第3話 戦争と経済


全財産420万円



俺はこの世界の歴史を調べるため、図書館に向かった。


大雑把で良い。今この世界で起きてることの背景を知りたい。




『世界史年表-20世紀-』


とりあえずこの本でいいか。



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1914年~19年

第一次世界魔導大戦


日本・中国・露同盟国 vs 英・仏・独・米魔法国家連合国


結果は連合国側の勝利。


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1929年

魔導国家世界恐慌


株式市場の大暴落とハイパーインフレにより英・仏・独・米魔導国家は延べ5000万人以上の餓死者と自殺者を出す。通貨の価値が失われ、人々は金や米などの物資を求めるようになった。


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1939年~45年

第二次世界魔導大戦


日・米同盟国 vs 英仏独連合国


魔法だけに頼ることをやめ、工業化を推し進めた米国は日本と同盟を組む。一方、魔導国家世界恐慌に見舞われた英仏独連合国は経済を自力で再生させることはできず、ついに魔導力による戦争という最終手段に出た。


結果は同盟国側の勝利。人類の長い歴史の中で初めて魔導国家が敗北した歴史的な戦争となった。


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1950年

同盟国間戦争


日本 vs アメリカ


戦勝国同士の戦争が勃発。最終的にアメリカが勝利。その後、日本とアメリカで和平協定が結ばれ、アメリカが日本の戦後復興のための経済支援を行うことを約束した。


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なるほどなぁ。

歴史が同じなら投資で簡単に儲けられると思っていたが、そんな甘くはないようだ。



魔法があるせいなのか、歴史がだいぶ変わってしまっている。魔導世界恐慌っていうのは興味深いな。ここをもう少し詳しく見てみるか。



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『魔導国家世界恐慌』


イギリス・フランス・ドイツ・アメリカは、生まれつき紋章が身体に刻まれた魔導士が生まれやすい国家であった。これらの魔導士は特に戦争において極めて強力な戦力であり、魔導部隊10兵団で国家を1つ制圧できると言われていた。


そのため、これらの魔導国家は魔導士を「傭兵」として世界中に輸出することで収入を得ていた。その収入の規模は国内のすべての税収をも上回るほどであった。


しかし、1914年から始まった第一次世界魔道大戦において、近代化を果たした日本や中国の予想外の善戦により、戦争が長期化。全魔導士の約8割が死亡するという未曾有の危機が訪れた。


結果として戦争は魔導国家側が勝利したものの、多数の魔導士を失ったため、傭兵業による収入がほとんど無くなってしまった。魔導士以外にろくな資源や産業も無かった3カ国の財政は危機に陥った。そこでイギリス・フランス・ドイツの3カ国は通貨を統一して「復興共同体」を設立。


しかし、それでも国の財政は悪化の一途を辿り、法人税や所得税を大幅に増税した。その影響で経済が急激に冷え込んでしまう。そこで、この経済を立て直すために「復興共同体」は紙幣を刷り、市場にお金を供給し続けた。だが、これにより貨幣価値が大暴落してしまう。人々は価値の無い紙幣よりも、食べ物や貴金属を買うようになり、物価が急騰。10日で物価が倍になるというハイパーインフレを引き起こし、経済が崩壊してしまう。さらに「共同体」という形式をとっていたため、3カ国は連鎖的に破綻してしまった。


一方、同じ魔導国家アメリカは上記の3カ国と距離が離れていたことや、戦争前から国内の産業を強化、また資源や人口も多かったため、魔導国家世界恐慌の影響は限定的だった。


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なるほど、俺の金が異様に高く換金してもらえたのはこの恐慌のせいだったのか。


しかし、結局こっちの世界もアメリカが最強なのか。1929年の世界魔導恐慌も自力で乗り越えて、3つの戦争も全て勝利している。


元の世界も米国株が最強だったけど、こっちの世界も思考停止してアメリカに投資しておけば良いのか?「S&P500最強!」ってか?


まぁ冗談だけど。



魔法も使えない、特殊能力も無い、元の世界の歴史の知識も使えない。



俺が持っている、俺だけの武器はなんだ?この世界で生き残る方法はなんだ?



これからの人生戦略、真面目に考えみるか。

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