第44話 新たな敵


2025年現在

全財産381兆3000億円

年間配当金8兆6000億円

現金10兆2000億円






日本株の大復活によって、俺の資産も急拡大した。



以前は全資産の90%をM&S株が占めていたが、現在は35%程度に収まっている。M&S以外の保有株が成長したおかげだ。






テレビやインターネットのニュースは平和そのものだった。


芸能人の不倫。


東京オリンピック開催の是非。


アイドルたちの食レポ。




不景気だった頃よりも話題が無い。



だが、それで良いんだ。あの頃よりもよっぽどマシさ。今、未帰が生きていたら幸せだっただろうか。



未帰みたいな子、少しでも減らせたかな。



考えてみたら、俺の人生でまともに話した人は未帰と・・・




そこに、アレックスから連絡が来た。


「ハロー、オーナー。」


「やぁアレックス。ちなみに"オリジナル"の方かい?」


「私はAIじゃなくて、オリジナルよ。ちょっとあなたに相談があって。」


「珍しいな。アレックスが俺に相談だなんて。」



「あのね、アメリカ政府がうちの会社を狙ってるの。裏から操作しようとしていたけど、私がなんとか食い止めてた。だけど今度は会社の株を購入して正々堂々と表からコントロールしようとしてるわ。」



「・・・ボケたか、アレックス」


「ボケてない!真面目よ!」


「お前も、ディープステートとか信じてるタイプか?」


「え?でぃーぷすてーと?おばあちゃんには最近の言葉は難しいわ。」


「自虐ジョークを言える余裕があるんだな。」



「私をそこら辺の陰謀論者と一緒にしないで。証拠に今から資料送るからよく見てよ!」



アレックスからM&S社の有価証券報告が送付された。



株主構成を眺めてみると、筆頭株主は俺で8%、第二位がSWFで6%、第三位がアレックスで3%となっていた。


『SWF』ってなんだ?聞いたことないぞ。




「Sovereign Wealth Fund 。通称"SWF"。わかりやすく言うと、政府系ファンドね。」


「おい、嘘だろ。。」


「私は今までケビンの遺言通りに禁忌の魔法の使用を極力遠ざけてきた。でも新技術を開発するたびに政府から魔法開発の提案があったの。その"提案"は次第に"お願い"になって、最近は"警告"に変わったわ。」


「ゾッとするな・・・」


「それから、アメリカ政府は私への要求の代わりに、我が社の株式を購入し始めた。最初は数百億円単位で、次第に数千億、数兆円に増えていったわ。去年は5兆円も買い付けてきたのよ!」


「筆頭株主がアメリカ政府に変われば、経営権を握られる可能性があるのか。。」


「"可能性"じゃない。確実な未来よ。」


「だけどさ。M&Sの時価総額は今や1500兆円。経営権を握るには1/2以上の株式を保有しなきゃいけないんだから、現金で750兆円が必要になるだろ?さすがのアメリカ政府だって750兆円を簡単に用意できるとは思えないけどな。」


「いいえ、経営権は無くとも拒否権があれば政府の目的は達成できるわ。拒否権の行使に必要な株式の割合は1/3。現在政府は我が社の株の6%を保有しているから、残りは405兆円分。その金額を買いつけられたら、うちは実質政府の物になる。」



「政府が拒否権を持てば、アレックスは政府の意向を拒否できなくなってしまうというわけか。そうなったら、禁忌の魔法の研究が再開されてしまう。」


「世界が危ないわ。オーナー、お願い。助けて。私だけの力じゃ、どうにもならないの。」


「助けてって言われてもなぁ。相手はアメリカ政府だろ?規模が違うよ規模が。」


「あなたねぇ。個人金融資産381兆円でしょ?アメリカ政府が相手でも対等に渡り合えるわよ。」


「え、そうなのか?!」


「アメリカ政府が保有する資産は莫大だけど、自由に動かせる現金はそんなに多くないわ。一気に数十兆円を買い付けるなんてことは簡単ではないはず。」


「そうか。だけど、さすがにM&S社の株式の1/3を買えるほどの余裕は俺には無いぞ?」


「オーナーと私の株式を合わせたら11%。だから残り22%、約330兆円分の株式を購入できれば、私たちが拒否権を行使できる。2人の力を合わせれば、1/3の保有はギリギリ到達できなくはないんじゃない?」


「確かに。だがM&Sの株は時間の経過でどんどん上昇していく。悠長に買ってる余裕は無いぞ。」




「そうね。。何か方法は無いかしら。」


「俺に良い考えがある。」

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