第18話 ハイパーグロース株


1985年時点

全財産31億4500万円

年間配当金4億4500万円





決算説明会の後だっていうのに、まるで映画館から出てきたかのような興奮に包まれていた。


投資家たちが口々に感想を話し合っている。


「世界が一変するだろう」


「MSの株は持ち続けろ。何があっても手放すな。」


「説明しようにも、言葉が出てこないんだ!」


「10万ドル?何を言ってるんですか、投資金額の桁が一つ足りませんよ!」


「wonderful!!もうこれに尽きるッ!」







静かに会場を去ろうとした俺のデバイスにアレックスが直接話しかけてきた。こんな機能もあるのか。まるで携帯電話だな。


「今日は来てくれてありがとう。投資家から見て、うちの会社はどう見えた?」



「早く第二世代M&Sデバイスを使わせてくれよ。今のこの気持ちを、ありのまま汲み取ってほしい。」



「言葉にしてくれないとわからないじゃない。第一世代のM&Sデバイスに体験共有機能は無いんだから。」



「俺はなぁアレックス。今日の説明会を聞いてさ。第三世代、第四世代のM&Sデバイスは何が出来るんだろうって想像しちゃったんだ。でも、一つ先のことですら全く予想がつかなかった。だからさ、どうしても期待しちゃうよな。M&Sには。」



「人が想像したことは全て形にできるよ。私が約束する。」



「ははは、凄いなぁ。」



「で、いくら投資するの?」



「俺が持ってる投資資金全部さ!というか、君に初めて会った日の夜にはもう全額投資してたんだ。今日はその投資判断が正解だったと答え合わせをしたところさ。」



「あははは!気が早いのね。投資判断は私の決算説明聞いてからにしてよ!でもありがとう。投資家っていう人種は1番理解できない存在だけど、投資してくれたってことは、最大の褒め言葉だと受け取って良いのかな?」



「そうだな。アメリカに来て本当に良かったよ。調べるだけじゃなくて、実際に『体験』してみないとわからないこともある。」



「次は日本にいても、アメリカを体験できちゃうよ!」



「本当に凄い物作っちゃったね。」



「あ、もしも株価下がっちゃったらごめんね。でも私、どんな時でも一生懸命頑張るから。」



「どうなろうと、俺の永久保有株だから。死ぬまで持ち続けるさ。」








その日、M&Sの株価は前日比+296%と噴き上げた。その翌日も、その翌日も上昇した。


どこまでも上がり続けるこの連騰記録はその後24日間も続くことになる。アメリカの株式が始まって以来の快挙だという。



弱冠22歳のCEOが率いる赤字企業に、みるみる投資資金が集まった。



さらに1週間後、米最大の投資銀行モンガルスタンリーは「弱気」から「強気」にレーティングを2段階引き上げた。



同日、投資銀行米国第二位のゴールドマングラックスは「中立」から「強気」にレーティングを引き上げた上に、目標株価を現在の3倍の価格に設定した。


有名投資銀行のアナリストレーティングが格上げされたことで株価は連日高値を更新し続けた。


俺の資産は瞬く間に100億円を突破し、さらにその後、毎日数億円ずつ増えていくという脅威の上昇を記録した。

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