3作品目「初めての体育祭」

 風になびく新緑あふれる5月。

 GWを終えたこの学校では……。

「さぁ〜始まりました!創造高校『体育祭』っ!!」

 各科カラーにデザインされたTシャツとタオルで盛り上がる、日々運動を全然しない人達の運動日である。


「あっちぃ……」

 日向に野ざらしの生徒席は、日焼けを気にする男女にとって最悪の場所である。

(道具係にそろそろ行こうかな)

 と席の前を通り過ぎようとした時、ふと1人でスマホを弄る青年が目に入った。いつも普通科の授業で、最前列で堂々と寝ていると噂の子。

「ねぇ」

 とっさに声をかけてしまった。上がったその顔は、天然パーマのハーフのような整ったメガネ男子。

「友達にならん?」

「……え、別にいいけど」

「ライン交換しよ」

 急に声をかけられた柄斯波 世流は驚いた。まさか自分に来ると思わなかったから。


 夢無はるんるんで入場口に歩いていった。集団を避けて暇を潰している宝和里が、こちらに駆け寄ってくる。

「よっ なんかいいことあったん?」

「うん 友達できちゃった」

「ヤッタネ」

「そろそろ仕事だから行くわ」

「いってら〜」


 毎年、科ごとに争うこの比較的平和な行事だが、M科が毎年圧倒的優勝をしていた。

 ただ今年から何故か勝てなくなっていき、今年はZ科が優勝した。


 閉幕式が終わり、夕暮れ時。

「夢〜 帰ろうぜ〜」

「自販機でお茶買ってていい?」

「水筒飲みきったんか」

「午前中には飲みきったわ」

「草 俺も買お」

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