手形が鍵


人類は突如現れた宇宙からの侵略者に襲われていた。


宇宙人のもつ圧倒的な軍事力を前に人類は成す術もなく敗退を重ねていた。宇宙人のもつ技術力は人類の何倍も進んでおり、通常の兵器では抵抗することもできない。あきらめかけた人類はついに禁忌の科学者、アラン・ドレイク博士の力を借りる決断を下した。


アランは天才と呼ばれながらも非合法な実験を繰り返し、ついに表舞台から追放された科学者であった。


アランは協力を引き受けるかわりに実験に必要な材料の提供を止めた。拒むことのできない人類は、どれだけ倫理からはずれた材料であっても、提供できるだけの研究素材をアランに提供し続けた。


人類はアランを頼りにすることしかできなかった。


そしてついにアランは「完成した」といった。


「いまの人類が宇宙人に対抗するにはこの方法しかない」アランは最後の要求として、全人類の前でこの世紀の大発明の発表がしたいといった。


世界中の人たちが見守るなか、満を持して研究結果を発表しようしたそのとき、アランはひとりの少年の手によって殺されてしまった。


少年もまた、その場で射殺された。


少年が宇宙人に操られて犯行にいたったのか、少年の家族がアランの研究素体となったことに恨みを持っての犯行だったのか、真相は闇に葬られた。


人類は唯一の抵抗する手段を奪われてしまった。


しかし人類は諦めなかった。


アランの開発した技術を活用すれば侵略者は撃退ができる。人類はアランの残した技術を紐解こうとした。しかし、アランの技術を見るには特別な鍵がかけられている。それはアランの指紋認証だった。しかし、アランはすでに命を奪われている。


アランは天涯孤独の身であったが、人類は近親者や残されていた指紋の形跡など、様々な試みをした。けれど、指紋認証を解除することができなかった。


それでも人類は最後の希望をあきらめきれず、ついにアランのクローンを作ることにした。


もちろんいまの人類には完全な人間の複製を作れるだけの技術は存在していない。人類は侵略者からの攻撃を防ぎながらも、巨額の投資と非合法の人体実験をして、ついにクローン技術の開発に成功した。


クローン技術によって生み出されたアランは、まだ言葉もままならない幼子であったが、指紋認証は無事に解除することができた。そしてついにアランの開発した技術が明らかになる。


アランが生み出したものは、人類複製による無限の兵力生産技術だった。

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不思議な短編集 サボテンマン @sabotenman

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