第2話 文面と願い

 あなたに会えて、本当に良かった。


 ありがとう。


 きっと私が亡くなっても、あなたに知らせは行かないでしょう。


 私からのメッセージが届かなくなったら、その時が来たのだと、そう悟ってください。


 私は地獄へ行き、罪を償い、再び人の世へと修行に出るでしょう。


 願わくば、その時は、あなたと共に人生を歩みたい。


 ありがとう、出会ってくれて。


 さようなら。


 私が手紙を読んだのは、おばあちゃんから受け取ってすぐのことだった。


 短い文面だったから、何回も読み直した。


 これは、誰に対する思いなのか?


 おばあちゃんが亡くなっても、知らせが行かない相手とは?


 思いつくのは、古い友人……でも、生まれ変わったら……というくだりを見ると、恋愛感情が伴っているような気がする。


 そうか……これは、恋文だ。多分、おじいちゃん以外の男の人……浮気相手。


 私は複雑な気持ちになった。


 私にとって、おばあちゃんはずっとおばあちゃんでしかなかったから。


 でも、そうか。おばあちゃんも一人の女性だったんだ。私と一緒で。


 これは、私の胸にしまっておこう。だって、私にだけ見せたかった、おばあちゃんの秘密だもの。


 どんな人なんだろう。まだ、生きているのかな?


 おばあちゃんからのメッセージを、今も待っていたりするのかな?


 そういえば、おばあちゃんの遺品……パソコンや見守り電話、どうしたんだろう……伯母さん達、処分しちゃっただろうな……いや、していて欲しいな……


 残さないでほしい。何一つ。

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