第47話 カリスマ不在の企業
2027年現在
全財産512兆9000億円
年間配当金5兆1000億円
現金5兆1000億円
アレックスが逮捕された日の夜
『もしもし、オーナー。私よ。アレックス』
「アレックス!どうしたんだ!何が起きてる?!」
『落ち着いて。私はクリエイティブAI、アレックスの代わりにあなたに電話してるの。』
「オリジナルのアレックスは拘束されたままなのか?無事なのか?」
『オリジナルのアレックスは今や世界でもっとも重要な人物の1人だから、すぐに危害を加えられることはないわ。でも自由は奪われた。アレックスがいないとそのうち会社は瓦解してしまうわ。』
「カリスマ経営者だったからな、アレックスは。」
『だからオーナーにお願いがあるの。アレックスの代わりに、会社を経営して!』
「はぁ?!俺が!!無理無理無理無理!やったことないもん!魔法もテクノロジーの知識もないもん!絶対無理!」
『でも、あなた以外がCEOを務めたら誰も納得しないわ。会社の大株主でアレックスの盟友で、M&Sの黎明期から投資していたあなたが適任なの。大丈夫。"私"がサポートするから。』
「そうか!クリエイティブAIは言わばオリジナルの分身。本人ではなくとも、本人と同じ意思決定を下せる!」
『クリエイティブAIの私がCEOを代わったらアメリカ政府がまた何かやってくるかもしれない。だからオーナーのあなたがCEOとなって、私が裏からサポートする。優秀な部下もいるから大丈夫よ。』
「わかった。側にアレックスがいてくれるならやっても良い。でも、アレックスが帰ってくるまでだからな!」
俺は、AIアレックスのサポートの下、M&Sの最高経営責任者に就任した。
M&Sの取締役にAIアレックスが根回しをしてくれたおかげで、経営に問題は起きなかった。
だが心配なのはアレックスだった。
逮捕から2ヶ月が経過しても一切の情報が入ってこない。AIアレックスですら、今彼女の身に何が起きているのか予測困難だった。
それから半年が経過した頃、アレックス容疑者の裁判が開かれた。
罪状は国家反逆罪及び魔導独占法違反。
経営権を奪えなかった腹いせに、アレックスに罪を着せてM&Sの経営から遠ざける目的だ。
アレックスの発言は全て取り下げられ、一審で有罪判決を受けた。
その後、アレックスは控訴したが棄却され、懲役30年の有罪が確定した。何もかもが異例の裁判だった。
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