おばあちゃんの内緒の恋文

鹿嶋 雲丹

第1話 おばあちゃんの恋文

 この手紙は、さっちゃんだけが読んで。お願いね。

 

 おばあちゃんは、八十五歳。


 おばあちゃんの初孫である私は、四十五歳。


 私には二人の子どもがいる。おばあちゃんから見れば玄孫にあたる子たち。


 孫は六人、玄孫は十人。


 おじいちゃんは数年前に病気で亡くなってしまっていたから、おばあちゃんは団地の一階で一人暮らしだった。


 さみしくない? って聞いたら、お茶飲み友達がいるし、団地の人がいるから、と返ってきた。

 

 お正月は、かわるがわる皆がおばあちゃんちに挨拶に行くからか、おばあちゃんはずっとにこにこしていた。


 私も毎年、子ども達を連れておばあちゃん宅を訪ねていたよ。


 大好きなおばあちゃんの顔を見て、おばあちゃんの声を聞いて……嬉しかったな。


 手紙を受け取ったのは、喋れるおばあちゃんと会った最後の日だった。


 この手紙は、さっちゃんだけが読んで。お願いね。


 いつもの笑顔で渡された、一通の手紙。


 今思えば、何か感じるものがあったのだろうか。


 それから二週間後に、おばあちゃんは脳内出血で二度と意識が戻らない状態になった。

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