Day.6 低カロリーでも美味しく食べれるダイエット料理
「今年もよろしく!」
グラスを合わせ、滅多に購入しない高級なシャンパンを一口飲む。正直2人はビール派だが、こういった特別な日には何となく飲みたくなる。
市販のものと合わせて作ったお節料理。
メインは2日前から塩麹で漬けこみ低温調理したローストビーフだ。大掃除の際によく研いだ包丁で薄く切ると、中がほんのりピンク色でしっとり柔らかく仕上がっている。
「うわー、美味しそう!」
「塩麹で漬けてあるから味はついてると思うけど、もし足りなかったらワサビとか塩でアレンジして」
慣れないシャンパンに早くも頬が赤くなっている果穂が、待ちきれずに一枚頬張った。
「美味しいー!うん、味付けバッチリ。これだけで十分美味しいよ!」
「良かった」
それから数日、仕事も休みでずっと家にいた2人は年末年始にありがちな自堕落な生活を楽しんだ。
朝からビールを飲んだり、贅沢料理に飽きた日はコンビニのカップラーメンを深夜に食べたりもした。
AM7:00
「きゃー!!」
お互い仕事始めの朝。
隼人がキッチンで朝ごはんの準備をしていると、洗面所から果穂の悲鳴が聞こえた。
「果穂!?」
慌てて洗面所に駆けつけると顔面蒼白な果穂が振り向く。
「た、体重が…3キロも増えている…」
「いつから?」
「去年の12月…」
「まぁ、クリスマスと正月があったからね…」
体重の増加にショックを受けた果穂は朝ごはんも進まない。
小麦色に焼けたトーストに、カットしたバナナが入ったヨーグルトが手をつけられるのを待っている。
「今日からダイエットメニューにするか!」
「ダイエットメニュー?」
「低カロリー高タンパク。それに限る」
「美味しいの?」
「俺が作るんだから美味しいに決まってるだろ?よし、夏帆。最後の晩餐だと思って朝ごはんしっかり食べろ」
さっきまで不貞腐れた表情だった果穂が、やっと納得したように朝食手を付けた始めた。
PM1:00
仕事がひと段落し、昼休憩がてら隼人は買い物に出た。スーパーに行ってから近所の精米店へ。
「あった。これこれ」
お目当てのものを購入し、足早に店を出た。
1月の冷たい風が頬を撫でる。
果穂とお揃いのカシミアのマフラーを巻き直して口元まで隠した。
帰宅し、米櫃に入っていた白米を2合ずつジップバックに仕分けし、冷蔵庫に入れた。
空になった米櫃に、今購入してきたばかりの玄米を流し入れる。
今日からしばらく玄米にしよう。
今朝、顔面蒼白な顔で振り向いた果穂の表情を思い出し隼人は小さく笑った。
PM6:00
パソコンをシャットダウンし、隼人が立ち上がる。そろそろ果穂が帰ってくるだろう。
キッチンに向かいエプロンを付けた。
炊飯釜に玄米を入れ、冷たい水でしっかり研ぐ。
「つめてー」
外の気温が低いせいか、水道から流れてくる水もとても冷たく手が痛い。
玄米モードで炊飯ボタンを押し、次はおかず作りだ。
豆もやしは袋から出し、一本一本ひげ根を取り除く。ひげ根は食べれないわけではないし、非常に面倒くさい作業だがこれをやるかやらないかで食感が全然違う。
ひげ根が無くなった豆もやしをホーローの鍋に敷き、その上に一口大に切った白菜も乗せる。この時点でかなり鍋がパンパンになるが、火を入れると量が減るので心配無用。
続いて、皮を剥いだ鶏胸肉を薄くスライスしていく。
「皮は鶏皮ポン酢にしよう。果穂は…食べないほうがいいかな」
自分のつまみように、ラップで包んで冷凍庫へ入れておいた。
スライスした鶏胸肉を白菜の上に乗せ、そこに料理酒をひと回しし、蓋を閉め中火でしばらく蒸し焼きにする。
「ただいまー」
玄関から声が聞こえ、果穂がひょこっとキッチンに顔を出す。マフラーと風で散らかった髪が可愛い。
「おかえり。もう少しで出来るからね」
「ありがとう!」
果穂が手を洗ってる間にキャベツ1/4を千切りに。そこにシーチキンと炒り胡麻を加えてよく混ぜる。少しだけ風味づけに少しだけ胡麻油を足して、刻み海苔を最後に振りかければ完成。
鍋からはもくもくと蒸気が立ち始めた。蓋を開け、白菜の芯の部分が半透明になったらokのサインだ。
「今日寒かったねー」
手洗いを済ませ、部屋着に着替えた果穂がリビングへやってきた。
「何運べばいい?」
「ポン酢とオールスパイス持ってって」
「了解!」
果穂が調味料を運び、隼人は取り皿と箸を。そしてキャベツとツナのサラダと、鶏肉の野菜蒸しを、鍋ごと運んだ。
「わぁー、蒸し鍋?美味しそう!」
「これならお腹いっぱい食べても大丈夫。そして、今日からはこれです」
そう言って茶碗に盛り付けた玄米を見せる。
「もしかして玄米?」
「そう。玄米の方が血糖値も上がりにくいし、食物繊維が豊富だからダイエットにはいいよ」
「ほほー。それは楽しみですな」
「でも食べ過ぎたら意味がないからね」
「心得ております」
テーブルに着き、今日からはハイボールで乾杯だ。
層になっている蒸し野菜と鶏肉を鍋底から豪快に取り分け、まずはポン酢に付けて食べる。
「やっぱり豆もやしって美味いな」
「美味しいよねー。ひげ根取るの大変だったでしょ?マジありがとう。この鶏肉はもも?」
「ううん、胸肉」
「えー!すごくしっとりしてて柔らかいからももかと思った。胸肉ってもっとパサパサしてるイメージだったから」
「酒で蒸したのと、ゆっくり火を通したからかな?」
「なるほどね…。あ、これオールスパイスも合う!ご飯が進む味だ。…おお、玄米って意外と美味しいんだね」
隼人も果穂に続きに玄米を頬張った。久しぶりに食べたが、白米にはないしっかりとした歯応えと香ばしい香りが美味しい。
「キャベツのサラダも美味しい!よく噛んで食べるからお腹も満たされるし」
鍋いっぱいに作った蒸し料理もあっという間に無くなり、キャベツ1/4も全て胃の中へ。
「こんなにお腹いっぱいになっちゃったけど大丈夫かな…」
テーブルを拭きながら果穂が呟く。
「大丈夫だよ。シャンパンもカップラーメンも食べてないでしょ」
「確かに…」
お互い、年末年始の暴飲暴食を思い出して笑った。
PM10:00
残念ながら風呂上がりのアイスは今日から禁止になった。
その代わりドラマを見ながら暖かいミントティーを飲んだ。爽やかな香りが鼻から抜ける。
ふと思い立って隼人が、果穂にキスをした。頭にはてなマークを浮かべた果穂が振り向く。
やっぱり同じ香りがした。
To Be Continued
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