第17話 第一回新人魔法少女魔法戦大会一日目

 四月の最後の火曜日。

 第一回だいいっかい新人魔法魔法戦大会しんじんまほうしょうじょまほうせんたいかいが開幕。

 バトルフィールドは、九階まで続く魔王城の立体駐車場りったいちゅうしゃじょう

 ルールは、一試合一日一時間。

 これを、三日間行う。

 魔法はもちろん、魔法を使わず物理で行くのもあり。

 駐車場の外に出たら、強制失格きょうせいしっかく

 ただし、しげみがある駐車場の真ん中にある車が通らないスペースは場外ではない。

 最終的に一番高い所へ行った人の勝利だ。


 ライアとカラフルのバトルが始まった。

 一日目は、二人共一階からだ。

 最初に、ライアが駐車場の外を見た。

 外は、黄色やオレンジ色に照らされた夜のように見える。

「ようし……」

 ライアは、『これは、チャンス』と見た。

 彼女は、右手で仮面の鼻をつかむ。

 そして、呪文を叫ぶ。

「ラカンスロープ! 」

『ラカンスロープ』は、ライアのみが使える通常魔法。

 よるにこの魔法を使うと狼に変身できるのだ。

「あ……あれ? 」

 しかし、ライアは狼に変身出来なかった。

「ど、どう言うことだ……」

 ライアは、右手で頭を掻く。

「教えてあげるよ、ライア」

「ううん? 」

 ライアは、駐車場の出口から五メートル手前にいるカラフルの方を見た。

 ポケット入っていた三十六色の色鉛筆が宙に浮いている。

「これは、あたしの大魔法『色彩カラフル・ファンタジア』によるものだよ。ライアには、わからないだろうけれど。あたしには、外が青空のしたの賑やかな町に見える」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「いいぞ! いいぞ! 」

「すごいぞ、カラフルー! 」

「カラフル、頑張れー! 」

「頑張れ! 頑張れ! 」

「人間様は、あたしに味方してくれるようだ」

「くうっ……」

 ライアは、右手を強くにぎめた。

 ライアは、言葉の嘘をつかさどる魔法少女。

 絵で人を楽しませることが出来るカラフルとは違い、裏世界の人間からあまり信頼されていなかった。

「じぁ、あなたを倒して、場外へ突き落としてあげる」

 カラフルは、左手の親指と人差し指をくっつけた。

 そして、呪文を叫びながら上に向ける。

「パステルミサイル! 」

 宙に浮いた色鉛筆がライアに向かって飛んでくる。

「お……お……お……お……」

 一回、二回、三回、四回。

 ライアは、色鉛筆を避けながら右手で仮面の鼻を掴んだ。

 その後、色鉛筆がまた飛んでくる前に呪文を叫ぶ。

「エゴイストチョイス! 」

 そして、嘘をついた。

「おうらは、九階にいる」

 ライアの姿が消えて、色鉛筆が駐車場の金属の四角い柱に打つかる。

「さすが、虚構きょこう魔法少女まほうしょうじょ。『エゴイストチョイス』は、呪文を叫んでから五分以内に嘘をつくと、嘘が現実になる通常魔法。あたし、油断してた」

 カラフルは、飛ばした色鉛筆をブレザーとエプロンのポケットにしまった。

「けれど、こっから本気」

 カラフルは、親指と人差し指をくっつけた。

 そして、その手で井の字を書きながら呪文を叫ぶ。

「大魔法『色彩カラフル・ファンタジア』」


 一方、ライアは九階で車止めの上に座っている。

 最上階に着いたライアだが、まだ外が真夜中の町に見える。

 月までちゃんと見えるくらいだ。

「これで、おいらの勝ちは決まりだな」

 すると、駐車場の下り坂をカラフルが上ってくる。

「うーん……」

 ライアは、思った。

 カラフルの脚力では、ここまで上って来られる訳がない。

 魔法少女が建物の九階へ行くには、五つの条件がある。

 一つ目は、テレポート。

 しかし、カラフルはテレポートが使えない。

 二つ目は、身体強化魔法しんたいきょうかまほう

 この魔法も、カラフルは使えない。

 三つ目は、飛行魔法。

 カラフルは、空が飛べない。

 四つ目は、妖精や獣人の血縁けつえん

 カラフルは、魔法使い同士の間に生まれた魔法少女だ。

 五つ目は、エレベーターやヘリコプターなどの裏世界の機械。

 この大会では、エレベーターやヘリコプターを使うのは反則だ。

 しかし、九階に現れたカラフルは、何か怪しい。

「よしっ! 」

 ライアは、カラフルを追いかけながら坂を下った。

 そして、一日目のバトルが終了。

 結果は、ライアが四階。

 カラフルが五階だ。


 大会一日目の夜。

 魔王城十四階まおうじょうじゅうよんかいの元フードコート。

 ジョハリとポォーラは、その階のテーブルで飲み物飲んでいた。

 二人がいるのは、三台ある長方形のテーブルの内の真ん中。

 飲んでいる飲み物は、ジョハリがブラックコーヒー。

 ポォーラが、キャラメルマキアート。

 二つ飲み物は、紙コップに入っている。

 ジョハリとポォーラは、自分が選んだ魔法少女について話してた。

「え、カラフルに似顔絵にがおえのリクエストをしたの? 」

「うん。勝ったらえがいてもらうんだ。僕は、自撮りが苦手なんだ。あごが隠れちゃったり、目をつむっちゃったり。ひどいときは、風景を撮っちゃうこともあるよ」

「似顔絵も、失敗しそうね」

 ジョハリは、『似顔絵の約束は意味がないのんじゃない? 』と、思った。

「大丈夫。僕は、相手に任せれば写りがいいから。冒険中の写真撮影しゃしんさつえいは、仲間に任せてたよ」

「よっかたぁ……」

 ポォーラとカラフルの約束お話が終わった。

 次は、ジョハリとライアの約束の話しだ。

「あたしは、ライアと一緒に銭湯へ行く約束をしたわね」

「どうせ、とってもまた仮面あるんだよね」

 ポォーラは、裏世界のギャグアニメのお約束を予想した。

「木製だか無理よ。仮に、重ねることが出来ても、重みではがれ落ちるわ」

「魔法を使えば……出来るわけないっかぁ……」

 ポォーラはジョハリに、論破された。

 しかし、ポォーラは、『ライアには出来る』と思っている。

『エゴイストチョイス』と言う、ポォーラが使えない魔法を覚えているのだから。

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……ズズズズズッ」

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……ズズズズズッ」

「ごちそうさま! 」

「ごちそうさま! 」

 ジョハリとポォーラは、紙コップを四角いゴミ箱に捨てた後、白いエレベーターの前へ行った。

 



 





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る