7話目
北条先輩と話すようになってから気づいたことが幾つかあった。
それは、いつも目を見て話そうとしてくれたり、言葉遣いに気を使ってくれたりというようなこと。
だけど、そんな彼の行動の中には必ず共通していることがあるのにも気がついた。
高校二年生は世間的には子供でいて大人の仲間という立場だろうか?彼の所作が整っていても然程気にはならない。むしろ好印象しか与えないはずだ。
なのに彼と接するようになればなるほど、疑問に思った。
(なんで、先輩は怯えているんだろう?)
これは原瀬名という少女だからこそ、気がついたとも言える。
彼女は昔からシャイで内向的な性格だ。しかし、彼女が成長するにつれてだんだんと変化してきた。
そんな彼女支えていたのは、取り巻く環境や人。そして何よりもそれらをしっかりと見極めることのできる洞察力だった。
(先輩はいつも、私や色んな人に優しくしてくれる)
けれど、彼の優しさには何故か不自然に線引きがされていた。
まるで、彼自身の心がこれ以上環境に呑み込まれるのを拒むようだった。
また、彼は時々幼い表情を見せることがある。けれどもそれは、知らない場所に踏み込むのが怖いと、泣きそうになっている少年そのものだった。
だから彼を知れば知るほど、瀬名は自分の想いに踏み切ることができなくなっていった。
(きっと先輩を困らせてしまう)
彼に優しくされても、どんなに嬉しくても、彼女は止まってしまう。
彼の真意が見えないから。
(なんでこの人は、こんなにも優しいのに怯えているの?)
人気のないケーキ屋の一角で、瀬名は自分の本当の想いにも気づかず、俯いて床を見つめていた。
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