第5話 四天王VTuber「V4」

『生徒会より、美冬由紀さん至急生徒会室まで』


昼休み、そんなアナウンスが流れる。


「……」


由紀はクラスメイトとお昼ご飯を食べていたが手を止めた。


「ハル……由紀ちゃんなんかしたのかな?」


小声で夏美が話をかける。


「さぁ?ここの生徒会は少しネジが飛んでる人ばっかだからな興味本位で呼び出してるんだろうそれに……あの3人は」


そうあの3人は……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「美冬由紀です、失礼します」


私は、生徒会室のドアを叩く。

予想はできてる、この学園には……あの3人……プラチナVTuber達『V4』がいるからだ。


「久しぶり由紀ちゃん」

「お久しぶりです」


まず目の前に現れたのはV4ランキング3位のさん、本名は時風さゆり。

登録者数は700万人で私より100万人以上多い、本人曰く趣味でやってるらしいがゲームが上手く声の可愛さなどがウケ人気になった。


「ぅ…アイスをくれ……原稿が終わらんのじゃあ……即売会イベントがあるっていうのに」


その隣にはタブレットを持ち絵を描いている女性が。

V4ランキング2位のさん本名は大原かえで。

登録者数は750万人、そして彼女はイラストレーター兼コスプレイヤーだ。

コスプレイヤーとしては雑誌に載るほどの有名人でその可愛さとイラストの人気が高く支持されている。

正直、学園に通わなくても生きていけるくらいのポテンシャルはあるはずだが親に、卒業だけはしてくれと言われているらしい。


「2人の自己紹介はおわったかしら……由紀」

「人の心の中を読まないでくれない?あかりんさん」


最後に出てきた人はV4の1位さん、そして本名は新堂あかり。

登録者数は他の2人より上の登録者は900万人もっともトップVTuberに近い。

しかし……。


「……てか100万?だっけそんな底辺VTuberとコラボするなんてウケるんですけど、あんなんで再生数と登録者が増えると思うの?V4もここまで落ちたの?」


性格に難あり、そして俗にいうメスガキ地雷系女ポジション。


「また私の事メスガキ地雷女ポジションって思ったでしょ?」

「い、いいえ…」


そして何故か心の中が読める…ただそんな能力はなく私の場合顔に出てしまうがネックである。


「いくら私のキャラ作りが素晴らしいからって嫉妬しないでよね!?嫉妬しすぎて、運営に通報しちゃう?しちゃう?」


(め、めんどくせ~)


「地雷ちゃん……久しぶりにユキちゃんに会って嬉しいのわかるけど落ち着いて」


時風さゆりさんは、あかりさんを落ち着かせる。


「地雷ちゃん言うな!あかりんって言う可愛い名前があるのよ…ん?」


ちなみに彼女のアバターは世間では地雷服と呼ばれる服を着ており見た目も地雷and地雷のアバターだ彼女自身も低身長で出ているところはでている、まさにリアル地雷ちゃんでいつしかピエンという言葉を発するのではないかと思っている。

もちろんアバターの影響からかリスナーからは地雷ちゃんと呼ばれている、こんな彼女だがVTuberとしての実力は私と彼女とでは天と地の差だ。

彼女には全ての人を魅了するものを持っていて、老若男女問わず見ている人が多いしかし先程も説明したように性格に難ある。

そして、トップVTuberの彼女にあってあかりんさんには無いものも同時にある。


「っち……昨日の配信のスパチャ少なっ」

「どれどれ……?え、でも500万くらい投げられてるじゃん」

「これくらいじゃあトップVTuberになれない、もっとファンからお金を巻き上げないと」

「うわぁ…ファンが聞いたら絶望する奴だ」


時風さゆりさんが引け目で言う。

そう新堂あかりさんはお金の為にVTuberをやっている、ファンというものを下にみてお金儲けの道具にしかみていない事だ。


「うるさいな……別に私が好きでやってるんだし良いでしょそうしなきゃ……借金返せないし!それに私にスパチャする連中が悪いんだし!だよね由紀」


唐突に名前を呼ばれる。


「……はい」


私は頷くしかなかった。

私もファンをあまり大切にはしていないからだ演技なんてどうとでもできる。

演技で可愛くみせればスパチャをしてくれるそれくらいにファンの人達は単純なものだ、私はただハルに見てもらいたい、またハルに応援してほしいそれだけだった。


「そ、そういえば…由紀さん…探してる人言ってたけどその人は見つかったの?」


タブレットを置き話に参加する大原かえでさん。

どうやら、原稿がひと段落ついたらしい。


「えぇ…あかりさんのおかげで」

「ふふ~ん!私、情報網を舐めないで欲しいわね」

「情報網って元々ハルの事知ってたんでしょ?」

「まぁね~!だってあれでしょ、愛川夏美と一緒にずっといるんでしょ!彼女も同業者というか……あんたとコラボするんでしょ」

「正体よくわかりましたね」

「V4のトップの力よ」

「なんですかそれ…」


呆れた顔で私は言う。

そして、急にあかりさんの声のトーンが変わる。


「でも…由紀、わかってるよね?」

「何が?」

「どぼけても無駄」

「あぁ…VTuberか」

「そうよ……確かにあんたが春田さんの事が好きなのはわかったでも、掟は守らなきゃ駄目よ」


私達、VTuberの掟はただ一つ。



恋愛禁止というのはこのご時世古いのかもしれないがこの配信時代にはおいては絶対に恋愛をしてはならない。

何故か?それはVTuberとは何から考えなければならない、よく言われているのがVTuberはファンを楽しませるのが仕事と言われている。

夢を与え笑顔にさせる、それはトップVTuberのあの人が築いた道だった。

そしてこれもあの人が言うのに反してしまうが新堂あかりのようお金のためにはVTuberの活動をしていてもファンの人を笑顔にさせれば、問題ないという事だ。

しかし恋愛だけは絶対にしてはならないこれまでファンとの築きあげた信頼が一気に崩れてしまうからだ、もちろんはVTuberを恋愛対象として見る人もいるだからこそ面倒ごとにならないようにしなければならない。

トップVTuber突然とした消えたその後、恋愛するために引退したのではないかという憶測が飛び交っているが本人が今いないので確かめようがない、もしも恋愛だとしてもあの人は、そんな掟を吹っ飛ばすくらいの人気があるからきっと大丈夫なんだろう。


「わかってますよ…バレないように」


バンっ!

大きく机が叩かれる。


「そういう問題じゃない!VTuberなめてんじゃねぇぞ……恋愛が理由でVTuberやってんのなら今すぐ辞めろ!いいな?私だって、恋愛を我慢しているんだ……私達は学生だ、青春を真っ只中なんだ…私はあまり言えない立場だけど恋愛は絶対にするな!!これは、V4のトップとして友人として……そして、VTuberとして活動するあなたのために言ってる」


奥にいる2人も、うなずく。


「……」


チャイムの音が鳴る。


「今日はここまでね……ごめん、熱くなって」

「いえ……少し目が覚めましたありがとうございました」

「うーん、V4の一位から指導を受けたんだから!お金!頂戴!!」

「あはは……」

「とりあえず、コラボ配信頑張って」

「ありがとうございます」


私は、お辞儀をして生徒会室をでる。


「……V4の3人がこの学園に、これは偶然なのかそれとも仕組まれたものなのか…」


そんな事を考えてしまう私であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後。


「しゅん!今日のナツミちゃんとユキちゃんとのコラボ配信見ろよな〜」

「わかったわかった」


モブAこと、高橋がそう言う。

本人の夏美と由紀は、さっさと帰ってしまった。

昼休みに生徒会室に呼ばれ何を話したかは聞かないようにした。

まぁ、これから聞きにいくんだけどな。


「生徒会室行ってみるか」


生徒会室に向かいドアをノックする。


「春田です」

「ん、いいよ入って」

「失礼します」


中に入ると、1人椅子に座る生徒会長の新堂あかりの姿があった。


「ん、で、何用?」

「なんで、由紀を呼び出した?」

「別に?知り合いだしいいじゃん」

「なんか変な事言ったりしてないだろうな」

「してな……」

「したのか」

「まだ、言ってる途中だけども‥‥したよ暴走しかけそうだったからあの娘」

「……掟か」

「そうよ、このままでいくと本当にやらかすわよあの娘」

「……」

「一応、注意はしたけど恋は盲目ってこういう事なのかね」

「…‥とりあえずありがとう」

「はぁ、まったく私だって忙しいんだから」

「すいません」

「調子狂うわね……で、由紀の件もそうだけど他にも言いたい事あるんでしょ?」

「あぁ…わかっちゃうか流石V4のトップ」

「ふふん!そうじゃないとやっていけないし」

「じゃあ、結論から言うとV4が集まってしまったこの状況どう思う?」

「……」


新堂あかりは黙る。


「あなたの回答を先に聞きたいなさん」

「……その呼び方で言うのやめてくれよ」

「いいじゃない知ってるの私しかいないし」

「そうだけど絶対に誰にも言うなよ」

「分かってるって私が約束を破った事ある?」

「……ない」


新堂あかりは、アバターもそうだがその見た目で周りからは地雷系女子と言われてるが一応この学園の生徒会長でもあり成績もトップクラスで約束は絶対に守る。


「でしょ」

「わかった俺の見解を言うよ」

「どうぞ」

「V4が全員同じ場所に集まった、これは配信時代が終わる可能性があるとだけ」

「なんで?」

「わからない」

「わからないってそれじゃあ理由にならないでしょ」

「そうだね、じゃあ……VTuberはいつまでもやってはいられない…それに……あんたもわかってると思うけど今のV4は、ユキを除いてVTuber

「そんなのわかってるよ」

「……VTuberなんて職業本当はやめたいんだ私だって。ファンの飽きはいつかくる、そして私達の飽きも…そしてせっかくの学園生活をVTuberに費やしてるでも」

「……」

「でも、そうしなきゃ私の目標が達成されない」

「目標か…あんたの場合は借金を返すのじゃなく?」

「借金もそうだけど、私は……私の憧れたあのトップVTuberみたいになって同じ舞台に立ちたい」

「さっきと言ってる事と矛盾してるぞお金じゃないのか?」

「っく…お、お金もだけど……やっぱり輝きたい……みんなに愛されたい」

「充分愛されてるじゃないか?」

「……そうじゃない…もっと…もっと…彼女のようになりたいの…」

「そうか、じゃあ配信時代もまだ終わらないな」

「私がいる限り終わらせないわ、あの人が帰ってくるまで絶対に」

「こんな真面目な娘がメスガキ地雷系って言われてるんだからやっぱり凄いよ」

「うるさい……てか、春田……あの人は今どこにいるの?VTuberなら分かるでしょ?」

「おいおい、これを聞くの何回目だよ。俺はあの人の事を全く知らない」

「うっ」

「それに、彼女とは実際にも会ったことないしほとんど通話やメールとかだったんだぞ」

「今、連絡してないの?」

「してないよ、彼女との契約で仕事以外の連絡はしない条件になってたんだ」

「真面目ね~」

「それほど彼女はVTuberという職業大切にしていたのだと思う、ファンの人を楽しませたいのをモットーに」

「でも彼女はあの言葉残して消えた」

「そうだな」

「そこの所はどうなの?」

「俺は、マスコミとかの予想通り恋愛をしたいからVTuberを引退したんだと思う、普通の女の子に戻りたいって言ってたし」

「……それはそうだけど」

「まっ…またトップVTuberが生まれれば彼女も復活するだろう」


俺は、あかりを見る。


「私に期待してるの?」

「あぁ」

「嘘つき、あなたは私に期待してるんじゃなくて愛川夏美に期待してるでしょ」

「それもあるけど彼女はまだまだ発展途中だ」

「どうかな?案外V4にあっという間に近づいちゃうかもしれないよ。今回のコラボで」

「どうだろうな、でも夏美は由紀の凄さを目の当たりにするよ」

「…確かに、それで心が折れないといいけど」


ピロン。

何かの通知音、あかりからのスマホから鳴った。


「ん??え、ナツミが配信開始してる」

「え?今日コラボじゃなかったの?」

「なんかコラボが初めてで待ちきれなくて、準備配信してるよ」

「……なんじゃそりゃ」

「まぁ、1位の私が見守ってあげましょう」

「あかり……通知設定入れてたんだな」

「しまっ……」

「好きなんだな」

「えぇ、ナツミのファンよ私は!!」

「それを知ったら夏美は喜ぶんだろうな」

「そうかもね。でも、私は言うつもりないし彼女がV4になって私に近づいた時に言うわ」

「それは楽しみだな」

「そうだ分かってると思うけど、私とあなたの関係も絶対に秘密にしてね」

「わかってるよ。でもいずれバレるぞ?」

「……確かに……じゃあ、元カレって事で」

「やめろ、それは色々炎上する…」

「まぁ、いいやバレてもあなたが近くにいた方が私は安心するし安心感はあるわ」


とびっきりの笑顔で手を握るあかり。

その手はとても柔らかかった。


「っ……」

「あ〜照れてる〜。私に推し変しても良いんだよ」

「俺はメスガキ地雷系には興味ない!」

「……ぴえん」

「……古いぞそれ」

「うるさいな……」


そんなやり取りをしながら俺とあかりは、静かに生徒会室から出たのであった。

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