第19話 僕に怨念だの憎悪だの。子守歌ですか?

 ――数十分後。

 頭にパンツを被り、ブラウスはボタンが外れ、髪は乱れた不健全なカガリさんの姿がそこにあった。


「念念(ねぇねぇ)? 黒田もグルなのね?」


 それでも強気な口調は変わらない。君の折れない精神力は素晴らしい。


「許さない。覚えておくんだ憎(ゾ)? 加古、椎野……お前たち全員これかr痛たたたた!!」


 恨み辛みを並べてたカガリさんが、突然痛がり出して叫んだ。

 僕がカガリさんの毛が刺さったままの藁人形を操作してたからだ。

 人形の右腕の関節を逆に折り曲げると、当然それはカガリさんに伝わってる。


「はぁ、はぁ。加古、忘れないでね?」


 逆関節を受けてる状態でも、カガリさんは気丈に振る舞う。


「今回の事、全て瑠香に言いつけtぎゃい!!!!!」


 またボキッと、鈍い音が聞こえた。同時に喚き散らすカガリさん。曲げていた右腕の関節が折れた音だった。


「大丈夫? カガリさん」


 見かねた僕はカガリさんの右腕の痛みを、【盗むバンデット】で奪って消してあげた。

 これで少しは懲りたかと思えば、


「私をここまで追い込んだこと、必ず後悔させてあげるから!」


 また始まった。懲りないなぁ。


「まずは加古、あんたから……あだだだだぁあああああ!!!」


 ボキッと、骨とカガリさんが悲鳴を上げた。今度は左腕だ。


「みんな……タダじゃ済まさないから……!!」


 一瞬の苦痛と無抵抗な体を操作される恐怖に抗いながらも、カガリさんは何度も繰り返す。


「全っっ員! 皆殺しよ……(ボキッ)痛い!!!!!! 怨怨怨(えーん、えーん、えーん)!!」


「藁人形の『スキル』は楽しいなぁ。君は僕の支配下だ」


「……!!!!!」


 呪い殺そうとする狂気の少女を、乙女にしてしまう僕の拷問。


「怨怨怨(えーん、えーん、えーん)!! 恨む憎(ゾ)!!」


「カガリさん。泣いてるところ悪いけど、これはね宣戦布告なんだよ?」


「宣戦……」


「そう。君が僕の計画をなぜ知ったのかも疑問なんだが……そんな事はどうでもいい」


 人形とは言え本体であるカガリさんに直結する五感。

 五寸釘を討つよりも多様なスキルである。

 僕は藁人形を愛おしく眺めながら続けた。


「後悔するのは一人残らず君たちのほうだから」


 とびきりの憎しみで釘を刺した。


 そしてカガリさんの毛が刺し込まれた藁人形を、手が届かない遠くへ放り投げてやった。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る