第3話 反乱

第3話。


3週間後。



北条が死亡し浪川は仲間が初めて死んだ事に気分が落ち込んでいた。

あの時の叫び声が耳から離れないのだ。

食堂で食事をしていると多田野がカレーライスが入った皿を手にやってきた。


「浪川、落ち込んでいるのか?」


「あたりまえです」


「何で一人で抱え込んじゃうんだよ」


「えっ?」


「一人で抱え込んでもいいことなんか無いよ」


「でも」


「俺だってたくさんの仲間が死んだのを見てきた...だけどそいつらの分まで生きていくしかないんだ」


浪川が涙を流す。


「まぁ三人で協力していこうぜ」


(しかし西園寺は今、独房にいるが)



2週間前。



「亜里香、どうしたんだ呼び出して」


「落ちついて聞いて」


「あ、あぁ」


「貴方の部隊にいる西園寺優香にスパイ容疑がかけられているわ」


「あー」


多田野は奪還作戦の時に退避命令に従わなかった西園寺の行動を不審に思っていた。しかも基地の外によく行く事から怪しんでいたのだ。


「あの子の部屋のベッドの下を調べたらこんなものが見つかったわ」


手に持っていたのは封筒。


「手紙か?」


「そう、しかし送り主が問題よ」


「誰なんだよ?」


「霧崎直人」


「っ!!」


多田野には聞き覚えがあった。

訓練生時代からの仲で気の合う友人だったが初のセレスとの戦いで戦死。


「嘘だ戦死したはずじゃ...」


「あの子はこちらが逮捕しようとしてることに気づいてる節があるだから貴方があの子に話をすると言って呼び出して」


「わ、わかった」


多田野は一人、基地の外にあるベンチに座って考え込んでいた。

封筒の中に入っていた手紙の内容はテロを行うと言うもの。


「隊長、どうかしたの?」


「西園寺か来てくれてありがとう、とりあえず隣に座って」


西園寺が多田野の隣に、座る。


「あのさ、疑問なんだけどさ霧崎直人って知ってるかな?」


「ッ!!」


「知らなかったらいいんだ、そうだ。よく基地の外に行くけどなんでだい?」


「あー、それは自然を見ておきたいなーってさ」


「違うな」


多田野は例の手紙を見せる。


「これは君宛の手紙だ、どこで受け取った?」


「知られちゃったか...」


「部隊の仲間として君がテログループのスパイだなんて認めたくは無いが」


西園寺がポケットから何かを取り出そうとしていることに気づく。

折りたたみナイフが出てきた瞬間。

多田野は立ち上がりホルスターから銃を取り出して構える。


「西園寺優香、君をスパイ容疑で逮捕する」


その瞬間、防護盾とアサルトライフルを装備した兵士達が出てきて西園寺を囲む。

西園寺はすぐにナイフを地面に下ろして両手を上げる。


「お下がりください。後は我々が」


「よろしく頼む」




「どうかしたんですか?」


浪川の声で現実に戻される。


「いや別に」


カレーを口に運び完食する。





司令室。


「何者かが回線をジャック!!映像でます!!」


『私は国民救済グループのリーダー霧崎直人です、我々は日本を救うために立ち上がる事を決意しました、軍がやっていることは異星人殲滅ばかり難民の人達への救済はせずに放置するばかり、それどころか難民キャンプに押しかけて入隊する事を進めるだからこそ私たちは難民を救うべく戦う』


「通信を切って」


亜里香は冷酷に言う。


「え?」


オペレーターは困惑するが通信を切る。


「何かと思えば反乱ごっこじゃない」



多田野は一人営倉に向かっていた。


「やぁ、西園寺」


「隊長」


「君がテログループと繋がっていた事は承知しているが何故?」


「.....」


「いやまぁいいや」


「わたしは元々、難民だっただけど霧崎さんに助けられてからは彼の思想に賛同したそしてスパイとしてここに来た」


「なるほど」




司令室。


「テログループが沼津バイパス跡地を通過して箱根基地に進行中」


「本当に来るのね」



作戦室に呼び出された多田野達はすぐに戦場に向かう事になった。

相手の使うバトルフェルムが何かはわかっておらず警戒する。

多田野は第三防衛ラインにいるため警戒する事はないが昔の仲間と戦うことに複雑な心境を抱いていた。


『第一防衛ラインに接近中』


第一防衛ラインでは戦闘が開始された。


『敵の機体は洲崎すのざきである事が判明しました』


「洲崎って旧型の量産機じゃないか!よく戦えると思ったな」


その瞬間。浪川が通信してくる。


「洲崎ってなんですか?」


「旧式の機体だよ現在はあんまり使われてないはずなんだけど」



第一防衛ラインにて。


「なんだあの機体の速さは!!」


「周りと違いすぎる!」


薩摩に乗っていたパイロット達が次々と声を上げる。



『第一防衛ライン突破されました』


「早い!」


(いくらなんでも早すぎる)


多田野は困惑したと同時に緊張が走る。


(考えれる理由は二つ純粋に強いパイロットがあちらにいるか新型か...)


『第二防衛ラインにて交戦開始』


「敵の数は?」


オペレーターに聞く。


『敵機の数は15機ですが...』


「15機、たったそれだけなのに第一防衛ラインの機体20機が全て倒されたのか!?」


『第二防衛ラインを突破されたこっちに来るぞ!』


パイロットの言葉で我に帰る。


『多田野隊長、わたしはどうすれば?』


「とりあえず協力して戦おう」


『第三戦車大隊が一機撃墜!』


『みんな敵が来るぞ!』


一人のパイロットの掛け声と同時にその場にいた者達は気を引き締める。


「ここでとめる!」


アサルトライフルを連射するが避けられる。


『バカな旧式の機体のはず!』


皆が一心不乱に撃ち続けてる中、多田野だけは洲崎に特攻していく。

洲崎には弱点がありそれは反応速度が鈍い事だ。

旧式であるため想定外のスピードにはレーダーがついていけない。

多田野は一機また一機と倒していく中。


『隊長、後ろ!』


浪川からの通信により後ろからの攻撃を躱した。


「くっ」


後ろにホバーしたことにより衝撃がコックピットに伝わる。

するといきなりタックルされて吹き飛ばされる。

起き上がった直後、弾丸の雨が降り注ぎホバーで避けて行く。

射撃が止んだかと思うと通信機から声がする、新型機のパイロットだ。


『そなたの戦い方には感動した是非一対一で戦おう』


「何言ってるんだ...その声、霧崎か!?死んだのに何故?!」


『何故わかった』


「だって仲間だっただろ?」


『仲間?』


「あぁ、覚えてないか?多田野__」


言いかけた直後にどこからか射撃される。


『多田野隊長大丈夫ですか?』


「浪川!?みんなは?」


『戦っています、わたしは多田野隊長の無事を確かめるためにきました』


『邪魔をしないでいただきたいな』


霧崎からの通信が入る。

その直後、浪川機の脚部と頭部が切断された。


「お前っ!」


『多田野、私は確かに死んだお前の前ではな』


刀が構えられる。


『だが私は生きていた帰ってきたんだ!!』


「なるほどね、じゃあ俺が勝ったら立ち去れ」


『受けて立つ』


互いは見つめ合う。

そして。機体を前進させた。



刃と刃がぶつかり合い火花を散らす。

そして状況把握をする余裕もなく霧崎からの斬撃が来る。

多田野はその数々の斬撃を防ぐことしかできずにいた。


『多田野、貴様は何故軍にいる!?こっちにこい!!!』


「断る、俺の目的はセレスに勝利して平和を取り戻す事だ!!」


『今の軍には無理だ!!』


「くっ!」


『難民一人も救えずにしてどうやって人類を救う!!!!』


「じゃあ難民を救う良い方法を教えてくれ!!政府を潰す事か?!違うだろ!!!軍隊に入隊させて少しでも戦力拡大に___『子持ちの人にもそれをさせる気か老人にも!!』


「そこまでは言ってないだろ!!」


多田野は霧崎の機体の脚部に刀を突き刺すと同時に頭部が破壊された。


『今回は撤退してやる情けというやつだ...さらばだ』


オペレーターの通信が入り敵機が撤退していった事が知らされる。


『多田野大丈夫?』


「亜里香か?ああ何とか」


コックピットを開き浪川機に駆け寄る。

浪川機のコックピットが開かれる。


「おい大丈夫か?」


倒れてきた浪川を抱き抱える。


「隊長、わたし何の役にも...」


「良いんだ今は」


抱きしめ合った。

 





第四話


多田野は亜里香の業務室に来ていた。

ソファに座り話していた。


「霧崎の機体何故あんなに速いんだ?」


バトルフェルム設計者の亜里香に聞けば何が分かるはずだと思い部屋に来た多田野だったが亜里香も分からないらしく考え込んでいる。


「あれは今の技術で開発するのは無理ね...いや一つだけあるわ」


「教えてくれ」


「早瀬と同じ神経接続が...でも神経接続の原理がわかる人なんて世界でも数十人くらいしかいないはず」


「亜里香、俺はあいつと戦って説得したい俺にあいつと対等に戦える力をくれ」


「ふっ良いわよ。試作段階だけど神経接続で動かす機体があるわ普通のバトルフェルムと同じ大きさだからパイロットに負担はかからないはず」


「その機体の名前は?」


間宮まみやよ。て言うか本当にやるのね?」


「あぁ」


「じゃあ手術の準備をするわ」


手術室に移動させられて手術台に寝かされる。

寝かされた直後、亜里香にキスをされる。


「じゃ」


そして続々と医師がくる。

麻酔を打たれて眠らされる。





「多田野奏多です」


「霧崎直人」


「長澤亜里香です」


砂味屋五十鈴さみやいすずです」


多田野は訓練生として軍事学校から軍事基地に配属されチームメイト同士で自己紹介をしていた。

それから三週間後。

教官からの指示や訓練にも四人で耐えてきた四人は。


「よしでは君達にはパイロットとしての能力がどれだけあるか試してもらおう」


訓練用のパイロットスーツに着替えた四人は。四つの仮設コックピットが置かれており各々がその中に入って行く。

そこではセレスの撃墜スコアを出して誰が1番強いかを決めると言うものだ。



「今回の結果は一位砂味屋五十鈴、二位霧崎直人、三位多田野奏多、四位長澤亜里香」


「亜里香ドベじゃん!」


多田野は爆笑した。

しかし亜里香は「わたしが目指してるの指揮官だから操縦技術とかはどうでもいいのよ」


「そうだよ、亜里香は指揮官目指してるんだから操縦技術とかはあんまり身につけなくて良いわけだからドベは多田野だ」


霧崎の言葉に多田野は。


「で、でもドベはドベだそれは。か、変わらないだろ!」


「焦ってんな落ち着けよ」


「なんだとぉ?」


「二人とも喧嘩腰になんない」


砂味屋が止めに入る。


「あ、う、うん」


霧崎は言う。


「ん?」


多田野はその反応に違和感を覚える。


「とにかく今日の訓練はここまでだ」



自室に戻り二つのベッドに各々横になる。


「霧崎、お前砂味屋の事が好きなのか?」


「は、は、は、さ。そんなわけないだろまったく」


「じゃあ俺が取っちゃおうかなー?」


「やめろよ!!」


「冗談だよ」


この頃にはお互いよく話す関係になっていた。



首都崩壊事件。


「東京にセレスが侵略してきた。今回は日本の首都と言うこともあり訓練生の諸君にも戦ってもらう」


「「「「了解!!」」」」


「それとだ砂味屋、君の両親が死亡した」


「え?」


砂味屋は驚く、三味屋はこの三人の中で唯一両親が生きていたのだ。

砂味屋の両親はエースパイロットで両親のことが砂味屋の誇りでもあったのだ。


「すみません席外します」


砂味屋が椅子から立ち上がり作戦室を後にした。

数十分経っても戻ってこないため教官と四人で探すと屋上から飛び降り自殺した砂味屋が発見された。


「うわぁァァァ!ああ!!!」


霧崎は絶叫した。

そして東京に着くと案の定、セレス達に溢れており先に来ていた兵士達が戦っていたのだが。


「くそ!くそ!くそ!」


「霧崎!後ろだ!!」


「っ!!」


セレスに押し倒された霧崎の機体に向かう多田野だったが霧崎の機体の胸部を破壊された。

多田野は後少しのところで手が届かず後悔していた。

最終的に東京には核が落とされたことによりセレス達は全滅しかし多田野には心の中に穴が空いていた。


やがて亜里香と恋仲になり二人でこれから生きて行こうと誓ったが。





ベッドの上で亜里香が隣におり面倒を見てくれていたようだ。


「起きたのね」


「あ、あぁ」


起き上がった直後、吐き気が多田野に襲い掛かる。


「はい」


ビニール袋を渡され。中に嘔吐する。


「大丈夫よ」


優しく背中をさすられる。


「わたしは貴方と一緒にいると誓ったからわたしは貴方の隣にいるわ」


「あ、ありがとう」


何とか吐き気に耐えて正常になりベッドから体を出す。

ふと違和感に気づく体が軽いのだ。


「すごい体が軽い...!」


「貴方の体のほとんどは小さな機械で構成されている、だから体が軽い」


多田野は手を握り締める。


「機体に案内してくれ」






「これが...間宮...」


純白にコーティングされた美しい機体が格納庫に置かれていた。

コックピットに入ると操縦桿はなくそのかわりに背中に直接繋ぐマシンがあるのみ。


「練習してみましょうか」


亜里香がシミュレーションモードにモニターを切り替える。


「よし」


多田野は息を吸って吐き。

シミュレーション内にいるセレスに対して殴るように想像する。

その瞬間、機体の腕が動き出しセレスを殴る。


「すごい」


剣を取り出して構えるイメージをすると機体がその通りに動く。

そして飛行するイメージをすると機体が飛行した。


『直感的に操縦できてどう?』


「すごいな.....だけど俺はもう人間じゃないんだ」


『.....まぁそうね』


その時、基地内に警報が鳴り響く。

シミュレーションを中断して作戦室に向かう。


「隊長、お久しぶりです」


浪川が言う。


「あぁ」


確か二日間寝たきりだったけか。


「それでは状況を説明する我々は霧崎グループからの進撃を防ぐために別の支部に援軍を要請したその結果、沼津バイパス跡地で足止めをしているが長く続きそうにないのと援軍の中にスパイが紛れ込んでいたらしく交戦している。すぐに出撃をあと今回から新機体を導入する機体名は間宮だ」


「パイロットは多田野奏多」


「隊長が!?」


「あぁそうだ」


「そう言えば隊長何か変わりましたか?雰囲気と言うか何というか...」


「ああーまぁそうだね、うん」


多田野は言葉を濁した。

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