第21話 ~Side椎野視点~
一方その頃、冒険者ギルドに残った椎野は――
加古君が勝利報告しに行ってから一時間ほど経ったかな。
私は拠点とした冒険者ギルドでお留守番。アクアさんも含めて奥の部屋に監禁中のカガリさんお見張りをしながら、加古君の帰りを待ってた。
加古君からは『カガリさんを絶対逃がさないで』と、言いつけられてる。
「はぁ……。遅いなぁ。加古君」
私はため息ばかり吐いてた。
ギルドには数人の冒険者たちと、酒場の店員さんがいるだけ。閑散としてるのは鷹条さん一派が出禁になったからだと思う。
間が持たないし、せっかくだからアクアさんとお話ししてみたいな。
歳も同じくらいだし。波長も合いそうなんだよね。
加古君がいないんだから私がリードしないとっ。
「ね、ねぇ! アクアさん……」
「あなた、カコさんとどういう関係なのですか?」
え~~~~~! 予想もしなかった展開!
「カコさんとはお付き合いでもしてるのですか?」
「いや、まったく……です」
「そうなんですか?」
「私が好きで加古君のそばにいるだけで……」
「……」
「実際は私の一方通行で……」
「なんだ! そうなんですか!」
私の好意が空回りしてることを知った途端、喜んでる感じだね。
「でも、好きなんですよね。彼が……」
「は、はい……」
だめだ。軽率な接点づくりで、さらに空気を悪くしてしまった。
加古君がいないと何もできないよ……!
「あれ……」
すると、アクアさんに異変が起きた。
めがうつらうつらとさせてる。
「私……眠くなってきました…………」
アクアさんは睡魔に抗いながらも、ついにはテーブルに顔をうずめて寝てしまう。
「アクアさん? アクアさん!?」
私が必至に問いかけるけれど、アクアさんからの応答がない。
耳を凝らせばすぅ、すぅと、小さな鼻息が聞こえた。
「……寝てる」
アクアさんが完全に寝落ちしたのを確認すると、
「……すごい効き目」
私はブレザーのポケットから小瓶を取り出す。
中には毒々しい紫色の液体が入ってる。
睡眠薬だった。
「茜ちゃんから貰っててよかった」
【
本来は加古君に盛るつもりだったけど、疑い深い人だから隙がなかった。
アクアさんに使っちゃったけど、これは結果オーライかな。
「カガリさん?」
私はギルドの奥の部屋にそっと入ると、閉じ込めてたカガリさんは拘束して、目隠しプレイをしてた。
「……椎野」
耳を頼りに懐疑的に返すカガリさん。
「そうだよ! 助けに来たんだよ! ほらっ、加古君も今はいないから!」
目を覆った布をほどくと、恨み辛みの圧で私を睨む。
「……本当に味方なのね?」
呪い殺されそうな眼差しに心が挫けそう。
「もちろん! 私たち瑠香ちゃんの『サイドキック』でしょ?」
私はカガリさんを拘束する縄をほどいてあげた。
自由になってカガリさんの警戒も少しは解けたかな。
「……あんたが『加古の髪の毛』と『計画』、そして『居場所』を教えてくれた。だからキウイ御前も捕まえることができた」
カガリさんは視線を落として続けた。
「……加古と一緒にいたのは情報を収集するため?」
「うん。……加古君、追放した私たちの事をひどく恨んでたから。全員に復讐するって」
「……」
カガリさんも加古君の復讐の理由は納得してるようだった。
「私も加古君の標的なの。加古君の『スキル』で私はコントロールされてたみたいで……」
「今はコントロールされてないの?」
「わからない……。色々私の体や頭の中をいじられたから。完全に元通りではないかもだけど。加古君が近くにいないからかな、自由に自分の意思で動けるの!」
身近にいなければ心を操作できない。
それが加古君のチートスキルの弱点なら、このチャンスを利用しないとまた私は加古君の術中に捕らわれてしまう!
「行こう! カガリさん!」
手を引いてカガリさんを立たせた。
拷問のダメージでカガリさんはよろけながら立ち上がると、きっと私を睨んだ。
「……それが嘘だったら許さない憎(ゾ)? 瑠香の洞察力の高さはデフォルトスキル。妙な作戦だったらすぐにバレる死ね?」
どすんと、私に太い釘を刺したカガリんさん。
大丈夫。
自分が正気でないと気づけない程、私は落ちぶれてない。
加古君の『ハーレム王国計画』を阻止するんだ!!!
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