第12話 詐欺師さん閃めつきます(トYOタ商事です)

 王都は高い城壁で覆われており。

 水堀が城壁を取り込んでいた。



 あおいは感嘆するように言う。



「はぁ、凄ぇな。この時代にこれだけの城壁が造れんのか」



 妲己だっきは人差し指を立てて言う。



「これは、版築はんちくって言う技法です。大雑把に言うと、土と砂を限界まで押し固めることで、あの城壁が造られています。強度も耐久性も凄く。ちょっとやそっとでは崩れません」



 王都の城門には。

 巨大な橋が架けられており。

 王師らが先導するように前に進む。



 城壁に入ると。

 


 数多の工房が建ち並んでおり。

 武具や土器がひっきりなしに造られており。

 造られた工芸品が立ち並ぶ。



 碧は興味津々に眺めていた。



「はぁ。凄ぇな。黄金の剣や白銀の剣がこんなに造れるとか。どんだけ豊かなんだよ此の国は」



「言っておきますけど。これらは、金や銀で創られているのではなく。青銅ですよ」



「そんなわけねぇだろう。昔、博物館でみたが。どれも緑がかっていたぞ」



「錆び付いたから。緑になっただけで。青銅の本来の色は、黄金か白銀色ですよ」



「ほう、なるほど」



 碧は悪い笑みを浮かべて。

 顎に手を当てる。



「……妲己君、一つ聞きたいのだが。青銅は確か、銅と錫で出来る筈だ。黄金にするには、一体どのような条件化で成り立つのかね」



「確か、銅に対して、錫が一割なら黄金色。錫が二割を超すと白銀へと変化します」



「成る程。良いことを聞いちまった」



「……詐欺師さん。言っておきますけど、元の世界に戻って、青銅を黄金や白銀で売ろうとしても、直ぐにばれますよ」



「事務所に大量に飾る分にも問題ねぇだろうが。実際に手に触れる場では本物を見せるからな。……良い投資詐欺思いついた。ゴホン。良いビジネスプラン思いついた」



「全国中継で刺されても知りませんよ」



「はっ、みくびんなよ。俺は、貧乏人や一般人からは巻き上げねぇよ。俺の標的はいつだって、下から金を巻き上げている。政治家などのあくどい奴らだ」



「詐欺師さんが一番あくどいと思いますよ」



「言っておくが、俺は正義の詐欺師なんだよ。あっ、間違えたメンタリストなんだよ」



「もう、詐欺師自認してるじゃないですか」



 妲己が冷ややかに突っ込むと。

 ポニーテールの王師の男が前に進み出る。



「宮殿まで案内します。付いてきて下さい」



 長髪の男に連れられて宮殿に向かう途中。

 関龍逢かんりゅうほうが急いて現れた。



「王さんよ。不味いことになってやがる」



「どうしたのだ。関龍逢よ」



「話は後だ。一先ず。王宮に来てくれ。貴族や官僚がアンタの判断を待っている」

「わ、わかった」



 桀王は関龍逢に連れられる形で。

 王宮へと向かっていった。



「なんだか、慌ただしいな。……にしても、なんだよ。この資材の山。道の真ん中に置きやがって。邪魔だなぁ」



「そうですよね。気配りが足りてませんね」


 

 碧と妲己が珍しく。

 意気投合していると。

 仮面の男が皮肉紛いに言う。



「申し訳ありません。……何分、何処ぞの誰かが宝具を使い。宮殿を半壊させた為、その資材の置き場に困り。一時的に置いているモノで」



「…………」



 碧と妲己は互いの顔を見合ってから。

 碧は言う。



「いやぁ、凄く良い所に置いてるなぁ。シンメトリー(左右対称)というのかなぁ。芸術的な置き方だ。なぁ、妲己」



「そ、そうですね。しん、寝取られ? ってやつですね。木材通しが寝取られあってます」



「……お前ら、馬鹿なのか」



 青年が呆れるように言い放つと。

 碧らは宮殿の前に辿り着き。

 仮面の男が言う。



「奥の宮殿にて、暗闇の巫女がお待ちです。気難しい方ですので。どうか、これ以上、機嫌を害さぬようにお願いします」 




 次回。



 暗闇の巫女。

 激高に堪える。

 お楽しみに。

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