第15話 ポォーラとロボット

 魔神成学園まじんなるがくえん攻略後こうりゃくごの夜。

 ジョハリ達は間接照明かんせつしょうめいで照らされる部屋の中、ダンジョンので手に入れたデニッシュロールを食べている。

 デニッシュロールは、一人五個ずつだ。

 ジョハリ達が今いるのは、魔王城の十四階にある元フードコート。

 十五ヶ所じゅうごかしょ厨房ちゅうぼうかこまれた、三台のテーブルの内の真ん中にいる。

 十五ヶ所の厨房はかつて、六十人ぐらいの従業員じゅうぎょういんが使っていた。

 今は、ジョハリとポォーラとデニッシュとルミノルが利用している。

 人間の叶も、たまに利用する。

 ジョハリ達は、デニッシュロールを味の物と一緒に食べている。

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ジョハリ様、デニッシュロールをきのこカレーを付けると、ほどよい食感になって美味しいですよ」

 デニッシュは、ジョハリにきのこカレーをすすめる。

 しかし、ジョハリは温かいブラックコーヒーをすすっていた。

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……あたしは、いい。あたしは、デニッシュロールにはコーヒーだから。ゴクゴクゴク……」

「何か普通ですね」

「えっ? 」

 ジョハリは、ブラックコーヒーが入った紙コップをテーブルに置いた。

 彼女は今まで、普通と言われたことがない。

 初めて、普通と言われたのだ。

「普通……なんか、うれしい……」

 ジョハリは、目を細めて嬉しそうな表情を見せた。

「普通がこんなに嬉しいことなのでしょうか? 」

 デニッシュは、自分が言った『普通』に疑問ぎもんを感じた。

「ルミノル様。デニッシュロールをどうやって食べているのでしょうか? 」

 デニッシュは、目線を右から前に移した。

 ルミノルは、木の茶碗ちゃわんに入った血液にデニッシュロールを付けて食べている。

「この鉄のような香り。したまとわりくコク。デニッシュロールによく合う」

「人類には早すぎる、食リポですね」

「あたし達は、魔法少女よ」

 ジョハリとデニッシュは、目線をルミノルからポォーラに移した。

「うーん……」

 ポォーラはデニッシュの左で、おっぱいがテーブルにつきそうなくらい落ち込んでいた。

 大好きだった、ロボットを魔法で壊してしまったのだ。

 ちなみに、ロボットは、三輪ロボのことではなく飛行ロボットのことだ。

「ポォーラ。なんか、つらそうね」

「ロボットを壊してしまったことは、わたし達も同罪どうざいです……」

 すると、四枚のプロペラをクルクル回しながら黒いロボットが飛んで来た。

 黒いロボットの下には、紙コップに入ったキャラメルマキアートがある。

「えっ? 」

「ひょっとして……」

 ジョハリとデニッシュが、黒いロボットを目で追う。

 いたのは、ポォーラの目の前のデニッシュロールで囲まれた場所だ。

「ありがとう! 」

 ポォーラは、キャラメルマキアートを取る。

 用が済んだ黒いロボットは、ポォーラの後ろの厨房ちゅうぼうに戻った。

「こういう時、ロボットは役に立つね」

「ポォーラは、キャラメルマキアートを待ってたの? 」

「落ち込んでいるわけでは、ないのですね……」

 ジョハリとデニッシュは、『いつものポォーラに戻って、よかった』と思った。

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……やっぱり、キャラメルのほろ苦い味は、デニッシュロールに合う。ヤミツキィー! 」


 

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