第3話 私じゃダメなの?

みんなと交流が大好きなVTuberタレント。

趣味の一つとしてVTuberタレントになる人。

本業は別で副業でVTuberタレントなる人。

お金の為だけにVTuberタレントなる人。

自己承認欲求を強く自分の為にVTuberタレントなる人。

自分探しのためにVTuberタレントになった人。

色々な人が存在する、その中で彼女ーーー

美冬ユキの中の人は美冬由紀。

俺が最初に好きなった女性VTuberタレントで最初に彼女を見つけ出し応援していていわゆる最古参という肩書でファンクラブの第一号としての称号もある‥‥その一方で一番VTuberだ。

恥ずかしながらも1人の女性としてみていており大好きな存在であった。

彼女とは、リアルで会った事もあり互いに笑い互いに怒り互いに泣いたりもした。

でも恋人同士、いわゆる付き合ってはいないそういう関係だった。

そして彼女は人気になった。

人気になった理由は顔バレだった。

しかし悪い意味での顔バレではなかったアバターと中の人がまったく同じ姿で配信をしているというVTuberの業界ではあまり聞かない事例だった。

その美冬由紀(ユキ)が俺にキスをしている。


「これは、再会の記念のキス…そして…今でもあなたを狙っているという誓いのキスよ…絶対にあなたを私の者にする」

「っ…」

「お~。やるね~面白くなってきた。んじゃま~時間も時間だし自己紹介は終わり!ちょうど春田くんの隣あいてるからそこ座りなよ、つもる話もあるだろうし…ってもういっぱい話したかあはは~」


先生は、面白おかしく対応をした。

さて‥‥一体俺はどうなるのか。


――――――――――――――――――――――――――――――

朝のホームルームが終わりチャイムが鳴る。

恒例の質問攻めが始まるのだが…。


ばんっ!


とはいかずに夏美の椅子が音をたてて倒れる。

そして、こちらに近づいて。


「春田くんちょっと良い?」

「う、うん」


(まぁ、そうだよな……)

クラスの皆の視線を気にせず彼女は教室を出る。

続いて俺も教室でた。

隣の席にいた美冬由紀は、クラスの子に声をかけられそれに対応をしていた。


屋上に続く階段、ベタだがここが一番二人きりなれるのにうってつけだ。

先生もあまり見回りをしない。


「ねぇ……ハル…」

「どうした?」


ここは、冷静を装うのが良いと考えた。


「あの転校生って美冬由紀で美冬ユキって言ったよね、あの娘ってハルの推しだったよね」

「あぁ、そうだよ」

「……そっか」

「夏美も、一緒に観てただろ」

「そうだけども」


夏美は、モジモジと何かを言うのをためらっている。

昔から彼女はそうだ、人を傷つけたくないから何も言わないままはぐらかす。

そういう時、俺はいつも。


「夏美」

「ん?」


そっと、抱いて頭を撫でる。


「は、ハル…?」

「ありがとう、心配してくれて」

「そ、そんな事……」


夏美の身体が密着し、心臓の鼓動が聞こえる。


「俺は、大丈夫だから」

「でも……」

「俺は、彼女のせいでVTuberが嫌いになったけど、最近また見始めるようになったんだ」

「そ、そうなの?」

「あぁ……今は、俺はそのVTuberが好きなんだ」


夏美の鼓動が急に早くなるように見えた。

ちょっと試してみようか。


「だ、誰が好きなの?」

「言うのは恥ずかしいんだよな」

「な、なんで?」

「だ、だってその推しのVTuber……夏美と名前が似ているから……」

「そ、そうなの?」

「カタカナでナツミって言うVTuberなんだけど」

「っ‥‥‥似てるというか同じ名前だね」

「うん、とっても好きなんだ」


反応を見る。


「そうなんだ」


先ほどは違う冷たい視線を送られたように感じた。

予想していた反応とは程遠かった。


「夏美?どうかしたか?」

「ううん、なんでもない」

「その、ナツミってVTuberのどこが好きなの」

「わからない」

「わからないってどういう事?」

「直感で好きになったんだからわからない」

「ちょっと、意味わからないけどそれって一目惚れみたいな感じ?」

「そうかも」

「ふ~ん。じゃあ今は美冬ユキ好きじゃないんだ」

「……」

「何よその沈黙は」

「好きだよ」

「なにそれ……」

「好きだけどそれは、憧れでの好き」

「憧れでの好き?あんなひどい目にあったのに?」

「確かに、ひどい目にあったかもしれないでもそれは彼女なりの配慮なのかもしれないって思った」

「ハルがそう言うなら……って言うと思う?あの娘はずっと応援していたハルを見捨てた、人気になったからって天狗になってる!それを一番わかってるのはハルでしょ!?」

「……わかってるけど」

「結局、あの娘の事が好きなんじゃないの!?」

「違うって!」

「違わない!もう!いつまで抱いてんのよ!バカ!」


ぽんっ、夏美に押される。

俺は、腕を振りほどける。


「……ごめんって」

「ハル……私じゃダメなの?」

「夏美…?」


夏美は、こちらをずっと見つめ目を瞑る。


「っ……いいのか?」

「………」


この展開は、そう……俺は彼女にキスをするシチュエーションだ。

夏美の整った顔、俺の幼馴染はこんなに可愛いのか。


「い、いくぞ」

「……」


ゆっくりと、彼女の唇に……。


「そんなお約束の展開だめだから!!!!!!!」

「ちょっ」


そこには由紀がいた。

由紀は、俺と夏美を引き剥がす。


「そんな都合の良いハッピーエンドごめんだから!話は聞いたわ!私が嫌いなのは充分わかってるでもだいたいハルはそののかまってちゃんのその娘が好きなの?ハルが好きなのは、ナツミって娘でしょ!!」

「お、俺は……」

「そんな、中身も分からないVTuberなんて好きになるのおかしいよ!私は、そういうVTuber!」

「お、お前それは……」

「………っ」


夏美は表情ぐっと堪えてるようにみえた。


「私はナツミと対決するわ!」

「お前、まさか………」

「ふふふ、これぞVTuberらしいでしょ、どうせコラボするんだから対決企画よ!これはこれで皆、見てくれると思うし登録者数も伸びるわよ……ふふっ」


「っ! 」


夏美は、ハッとする表情をする。


「……なぜそうなるんだ」

「勝利者には………」


由紀は俺の言葉をまったく聞いてない、こういう時の由紀は有言実行でやり遂げる。


「………」

「特に何もないわ」

「「えっ」」

「私はそれでハルをナツミから取ろうと思わないしそれは出来ない」

「なんで」

「だってハルが私を好きにさせるのが最終目標の一つ、そして当たり前だけどVTuberの皆が憧れるトップVTuberになる、あの人のようにみんなが笑顔になれるVTuberに私になりたい」


俺が由紀を好きになるか。

そして、トップVTuber。

トップVTuber……登録者数は1000万人超え、たった1人しかいないその存在、由紀はそれを本気で目指してるのか。


「トップVTuberになるため、そしてハルとお、お、お、お、お付き合いするため……まず手始めに………ナツミよナツミから私は倒すわ」


胸を張る由紀。


「頑張って」


先程まで沈黙をだった夏美が喋った。


「あなたはハルの事好きじゃないの?」

「………分からない、好きなのかもしれない」

「……」

「でもこれだけはわかる絶対にあなたにはハルを奪われたくない。ナツミってVTuberにもあなたにも私は負けない!」

「あなたとは良いライバルになりそうね………じゃあ………えいっ!」


由紀は俺の、腕を組む。

ふにゅ。

大きな胸が当たる。

(うっ‥…なんだかんだ言って由紀、胸がでかいんだよなくそぉ……)


「お、おい」

「こういうのは早い物勝ち!愛川夏美さん……いえ、夏美!」

「っむずるい!」


金髪の髪の毛が揺れ、夏美も同じく俺の腕を組む。

これまた、大きな胸が当たる。

まるで、ライトノベルの主人公じゃないか……俺。


「ふ、2人ともこのまま行くのか………」

「「うん!」」


教室に戻る廊下、ぽけーっとしてる柊先生に出会った。


「おお、3人とも………バチバチしてるねぇ、これぞ青春だな!あはは、まぁでも程々にしとけよー特に転入生!~お前は人気VTuberなんだからそして、もちろん愛川お前もだからな……一応学生人気が高いんだから」


「「はーい」」

「2人の返事はいいな〜 仲良いの?」

「良くない!」


どうやら2人は息ぴったりのようだ。


放課後。


「はぁ………疲れた」


一日色々あったがなんとか放課後まで何とか持った。


夏美と由紀は用事があると言って早足で教室を出た。


――――――――――――――――――――――――――――――

4月〇〇日 

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