第9話 配当金と複利


1979年現在

全財産6240万円




この5年で日経平均株価は3倍になった。もし日経平均株価に連動するような投資をやっていれば、その人はそれだけで資産が3倍になっている。誰でも簡単に資産を増やせる相場だ。


だが俺は、420万円からスタートして5年で10倍以上の6240万円に到達した。


しっかりと時代の勝者となる株を見つけて投資すれば、これくらいの成績を目指せるんだ。




・・・それだけじゃない。


投資の醍醐味は、「複利」にある。




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複利とは


元金によって生じた利子を次期の元金に組み入れる方式であり、元金だけでなく利子にも次期の利子がつく。したがって、各期の利子が次第に増加していき、雪だるま式に利子が増えていくことになる。


例えば100万円が1年で10%増えると仮定する。

すると、1年後の100万円は110万円となり、10万円増えた。しかし、2年後は110万円が10%増えて121万円となり、11万円増える。つまり、利回りが同じなのに1年目よりも1万円多く増えたのだ。


表にするとこんな感じ。小数点以下切り捨て

1年目 110万円

2年目 121万円

3年目 133万円

4年目 146万円

5年目 161万円

6年目 177万円

7年目 194万円

8年目 214万円


たったの8年で元金が倍以上になった。仮に元金が1000万円だったら、1年で増えるお金の量がサラリーマンの年収を上回っていくことになる。


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俺の保有株も時間の経過と共に複利で増えていく。しっかり銘柄分析して、堅実な経営をしている企業に投資すれば資産は雪だるま式に増えていくんだ。



家の窓から通勤中のサラリーマンの姿が見えた。


その先には売店で新聞を売るおばさん、タバコを買うおじさん、信号待ちの車、淑女のお召し物、お姉さんが持っている高級バッグ。



それら商品を売る企業がいて、そこに勤める人たちがいる。当然俺も企業の商品やサービスを利用する。最近、月立のカラーテレビも買ったしな。



この世界の全ての物やサービスは誰かの仕事で成り立っていて、その物やサービスにお金を払う人たちがいるから企業が潤う。企業は従業員に給料を支払い、残った利益から最終的に株主へ利益を還元する。


それは株価の上昇であったり、「配当金」なのだ。



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配当金とは


保有株式の数に応じて分配される現金のこと。たとえば1株あたり10円の配当が出た場合、100株持っている人は1,000円、500株持っている人は5,000円受け取れる。株式の売買で売却益を得るだけでなく、株式を保有し続けて配当金を受け取るのも株式投資で利益を得る方法のひとつ。


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現在、俺が企業から受け取る配当金は年間1000万円に達している。特に最近利益を上げた八川中央銀行や帝王石油は増配を発表して配当利回りが良い。



こういう配当を出し続けてくれる株は保有しているだけで大きな財産になる。



さらに、この配当金の使い道は自由だ。俺の生活費は全て配当金で賄えているし、余った配当金で新規に株を購入することもできる。


例えば最近、八川中央銀行の株を配当金で購入した。八川中央銀行から貰った配当金で、八川中央銀行の株を買う。すると、来年はさらに多くの配当金を受け取れるようになる。


まさに、錬金術。配当金×複利の力だ。




まぁ、このまま上手く行くとは思えないんだけどな。



『株は悲観の中で買え』


この格言には続きがある。


『人々が楽観している時に売れ』




この年、日本の政策金利は6%に達しようとしていた。

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