第38話 減らない資産
2020年現在
全財産163兆3000億円
年間配当金3兆4000億円
現金10兆5000億円
このままじゃ俺だけが金持ちになってしまう。なんとかしないと。
俺は"意識して"お金を使ってみることにした。敢えて無駄遣いするのだ。
1月
移動は全てタクシーにした。運転手にはさらにチップで100万円払おうとしたが、警戒されて受け取ってもらえなかった。
食事は3食とも銀座の寿司や焼肉を目一杯食べた。ついでにその場にいた客全員分の支払いをやっておいた。
夜はキャバクラに行ってキャスト全員にドンペリを振る舞った。気を良くした俺は1000万円をアタッシュケースから取り出してそこにいた客やキャスト、スタッフにプレゼントした。
そんな生活を1日やってみて、使えたお金は約2000万円だった。
こんな生活を1ヶ月続けて、なんとか5億円を消費できた。日本経済を回しているという実感が湧いた。
2月
1月分の配当金が振り込まれた。その額、約2000億円。
絶望した。
あんなに大変な思いをして使った5億円の400倍もの金額が何もせずとも勝手に振り込まれる。
今月は1兆円以上使わないと減っていかない。
・会員制最高級ホテル ベイコース倶楽部
会員券1億円、年会費2000万円
・超高級スーパーカー ファラーリ
新車で6000万円
・鎌倉と渋谷に別荘を建築
総額8億円
・プライベートジェット
50億円
2月はなんとか60億円を消費できた。全財産使い果たしたような気分だった。
3月
2月分の配当金が振り込まれた。約2500億円。
どうやっても金が減らない。
焦った俺は、ここで不動産を購入した。
・六本木の高層ビル ヒルズ六本木
購入価格1800億円
・渋谷の複合型商業施設 ヒカリニ
購入価格1600億円
・池袋の高層ビル サンシャイン800
購入価格2600億円
当然、現金一括払いだ。これで今月は6000億円以上使うことに成功した。
4月
3月の配当金が振り込まれた。6000億円。3の倍数月は配当金が多い。たったの1ヶ月で前月のビルの購入費用が返ってきてしまった。
そこで俺は次の作戦を思いついた。
スポーツチームの購入だ。
・前年度マ・リーグ優勝の薬天ゴールデンホークス
球団購入価格150億円、興行権300億円
・ヨーロッパ最強のサッカークラブ ADミラン
購入価格1800億円
この月、世界一の金持ちが、高層ビルを買い漁り、球団、サッカーチームを買収を始めているというニュースが流れた。
当然、好意的な報道ではない。
5月
もう、買うものが思いつかない。
今月も3000億円近い配当金が振り込まれる。加えて、3月に購入したビルのテナント収入もあった。
お金を使っているようで、結局俺のところに返ってきてしまっている。
球団やサッカーチームも同じだ。興行収入はオーナーである俺に返ってきてしまう。
6月
俺は消費をやめた。何してもお金は減らない。死ぬ気で使っても、翌月にはそれ以上の配当金が入ってきてしまう。
7月
6月は史上最高額となる6900億円の配当金が俺のもとに支払われた。
ダメだ。お金は減らない。使いきれない。
そうだ。
配ってしまえば良いんじゃないか??
そう思った俺は早速、M&Sデバイス上のコミュニティで、「1億円振り込みます!100人先着!」という文言を投稿した。
すぐに応募が殺到した。
俺はウッキウキで彼らの銀行口座にお金を振り込んだ。手作業だから100人にお金を振込むのも大変だった。これでもたったの100億円にしかならなかった。
しかし、実際に振り込まれた人たちがニュースに出演したことで、俺の「お金配り」は大きな話題を呼んだ。
8月
だが、すぐに事件は起こった。
俺の偽物が登場したのだ。
「1億円振り込みします!こちらまで連絡ください!」
新手の詐欺グループだ。大勢の被害者が出てしまった。
当然、責任の矛先は俺に向いた。お詫びに全ての被害者の被害額分を俺が補填した。それでもたったの数億円。
9月
株を売ることも考えた。
だが、大株主の俺が株を売れば市場はパニックになってしまう。
それに、150兆円を超える現金を持っていても到底使いきれない。
10月
慈善団体とユニセフに寄付を行った。
合計5兆円。
日本中から俺に非難の声が届いた。
「偽善者」
「金持ちの道楽」
「人に寄付して食う飯は旨いか?」
その通りだ。俺は偽善者だ。
11月
考えてみれば、俺が使ったお金は企業の財布に入って、その後、株主である俺に返ってくる。
壮大なマッチポンプじゃないか。
12月
今年の配当金が出揃った。
総額、3兆4000億円。
指数関数的に資産が増えていく。来年はもっと多くなりそうだ。
万策、尽きた。
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