第7話 ジョハリの影武者

 ジョハリ達が、焼肉パーティーに行っている間のことである。

 空がオレンジ色になる頃。

 『ファンキーメイド魔法少女駅前店まほうしょうじょえきまえてん』と言うコンビニに、二人の少女がいた。

 空き缶のゴミ箱の前にいるのが、ツァイガル。

 白い軽トラックの前にいるのが、メタン。

 二人は、冒険した時と同じ姿をしている。

「ううぅぅぅぅぅ……」

「ううぅぅぅぅぅ……」

 二人は、お腹が空いている。

 旅で使っていたお金が、裏世界で使えないのだ。

「コンビニ行ったけれど……」

「スマホが使えねぇ……」

「コンビニに働こうと思ったけれど……」

「裏世界の人間しか働けねぇ……」

「うーん……」

「うーん……」

 ツァイガルとメタンは、尻もちをついた。

 すると、コンビニの入り口の横断歩道のような所に、一人の魔法少女がやって来た。

「ううん? 」

「誰だぁ? 」

 白と赤のフードと、金のおさげと、青と黒のワンピースと『開放』と書かれたバッグ。

「間違いない、ジョハリだ」

「けれど、なぜここに? 」

 その、ジョハリらしき者が、ツァイガル達の前にやって来た。

「久しぶり」

「ジョハリ、焼肉パーティーはどうしたんだ? 」

「予定より、早く終わったわよ」

「そ、そうなのか……なら嬉しい……」

「頼みがある。ツナマヨサンドとカップの醤油ラーメンを二つずつ頼む。お湯も、忘れずにな」

「任せて! 」

 ジョハリらしき者は、ガラスの扉の所へ行った。

 その、ガラスの扉が左右に勝手に開く。

 そして、ジョハリらしき者が、ファンキーメイドに入った。

「これと、これね」

 ジョハリらしき者は、ツナマヨサンドとカップの醤油ラーメンを棚から二つずつ取った。

 そして、レジのような所へ行く。

 しかし、店員がいない。

「バーコードを、読み取り機にかざして下さい」

 レジが、しゃべった。

 どうやら、このコンビニは、お客さんがレジを言うらしい。

 ジョハリらしき者は、読み取り機にバーコードをかざした。

 そして、読み取った商品の銀の長方形の台に置く。

 ツナマヨサンド、一つ三百円。

 カップの醤油ラーメン、一つ二百五十円。

 合計、千百円だ。

 ジョハリらしき者は、現金で支払った。

 会計が終わったら、入り口の近くの電気ポットの所へ行った。

 カップ麺のフィルムをはがす。

 次に、はみ出た部分を二つめくる。

 その後、お湯を注ぐ。

 二個目のカップ麺も、フィルムをはがすところからお湯を注ぐ所まで行った。

 そして、ジョハリらしき者は、カップ麺とツナマヨサンドを持ってツァイガル達の所へ行った。

「お待たせ、二人共」

「ありがとう、ジョハリ」 

「助かったぞぉ」

 ツァイガルは、カップの醤油ラーメンを四、五本すすっる。

 メタンは、ツナマヨサンドを一口食べた。

「ツナマヨ。懐かしの味だぁ」

「今は、カップで我慢だな。早く、九醤軒きゅうしょうけんのラーメンが食べたいよ」

「ありがとう、ジョハリ!! 」

 ツァイガル達は、頭を上げた。

 ジョハリらしき者の姿はない。

 あるのは、一台の黒いオートバイだ。

「テレポートをしたかのように、消えたよ」

「ジョハリは、よくテレポートするなぁ」

「メタン。それは、魔法戦の話だろ」

「そうだったなぁ」


 そして、ジョハリらしき者は魔王城にやって来てデニッシュに戻った。

 本物のジョハリにあったのは、その一時間後である。

「そういうことね」

 ジョハリは、デニッシュの話を聞いて納得した。

「な、何をしているのですか? ジョハリ様」

 ジョハリは、『開放』と書かれたバッグから白い紙を出した。

 その紙は、ジョハリがボサツからもらった討伐クエストの依頼書だ。

「魔法女王からの試練よ。魔法少女市のどこかにいる、連続殺人吸血鬼れんぞくさつじんきゅうけつき討伐とうばつしなさい。この試練をクリアしたら、影武者として認める」

「いいのですか? ジョハリ様」

「うん! 」

「ありがとうございます」

 デニッシュは、ジョハリの王座から離れた。

 ジョハリから依頼書をもらった後、隣り合った白いエレベーターの所へ行く。

 デニッシュは、エレベーターにはさまれた一番上のボタンを押した。

 それから、十分後に左のエレベーターが開いた。

「では、ジョハリ様。試練を受けに参ります」

「行ってらっしゃい!! 」

 デニッシュは、エレベーターの中に入った。

 そして、ドアが閉まり、エレベーターは下へ移動する。

 その様子を、ジョハリとポォーラが右手を振りながら見送った。

 


 

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