不思議な短編集

ただ逃げたくて

　ミズキは、いつものように朝の陽光を浴びながら駅を歩いて友人との待ち合わせ場所に向かっていた。毎日同じ風景、同じ顔ぶれが続くなかで、彼女は自分の小さな世界に満足していた。

　ある日、ミズキがいつものように駅に向かう途中、声をかけられた。「これ、あなたのですよね」そういって差し出されたのものは、どこかになくしたと思っていた彼女の落としたキーホルダーだった。そして差し出してくれた人は、いつもすれ違だけで、名前も知らないあの人だった。彼はにっこりと微笑みながらキーホルダーを差し出し、「これ、あなたのですよね」と言った。彼女は驚きと同時に、微かな期待を感じた。

　以来、ミズキはあの人について考えるようになった。あの人はわたしのことを覚えていたんだ、もしかして、いや、まさか。ミズキはそんなことを考えながら、日々を過ごした。しかし、ある日、彼女の世界は突然崩れ去った。

　ミズキは予想外のタイミングであの人の名前を知ることになった。朝のニュースで、彼女が毎日すれ違うあの人が映し出されたのだ。彼は殺人の容疑者として報道されていた。ミズキの心臓が激しく鼓動する。彼女の日常は一瞬で恐怖に包まれた。あの人は、彼女のことを覚えている。彼女はただただ怯え、家にこもった。

　友人に休むことを伝えた後、彼女は一人で考えた。どうすればよいのだろうか。彼女は窓の外を見つめながら、思考を巡らせた。そして、決断した。彼女は逃げるのではなく、立ち向かうことにした。

　翌日、彼女は家を出た。不安と恐怖が彼女の心を縛り付けようとするが、彼女はそれを振り切った。彼女は自分の意志を貫くため、友人との待ち合わせ場所に向かった。

　友人が待っている場所に到着すると、彼女は彼女の刃を手に取った。彼女の手には、決意が込められていた。そして、友人が彼女に向かって歩いてくるのを見ると、彼女は前へ進んだ。彼女は友人にナイフを突き立てた。

　友人の顔が驚きと痛みに歪んでいくのを見ながら、彼女は言った。「これで、私も同じ」彼女の声は冷たく、決して迷いを感じさせなかった。

　響き渡るサイレンの音が彼女の耳に届いた。彼女は立ち尽くして、周りを見回した。警察官たちが彼女に向かって駆け寄ってくる。彼女は微笑みながら、彼女自身の決断に安堵した。自分もあの人と同じように、自分の運命を受け入れたのだ。