Karte12:だから、待っていて
第53話 もしかして・・・?
親愛なるソフィー
村での生活は相変わらずのようだね。楽しくやっているようで安心したよ。
ハスラーと繋がった薬師がいたそうだね。キミに危害が及ばなくて良かったよ。これからもこういうことはあるだろけど、決して深入りはしないようにしなさい。キミの安全が一番だからね。
もうすぐ本格的な夏がやってくるね。暑さにやられないように体調管理は念入りにするんだよ。
しばらく忙しくなりそうなんだ。キミへ手紙を書くことも出来なくなりそうだけど、遠慮せずに手紙は書いて良いからね。それじゃ、また。
ソフィア・ローレンへ
雨が降り続く6月の終わり。湿気でジメジメしてなんだか気分まで暗くなりそうな今日この頃。
「ねぇ、エド。ほんとどうしたの。ここ最近ずっと難しそうな顔してるよ」
「そんなことねぇよ」
「そんなことあるから聞いてるんだけどなぁ。ねぇ、ほんとになにもない? 悩みがあるなら話は聞くよ?」
「アリサさんが配達から戻ってきたら話すよ」
「え? あ、うん。わかった」
なんでアリサさんの名前が出てくるんだろう。そういえば最近、二人の様子が変だったような。
「もしかして、アリサさんのことが好き?」
「なんでそうなるんだよっ」
「だって最近なんか二人の様子が変だったから。なんだったら応援するよ?」
「だから違うから! っていうかアリサさんはタイプじゃないから」
――ほう。アタシはタイプじゃないと。そうか
「そうです……あ」
「ソフィー殿、そこのバカに死なない程度の毒でも飲ませてやれ」
「い、いや。タイプじゃないってのは言葉の綾ってやつで……」
うん。これはエドが悪いよね。私だって目の前でそう言われたら怒るよ。さすがに毒薬は作らないけど、アリサさんの気持ちは良くわかるな。エドにはあとでお仕置きが必要だね。
「エドのお給金を引いておくのでそれで許してあげてください。薬師が毒を作るなんて洒落にもなりませんから」
「ソフィー殿がそう言うのであれば……仕方ない」
「エド、命拾いしたね」
「ああ。今回ばかりはおまえに感謝だな」
「――アリサさん、やっぱりお給金だけじゃ物足りないみたいですね」
「みたいだな。いっそのこと、半年ほどタダ働きでもさせたらどうだ」
「そうですね。人件費が減ればウチも楽になりますし」
ニヤッと笑う私とアリサさん。女の子を敵に回すと怖いんだよ? でも、エドのタイプがアリサさんじゃないと分かったから少しだけ助けてあげようかな。
「お茶の準備手伝ってくれたら許してあげるけど、どうする?」
「します! やらせてください!」
「それじゃ、用意してくれる? 私はこの薬作り終わったら行くから」
「あいよ。ソフィーはレモン、アリサさんはミルクで良いんですよね」
なんだかバツの悪そうなエドはお茶の準備をするため調薬室を出て行いきます。けれど私たちの好みをちゃんと覚えているのはさすがだね。一年以上一緒にいるだけあるよ。
「まったく、エドってたまに余計なこと言いますよね」
「……」
「アリサさん?」
「え? あ、ああ。そうだな」
「……アリサさん」
エドが部屋を出て行くと途端に表情を曇らすアリサさんに不安になる私。もしかしてアリサさん、エドのことが――?
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