第2話 物価と賃金
全財産420万円
このお金で生きていくしかない。次は飯だ!
風俗街から少し出ると、国道が走っている。国道沿いには飯屋が必ずあるはずだ。
ほう、この世界にもラーメンがあるのか!汗水流して高度経済成長を支えた建設作業員たちのために作られた即席めし、ラーメン。
店に入るとタオルを巻いた男たちが黙々とラーメンを啜っていた。
この店はメニューも無いのか。サービス悪いなぁ。でもラーメン屋なんだから「ラーメン」くらいはあるだろ。
「ラーメンを1つ。」
「あいよ!」
異世界で食べたラーメンは格別に美味しく感じた。
なんというか、、初任給で高野屋の牛丼を食べた時の感覚に似ている。
誰にも頼らずに「1人で生きられた」って実感するんだよな。
「ご馳走様。勘定お願い」
「あいよ、100円ね。」
「はいよ、100円。・・・え?」
ちょっと待った。100円だと?ラーメン1杯が100円だと?!安すぎやしないか?!
腹ごしらえを終えた俺は、すぐに個人商店に入った。あることを確かめたかったからだ。
タバコケースの中の値段を見る。
マレボロ65円。元の世界だと値上げしまくって600円なんだぞ。
コクコーラ10円、新聞15円、トイレットペーパー2円。
特定の商品だけが安いんじゃない。この世界の物価全てが安いんだ。元の世界の1/10程度だろうか。
その時、新聞を手に取った俺は初めてこの世界の日付を知った。
『1973年3月18日』
そうか。俺が知っている元の世界との違いは、「魔法がある」ということ。
そして「50年も前の世界」ということだ。
物価が安いのは、50年分のインフレが起きる前の世界だからだ。
普通、物価は経済の発展と共に緩やかに上昇していく。物価が上昇するから、物を売る企業が儲かる
↓
企業が儲かるから、そこで働く人の給料が増える
↓
給料や企業の利益が増えるから、国の税収が増える
↓
税収が上がるから、社会福祉を充実させられる
この循環の繰り返しで国は発展してきた。しかし元の世界はこの好循環が崩壊していた。
物価が上がらないから、企業が儲からない
↓
企業が儲からないから、給料を上げられない
↓
給料上げられないけど、増税する
↓
増税されるから、企業も人も苦しい
↓
苦しいから、2人分の仕事を1人にやらせる
↓
ブラック企業化
あれ、ちょっと待てよ?
物価が安いということは現金の価値が高いということだ。じゃあ俺の全財産420万円って、本当は10倍くらいの価値ってことか?
1000万円で買った純金がここに来て420万円になっちゃったけど、実は10倍の4200万円の価値があったということか!!
元値から4倍超の大化けじゃねーか!
それにこの資産があればしばらくは生きていくことができそうだ。ラッキー!
だが、一つ引っかかる。
金というのは昔から価値が下がりにくい資産とされていたが、価値が急に上がり始めたの金のETFが出来た2000年以降だから、1973年の今の金価格はまだ安かったはずだ。なのに何故4倍以上の価格になってるんだ?
ちょっとこの世界を知る必要がありそうだな。
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