四月 第三週

第11話 ポォーラと高い報酬

 連続殺人吸血鬼討伐れんぞくさつじんきゅうけつきとうばつから一週間後いっしゅうかんごの、月曜日。

 ポォーラが、討伐クエストの報酬ほうしゅうを取りに地下ギルドにやって来た。

 カウンター席をはさんで奥には、『氷』と書かれた帽子をかぶった魔法少女がいる。

 ジョハリの元冒険パーティーのメタンだ。

 魔法少女でもはたらける職場を探したら、地下ギルドに行き着いたらしい。

「メタン。今日は、ギルマスがいないだね」

「ギルマスは、外食で昼休憩だぁ。午後一時ぐらいになったら、帰ってくるぅ」

「じゃあ、メタン。報酬、お願い」

 ポォーラは、メタンに十枚の依頼書を渡した。

 内容は全て、討伐クエストだ。

「ちょっと、待ってろぉ」

 メタンは、クエストの報酬を計算した。

『ケットシーのボテル 十万円』。

『ハーピーのレイニー 十万円』。

『ミノタウロスのモミノ 十万円』。

『雷獣の金雷こんらい 二十万円』。

『サンダーバードのエク 二十万円』。

『アルデバランのニック 二十万円』。

『グールのデモル 二十万円』。

『サキュバスのリナナ 二十万円』。

『ウンディーネのテアス 七十万円』。

『デーモンロードのポネ 二百万円』。

「一日十件、三百二十万円……」

「ふふーん……」

 メタンは、ポォーラを見た。

 自分が討伐クエストをやったら、一日一件しか出来ない。

 しかし、ポォーラは、十件も余裕でクリアしているのだ。

 メタンは嫉妬心しっとしんから、依頼書を強く握り締めた。

「おい、ポォーラ」

「ううん? 」

「あんたは、どうやって討伐クエストを十件もクリアしたんだ! 」

即死魔法そくしまほうだよ。呪文一発で相手を殺せる魔法。僕は、こう言うのしかか、使えないからね」

「ほう…」

 メタンは、ポォーラの魔法を疑った。

 そして、ポォーラに質問する。

「さすがに、ウンディーネは即死魔法じゃないだろ」

「ウンディーネも、即死魔法だよ。『熊娘の涙』て言う大魔法でね。僕は、心臓がないモンスターも殺せるんだ」

 メタンは、さらに質問する。

「デーモンロードも、呪文一発では無理だろ。あれは、サキュバスの最上位モンスターだ。即死魔法は、10%の確率かくりつでしか命中しない」

「デーモンロードは、思ったより強くなかったよ。『熊娘の涙』なら、呪文一発で殺せた」

「うう……なんてエグい魔法少女だぁ……」

 メタンは、ポォーラを恐れた。

 ポォーラは、危険な魔法少女だ。

 今の自分が、彼女と戦ったらぐに殺されただろう。

「では、報酬をもらおうか? 」

「……ああ、わかった……」

 メタンは、ポォーラに三百二十万円を渡した。


 外が、黄色やオレンジ色のライト光り輝く夜。

 魔王城十五階で、ジョハリはマッサージチェアーの王座。

 ポォーラとデニッシュは、キャンプ用の椅子に座っていた。

 すると、白いエレベーターが開いた。

 そしてそこから、配達員がやって来る。

 緑の帽子に緑のジャケットの青年だ。

 その配達員は、テレビぐらいの大きさの茶色い段ボール箱を持っている。

「お届け物の、『ケツ追い三輪ロボ』です! 」

「おお、届いた、届いた! 」

 ポォーラは、伝票にサインする。

 その後、配達員に二十万円を支払った。

「ありがとうございまーす! 」

 配達員は、白いエレベーターで一階に下りた。

「ポォーラ、何を買ったの? 」

 王座に座っているジョハリが、ポォーラに聞いた。

「青いロボットだよ」

 ポォーラは、段ボール箱を開けた。

 中には、四つの箱。

 全ての箱に、三輪車のようなイラストが書かれている。

 どうやら、三輪車のようなイラストはロボットのデザインらしい。

「ううん? 」

 しかし、ロボットの数がポォーラが想像していたよりも多い。

 青いロボットは、ポォーラが注文したのに間違いない。

 それ以外の赤、黒、白のロボットは、ポォーラが注文したのた物ではないのだ。

「あれ? 僕は、青いロボットしか頼んでないんだけれど……」

「他の三つは、あたしが注文したの」

「ううん? 」

 ポォーラは、後ろを向いた。

 さっきまで王座に座っていたジョハリが、ポォーラの近くにいるのだ。

「何で、質問してきた、魔法女王がロボットを注文したの? 」

「ダンジョンに挑むためよ」

 ジョハリは、『開放』書かれたバッグから、青い紙を出した。

 その紙の内容は、『魔神成学園ましんなるがくえん 百万円』。

「これは、ケツ追い三輪ロボを買わないと挑めない学校型のダンジョンなの」

「ケツ追い三輪ロボって、僕達が買ったロボットだね」

「うん。ちなみに、ダンジョン行くのは明日よ」

「楽しみだなぁ」

 すると、デニッシュが右手を上げた。

「しかし、ジョハリ様。叶様かなえさまは、明日は学校のため、ダンジョンに行けません」

「うーん……明日は、中止かなぁ」

 ポォーラは、右手でひたいおおった。

「安心して。昨日、幻獣国げんじゅうこく分館島ぶんかんじまで魔法少女を一人スカウトしたわ」

「ふぅー……これで、ダンジョンに行ける……」

 ポォーラは、ダンジョンに予定通よていどおり行けることになった。

 彼女は、かたとすほどうれしい気持ちになった。

 しかし、ジョハリがスカウトした魔法少女はどのような人物であろうか?




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