第8話 誤認討伐

 道路をオレンジ色のライトが照らす、夕暮ゆうぐれ。

 デニッシュは、ファンキーメイドから二つ目の交差点にやって来た。

 彼女は、横断歩道おうだんほどうが二つ分の場所で吸血鬼を発見。

 さっそく、デニッシュは、討伐とうばつの準備に取りかかる。

「デニッシュ、フォトン! 」

 デニッシュは、魔法をつくり出した。

『デニッシュ』は、デニッシュだけが使える通常魔法つうじょうまほう

 欲しい魔法を創ることが出来るが、五分後に創った魔法は失われる。

 デニッシュは、バッグからデニッシュ型のフライングディスクを取り出して、もう一度呪文を叫んだ。

「フォトン! 」

「ううん? 」

 デニッシュは、フライングディスクから窓ぐらいの大きさのビームを発射。

 しかし、吸血鬼はその場から動かない。

 そして、ビームは吸血鬼の胸をつらぬいた。

「うぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

 吸血鬼は、白いガードレールに倒れ込んだ。

 そのガードレールは、胸かられる血で真っ赤に染まっていく。

 垂れている両腕まで、赤く染まった。

「やって来たぁ! これで、ジョハリ様の影武者になれます! 」

 デニッシュは、大喜おえよろこび。

 しかし、後ろから低い女性の声がデニッシュの耳に届く。

「確かに、吸血鬼は倒した。だが、誤認討伐ごにんとうばつだ」

「ううん? 」

 デニッシュは後ろ向いた。

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」

「ワン! 」

「ワン! 」

 そこには、一体のケルベロスと六体の女性のブラックドッグがいる。

 その中のケルベロスが、ズボンのポケットから黒い手帳を出す。

「あたしは、魔法少女市まほうしょうじょし第二警察署だいにけいさつしょ署長しょちょうケルベロスのリン」

「ワン! 」

「ワン! 」

「ケルベロスですかぁ……確かに、似たような頭が二つ宙に浮いていますね」

 デニッシュは、宙に浮いているケルベロスの頭に目が行った。

「何をみとれているんだ」

「あ、ああ。すみません」

「とにかく、荷物の検査させてくれ。あんたのクエストは、問題ないか」

「は、はい。わかりました」

 デニッシュは、バッグから荷物を一つずつ取り出した。

 一個目は、デニッシュ型のフライングディスク。

 ブラックドッグが、フライングディスクを調べた。

「署長。どうやら、これでビームを出してたようだワン」

「やはり、クエスト目的かぁ……まだ、合法とは、認められん。次の荷物出してくれ」

 二つ目は、白い紙。

 ブラックドッグは、紙を広げた。

 内容は、『連続殺人吸血鬼討伐 三十万円』。

「やはり、クエスト目的か……」

「荷物は、ここまでです」

「次は、ブラックドッグが出す石に回復魔法かいふくまほうかけろ」

「は、はい」

 デニッシュは、魔法を創った。

「デニッシュ、ヒーリング! 」

「ワン! 」

 そして、ブラックドッグが出した緑の石に魔法かける。

「ヒーリング! 」

 すると、石が上から徐々にオレンジ色に変わっていく。

「ほう、やはり回復魔法は使えるようだな。デニッシュの魔法少女。あんたは、無罪だ」

「ふうぅ……」

 デニッシュは、『これで、クエストが終わった』と思った。

「それより、デニッシュの魔法少女。『誤認討伐』だってことを忘れてないよな。後ろ見ろ」

「ううん? 」

 デニッシュは、後ろを向いた。

 そこには、討伐したはずの吸血鬼がいたのだ。

 デニッシュは、依頼書をと見比べた。

 依頼書の輪っかは、二重丸。

 目の前の吸血鬼は、一つの丸だ。

「オレを殺すとは、いい度胸をしている。とんだ、誤認討伐だ」

「すみません……」

「しかし、なぜ、ジョハリじゃなくて。デニッシュの魔法少女なんだ? 」

「その、ジョハリ様からの、試練なのです」

「ジョハリも弟子を取る気になったか……では、オレも討伐を手伝おう。オレの名は、ボサツ。ジョハリ代わりだと思ってくれ」

「はい、ボサツ様」

「様は、いらない」

「はい、ボサツ」

 デニッシュとボサツは、連続殺人吸血鬼を探しに行った。




 

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