立ち上がる。



「こう見えても。私は寛大なのよ。頭上に落雷の一つや二つ。落とされても赦す程度には寛大なのだよ」



「落としたのは一本ですので。セーフ(?)ですね」



「……妲己よ。君は些か以上に、贖罪が足りぬとみた」



 少女の手元には簾越しに分かるほどの。

 神聖な剣が魔方陣から現れ。

 


 碧は直感的に不味いと思ったのか。

 妲己の首根っこを捕まえ。


 

 妲己の顔を。

 床にめり込ませる。

 勢いで叩きつける。



「ほんっと、すんません! ほんっと、此の馬鹿が、馬鹿すぎてすんません。妲己ちゃん、心を込めて謝るんだ! 心を通せばわかってくれるはずだ」


「はわわわわ」



「妲己ちゃん、なぁに気絶してんの! 起きて、謝るの。さぁ、早くぅ!」




 碧が必死になって。

 妲己の身体を揺すって目を覚まさせると。

 妲己の意識が戻り。



「……はっ」

 


 何かを思い出したのか

 目を大きく開き。



 土下座する勢いで。

 暗闇の巫女に謝罪する。



「ごめんなさい。こんなことをしでかして、赦してくれるとは思いませんが。本当にごめんなさい!」



 妲己の謝罪を見た。

 暗闇の巫女は。

 神聖な剣を魔方陣の中に収める。



「初めから、その態度でおればよいのだ」



 暗闇の巫女がそう言って。

 椅子に腰掛けようとすると。

 妲己が目元から漏れた。

 涙をなぞりながら言う。



「本当に、本当に優しい人です。落雷の一つや二つ。赦してくれるだなんて」



「言ったであろう。私は寛大だと」



 暗闇の巫女が得意気に言うと。

 妲己が天空を指さして続ける。



「さっき、頭を打って。思い出したのですけど。……あの宝具、打神鞭だしんぺん。特注使用で、時間差で二本目が落ちるのでした」



「……はっ?」


 

 暗闇の巫女が素の声で言い放つと。

 同時に。

 天空が一瞬にして暗転し。

 雷鳴が轟き始める。



「ちょっ! 今、神具しんぐ、しまったばかりだから。連続して出せないからぁ!」



 暗闇の巫女が素の声で焦りだすと。

 妲己が半泣きのまま言う。



「二本の落雷を赦してくれるだなんて。すごく寛大な人です」



「……だぁっきぃぃぃぃ!」


 

 暗闇の巫女の慟哭とも取れる。

 叫び声と共に。

 落雷が降り注ぐ。




 次回。


 暗闇の巫女。


 妲己にわからせられる。

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