第15話 魔導軍需産業


1984年時点

全財産25億9000万円

年間配当金3億3000万円






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魔法はかつて、ヨーロッパの一部の国だけで使用された呪術のようなものだった。


火を起こす、氷を作るといった簡単なものから、天候を操作する、人を呪い殺す、治療をするという高度な応用魔法も作られた。


先天的に紋章を体に刻まれた魔導士のみが使用できるのたが、そのあまりに強大な力はいずれ権力と戦争の道具に成り果てた。


それが、先の世界魔導大戦に繋がっていく。


最終的に、魔導国家であるイギリス・フランス・ドイツは瓦解し、ヨーロッパ連合という新しい共同体が組織された。


そして、生き残った魔導士は全てアメリカが保有することになった。


現在、すべての魔導士はアメリカの所有物なのである。


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なるほどなぁ。

魔導士はアメリカの所有財産なんだ。まるで"物"扱いだな。人権団体はこういうことにはダンマリなのかな?



それと俺は、世界で唯一の魔法を扱う企業を知った。



「バイオレンス・マジック」

ティッカーシンボル"VM"



世界最大の軍需産業企業であり、魔法を軍事利用している。



しかし、1950年の同盟国間戦争以降、世界から戦争は無くなり、軍需産業は衰退の一途を辿っていた。


そんな危機でも「どうせアメリカ政府が買い取ってくれるから」という理由で、VMの無能経営陣はなにも対策を打たなかった。


そのせいで投資家から見捨てられ、VMの株価は1973年を境にずっと下降し続けていた。





1981年、VMからスピンオフ(分社化)して、新しい魔法企業が誕生した。


「マジック&サイエンス(M&S)」である。


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分社化とは


複数の事業を持つ企業が事業の一部を切り離し、独立した会社を作ることを指す。


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だが、アメリカ政府は魔法の力を独占するため、世界で魔法の会社は一社に限定するという「魔導独占法」を制定していた。



この法律により長らくM&Sの株式上場は見送られていたのだが、アメリカ政府はVMを上場廃止し、M&Sの傘下に入れるのことで新規上場を認めた。





M&S上場当初は期待先行で株価が上昇したが、次第に人気が無くなっていった。


俺はそんな会社に興味が出てきた。



前年度の年次決算を調べてみた

売上高   1630億円

営業利益 -468億円



赤字か。まぁ元々の企業が怠慢経営だったから仕方ない。何を作ってる会社なんだ?



「魔法とテクノロジーの融合によって、世界に技術革新を引き起こします。M&Sデバイスは人とのより良いコミュニケーションを創造します。」



全く頭に入ってこない。なんだ、えむあんどえすでばいすって。コミュニケーションを創造っていうのも意味わかんねぇ。




だが、やる事もなく暇だったら俺は、海外旅行ついでにアメリカに飛んでみた。


どうせ円高なんだ。旨い飯、テーマパーク、本場のハリウッドを見てきてやる!ついでにM&S本社も見学だ!

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