第19話 魔法技術革命
1986年時点
全財産330億1500万円
年間配当金6億3200万円
ついに1985年年末、アメリカで第二世代M&Sデバイスが発売された。
遅れて日本でも1986年3月に発売された。
俺は発売日に買いに出かけた。
本体価格26万円というコンパクトカーに匹敵する高級品だったが、人々は販売店に行列を作った。
他人と感覚・体験・記憶を共有できるという全く新しいデバイス。人々の眼にはどう映っただろうか。
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1986年4月
M&Sの第一四半期決算が発表された。1月〜3月の3ヶ月間の進捗発表である。
売上高 1539億円
営業利益 25億円
毎年赤字だったM&Sがようやく黒字に転換できた。第二世代M&Sデバイスの売れ行きは好調のようだ。しかしまだこの段階では北米の売上のみでまだ日本市場での売上は計上されていなかった。
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第二四半期決算
売上高 3280億円
営業利益 258億円
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第三四半期決算
売上高 2536億円
営業利益 180億円
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第四四半期決算
売上高 3528億円
営業利益 256億円
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年次決算
売上高 1兆883億円
営業利益 723億円
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上場して僅か5年のM&Sが、日本最大の自動車メーカーで時価総額日本第3位の「モリタ」の売上を超えたのだ。
翌年、1987年のM&S年次決算では
売上高 1兆5360億円
営業利益 2350億円
この年はさらに営業利益率を改善させてきた。
しかし決算発表後、CEOのアレックスからサプライズ発表があった。
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「第二世代M&Sデバイスを持っているみんなは来年から魔法が使えるようになるよ!ジョークじゃありません。本物の魔法よ。どうやって使うかって?簡単。お近くのM&Sステーションに行って、欲しい魔法の機能をデバイスにダウンロードしてみて!紋章が無いあなたも簡易的な魔法が使えるようになっちゃうから!」
「魔法の使い方はみんなで考えてね。発売は来年の春から。期待しててね!」
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アレックスはさらっと話しているが、紋章が無い人間が魔法を行使できること自体が歴史を覆す発明と言っていい。
好きな魔法をデバイスにダウンロードして使用するという考えも画期的だ。
世界中の誰とでも体験・感覚・記憶を共有できるというM&Sデバイス本来の機能に加えて、今まで絶対に不可能だと思われていた魔法の一般使用が現実になる。
この発表直後、再びM&Sの株価は上昇した。
M&Sの時価総額は米国最大の通信会社BT&Tを抜いて8兆6000億円に到達し、米国企業の時価総額ランキングの第5位にランクインした。
景気の良いアメリカとうって変わって、日本では1985~1986年の2年間据え置かれた8.0%の高金利と、消費税の導入により、完全に経済が衰退してしまった。
日本政府と日銀は、不況の中で舵取りを間違えたのだ。
不景気の最中に利上げと増税は致命的だ。
日本はもう、復活できないかもしれない。
内閣総辞職後、日本で初めて社会党が政権与党になった。社会党を裏から支えたのは創始学会という噂もあった。ここに来て勢力を拡大させた創始学会の"1000万"という組織票は、投票率が低い日本の選挙において抜群の影響力を発揮し始めた。
この年、創始学会は日本の時価総額ランキング16位にランクインした。
株価は常に右肩上がり。毎年大幅な増配のおかげで、俺の年間受け取り配当額は8億円になっていた。
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