百年目に咲く百合の花
鍛治原アオキ
1話目
親友と二人、学校帰りに寄り道したカラオケで紫苑は早々に
「ねね、どうやって告白したの?」
と切り出した。
薄暗いカラオケボックスの個室は内緒話をするのにぴったりで、狭い室内にはほのかな甘い青春の雰囲気が漂っていた。
「ん〜、普通に休みに買い物の約束して、でって感じ」
そう言って暗い中でも分かりやすく顔を赤らめるのは、紫苑の中学来の親友である原瀬名だった。肩まで伸びたストレートの黒髪に、パッチリとした大きな瞳、背は155センチと小柄で"可愛い"という言葉が似合うような女子だ。
そんな彼女が今日、一緒にお弁当を楽しんでいた時に突然、彼氏ができたと報告をしてきたのだった。突然の報告に驚いたものの、紫苑は昼食を蔑ろにして瀬名の恋バナに聞き入ったのだ。
しかし校内では、色恋話をするには人の目が多く、あまり詳しくは聞けなかった。そのため二人は、放課後のカラオケにて乙女の会議を催していたのだった。
「キャ〜!じゃあもうデートじゃん!あっちも気が無きゃ付き合ってくれないよ〜!」
「あ、ううん。違うの、部活の用事で買い物に行かなきゃいけなかったから」
「えー、でも絶対あっちも好きだったでしょ」
「そうかなぁ〜///?」
小首を傾げてはにかむ姿はまさに恋する乙女そのもので、何だかそんな彼女を見ているとこちらまで幸せな気分になってきた。
けれど、ただ黙っているだけの紫苑ではない。親友の恋のスタートをおとなしく見守ろうと決めていた筈の心は、一瞬にして親友の恋物語を詳しく知りたいという好奇心に塗り変わっていた。
「瀬名さーん、随分嬉しそうですがもっと詳しく教えていただけませんかね〜?」
と頼めば根負けしたのか親友は火照った顔のまま、彼女の恋物語を恥ずかし気に語り始めたのだった。
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