2話目

 —————原瀬名が彼と出会ったのは高校に入学してからだ。出会いは部活動。幼い頃から続けている弓道を高校でも続けたかったので弓道部に入ると、練習場が隣接する剣道部との接点が出来た。


 両方とも主将の仲が良かったので、何かと互いの部活を覗きに行っていた。そして瀬名も何度かそれについて行ったのがキッカケだった。


 最初は、ひっそりとただ主将や先輩の後ろに隠れて剣道部の稽古を覗いていただけ。


「メーンッ!ドーッ!コテーッ!」

 そう覇気を伴って稽古に勤しむ彼を、ただ瀬名は佇まいの綺麗な人だなと認識しているだけだった。というのも彼が殆ど面をつけていて、どんな容姿なのかは知る由もなかったからだ。でも勝手ながら、何となくイケメンだったら良いなあとは思っていた。



 けれど、ある日の稽古中に偶然にも彼が面を外していた姿を目にし、想像以上に整った顔立ちをしていたので度肝を抜かれてしまった。


 艶やかな黒髪、そこらの女子には勝るであろう白い肌、パッチリと大きな瞳は琥珀色の光をたたえ、少女の様なあどけなさを持ち合わせていた。


 ましてや、光る汗を拭いつつ部活仲間であろう男子と爽やかな笑顔で談笑しているものだから、


「——っ!」


 その瞬間、瀬名は自分の体温が急上昇するのを感じた。また、冷めない頬の熱さに恋に落ちたんだとも気付いてしまった。


 意識するようになってから名前を知った。北条遥、瀬名の一歳年上で先輩。


 そんな彼を一目見たいと継続して稽古を覗きに行くようになったが、彼が面をしていても恥ずかしさのあまり声をかけることもできず、顔の火照りを覚えてそそくさと帰ってきてしまうばかりの日々が続いた。


 そしてようやく機会が巡ってきたのは半年後のことだった。どういう経緯だったかは忘れたけれど、あの仲良し剣道部と弓道部の主将を筆頭として、両部員数人で遊びに行こうと言う話が持ち上がったのだ。


 それに対して瀬名は、深く考えもせずに参加の意を示した。ただ、いつもお世話になってるしな〜としか思っていなかったからだ。まさか、彼も参加するとは夢にも思っていなかった。

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