第77話 今度は必ず
「エド! 往診の準備お願い!」
「急になんだよ。往診の予定とか入ってないぞ」
「外を見て! バートさんが走って来てる!」
バートさんか村長さんが走って薬局に来る時は必ずと言って良い程なにか起きています。考えたくないけど、今回も村の人になにかあったと考えた方が良さそうです。
「なにがあったんですかっ」
調薬室から見える窓の外、見慣れたスキンヘッド姿がはっきりと確認できたところでバートさんに向かって叫びました。
「急患ですか!」
「……森で……た!」
「なんですかっ!」
「森で若いのが蛇に噛まれた!」
ああ。やっぱり。こんな時にこの言い方は不謹慎かもしれないけど私の第六感はこの村に来てだいぶ研ぎ澄まされたようです。っていうか蛇ってなによ!
(毒の有無が重要なんですけどっ)
バートさんを責める訳じゃないけど心の中で悪態をつく私は薬棚から解毒薬と傷薬を取り出し、往診かばんに詰め込みます。噛んだ蛇が毒蛇か否かで処置が変わるけどこの二つがあれば応急処置は出来ます。あとは状況に応じてウチへ運ぼう。
「アリサさん! 一緒に来て下さい! エドは留守番お願いっ」
二人にそう指示を飛ばしてかばんを手に私は薬局を飛び出します。お店を出るとすぐにバートさんと合流し、村の東に広がる森へと急ぎました。少し後ろをアリサさんが追掛けて来るけど待ってる暇はありません。蛇の種類が分からない以上、一刻も早く処置をしなければなりません。
「バートさんっ。噛んだのは毒蛇ですか!」
「分からんっ。オレも森にいた奴から聞いたんだ!」
「分かりました! 急ぎましょう!」
バートさんも急を要する事態だと理解しているらしく、急ごうと言う私に合わせて走るスピードを上げてくれます。
(……絶対助けるから)
息が上がりながらも走るスピードは緩めず、一秒でも早く患者さんが待つ森へと急ぐ私は心の中でそう誓います。村に来て間もない頃、私は薬師なのに蛇毒の患者を助けられなかった。あの時と状況は違うけど今度は必ず助ける、その為に出来ることは全部やる。そう誓う私は走るスピードは緩めず、息が上がるのを堪えて患者さんが待つ森へと急ぎました。
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