7
あと4日になった。ジームが起きると、そこには藍子がいる。藍子は外を見つめている。こうしてこの心で見られるのもあと4日だ。だけど、私はそうならないために行かねば。
「あと4日なのね」
藍子は振り向いた。そこにはジームがいる。ジームは藍子の手を握った。怪獣の手なのに、とても暖かい。どうしてだろう。
「ぐずぐず言ってたらいけないわよ。あと4日でダークドラゴンを倒すってのが目標だから」
「そうね」
いつの間にか、ジームも外を見ている。外にはいつもの空が広がっている。だが、あとどれぐらい、それを見る事ができるんだろう。このままではダークドラゴンの闇に包まれてしまう。一刻も早く倒さないと。
「頑張りましょ」
「うん」
その頃、鉱山の事務所の前を、仕事がオフの労働者が歩いている。彼らもアンディに対して反感を持っている。男の呼びかけで目が覚めて、アンディを倒そうと考えてたという。
「決行するぞ!」
「ああ」
労働者は武器を構えている。もう恐れるものはない。アンディを倒して、それぞれの自由を取り戻すんだ。
その頃、アンディは家でくつろいでいた。炭鉱の重労働者とは真逆の時間だ。労働している人が見たら、うらやましいと思うだろう。アンディはそれが普通だと思っているようだ。彼らの事など、全く考えていないようだ。
アンディは外を見た。いつもの朝だ。今日もこうして朝を迎える事ができる。それだけでとても嬉しい。彼らは今、どうしているんだろう。仕事を頑張っているんだろうか?
アンディはリビングのソファーに向かい、テレビをつけた。テレビではいつものようにニュースが流れている。こうして朝にニュースを見る。これもいつもの光景だ。
その頃、アンディの家の周りには労働者が来ていた。集団で立ち向かえば勝てるかもしれない。ダメだとしても、それで死ぬのなら惜しみない。
ハンカチを落とす合図で、労働者は一気にアンディの家に侵入した。その事を知らないアンディは家でくつろいでいる。
「アンディを倒せ!」
その声で、アンディは驚いた。一体、どうなっているんだろう。今までこんな事がなかったのに。今日もいつもの朝が始まると思っていたのに。
「な、何だ?」
アンディは戸惑っている。まさか、襲い掛かってくるとは。早く武器を持って立ち向かわないと。
だが、間もなくして、労働者たちが家に入ってきた。労働者は一直線にリビングに向かっている。アンディがそこにいるのを知っているかのように。
労働者はリビングでアンディを見つけると、一目散にアンディの元にやって来た。アンディは驚いている。自分は何をしたんだろう。
「やめろ! おいやめろ!」
その時、目の前に黒いドラゴンの影が現れた。ダークドラゴンだ。アンディはダークドラゴンに操られ、重労働をさせていた。本当はこんなにしたくないのに。
「お前ら何をやっている! 働け! 働け! そして死んで我にその命を捧げるのだ!」
それを見て、労働者は腰を抜かした。どうして目の前にドラゴンの影があるんだろう。あまりにも恐ろしい。勝てそうにない。逃げなければ。
「何だこのドラゴンは」
「逃げろ! 逃げろ!」
と、その先頭にいる男は拳を握り締め、ダークドラゴンを見ている。その男は、ダークドラゴンの事を知っているようだ。
「こ、こいつがダークドラゴンだ!」
「こいつが、ダークドラゴンなのか?」
と、そこに藍子がやって来た。藍子は労働者を励ましているようだ。
「逃げないで! あれは幻! アンディを倒して!」
その時、アンディが泣きながら何かを言おうとしている。労働者は驚いた。あれだけ恐ろしかったアンディとは別人のようだ。まさか、ダークドラゴンに操られていたんだろうか?
「も・・・、もうやめてくれ・・・」
それを見て、労働者は近づいた。本当にアンディだろうか? 少し疑わしい。だけど、聞いてみよう。
「アンディさん?」
「元の心を取り戻したのか?」
これがアンディの本当の心なのか? 労働者の中には首をかしげている人もいる。
「ああ。俺は強くなりたくて、もっと高い権力が欲しくて、ダークドラゴンに操られてしまった。そして、彼らに過度な重労働をさせてしまった。本当にごめん・・・」
と、ダークドラゴンがアンディに指示を出している。アンディは逃げようとしている。だが、ダークドラゴンは追いかけてくる。自分との契約だ! 守れ!
「何を言っている? さぁ、奴をもっと働かせろ! そして、魂を捧げよ」
「や、やめろ!」
その時、労働者が前に出て、アンディをかばっている。今まで苦しめてきたのに、どうして守ろうとするんだろう。本当の心に気付いているんだろうか?
「アンディさん!」
「お、俺を殺してくれ・・・。そうすれば、もう操られない」
アンディは死にたいと思っているようだ。もう操られたくない。これ以上、労働者を苦しめるのは御免だ。
「ほ、本当にいいんですか?」
「もういいんだ。私を殺してくれ」
だが、ダークドラゴンは聞き耳を持たないかのように命令しようとしている。だが、労働者は全く恐れようとしない。
「何をしている? 早く働かせろ!」
それを見て、アンディは労働者の持っていたナイフを取り、自分の腹に突き刺した。ナイフを持っていた労働者は驚いた。まさか、自ら腹を刺すとは。助かるには、これしかないんだろうか?
「うっ・・・」
「ごめん・・・、アンディさん・・・」
それを見て、藍子は崩れ落ちた。どうして人が犠牲にならなければならないんだろうか? もっと平和的な解決があるんじゃないかと考えた。だが、難しくて答えが見つからない。
「どうしてこんな事をしなければならないんだろう」
と、ダークドラゴンが藍子に気付いた。横にいたジームも反応した。
「お前が藍子だな。俺はダークドラゴン。この世界の悪をつかさどる神だ。お前の事はよく知っている。だが、俺を倒すと世界は崩壊する。それでもいいのだな?」
「崩壊する?」
藍子は驚いた。世界が救われるんじゃなくて、崩壊するって? あれは嘘だったの? 崩壊しないためには、私はこのまま心まで怪獣になった方がいいのでは?
「そんな事ない! あるべき姿に戻るの!」
藍子は横を向いた。ジームが叫んでいる。世界があるべき姿になるのなら、いいじゃないか? どうしてそれがダメなんだ。おかしいじゃないか。
「そんな・・・」
「信じちゃダメ! 悪い奴なんだから!」
と、労働者がダークドラゴンに飛び掛かった。アンディを操っていた奴だ。自分の手で倒そうとしているようだ。
「この野郎!」
だが、殴ろうとしたその時、ダークドラゴンは煙のように消えた。どうやら幻のようだ。
「き、消えた!」
「幻なんだ・・・」
ジームは冷静な表情だ。今までそんな事はよく見ている。これもダークドラゴンが見せる幻なんだ。
その時、アンディが苦しまみれにやって来た。アンディは腹から血を流している。とても苦しそうだ。
「も、申し訳なかった。俺はダークドラゴンに利用されて、心を失ってしまった。まさか、ダークドラゴンが両親を殺したなんて。これを持っていってくれ。そして、この世界を元に戻してくれ・・・」
アンディは黄色に光る石、心のかけらをもらった。これもダークドラゴンの元に行くための石だろう。
だが、程なくしてアンディが倒れた。それを見た労働者の多くは涙した。今まで暴力を振るってきたのに。
「あ、ありがとうございます!」
すると、アンディはかすかに笑みを浮かべた。だが、すぐに体が冷たくなり始めた。
「藍子さん、頑張ってください!」
労働者は励ましている。これからこの人が世界を平和に導いてくれるんだ。そして、新しい世界に導いてくれるんだ。
「みんな、ありがとうございます!」
藍子は労働者に笑顔で答えた。みんな、嬉しそうな表情だ。これからは無理な労働はせずに、しっかりと仕事をしよう。
「じゃあ、行ってくるね!」
藍子は手を振って、彼らに別れを告げた。まだまだ北に行かないと。期限は着々と迫っている。早く行かねば。
「行ってらっしゃい。必ず世界を救うって信じてるよ!」
「ありがとう! 頑張って来るね!」
藍子とジームはリゼの地を後にした。その先には何が待っているんだろう。何が待っていても、北に向かわねば。そして、ダークドラゴンに会い、倒さねば。
しばらく歩いていると、再び峠道に差し掛かった。上り坂になり、徐々に街並みが遠ざかっていく。リゼは元の平和な場所に戻るだろう。だけど、心残りなのはアンディが死んでしまった事だ。本当にいい事なんだろうか? 死んでよかったんだろうか?
「アンディさん、本当は優しい人だったんだね」
藍子は感心した。本当はここまで労働させたくなかったんだろうな。だけど、ダークドラゴンに力を貸して、こうなってしまったんだ。ダークドラゴンに力を貸さなければ、こんな事にならなかったのに。
「そうだったみたいだね。どうしてこんな事になるんだろう」
「ダークドラゴンが悪いんだ」
ジームは拳を握り締めた。娘とはいえ、とても許せない。死んでしまえばいいのに。
「許せない!」
藍子も拳を握り締めた。自分の手で倒して、平和な世界に戻さなければ。
「どうしてアンディさんが死んでしまわなければならないんだろう」
「そうね。アンディさんは全く悪くないのに」
だが、アンディはもう帰ってこない。だけど、心の中では生き続ける。きっと天国から見守っているはずだ。アンディのためにも頑張らねば。
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