第2話 私はフラれたVTuber

「「そのお相手は‥‥‥美冬ユキちゃんです!!!!!!!!!」」


美冬ユキ、俺が最初に好きなった女性VTuberタレント、そして一番大嫌いなVTuberタレントだ。

それも、ナツミの登録者数を超える500万人のバケモノだ。

彼女の発言は世間を動かしたりもする。

VTuberの影響力は凄まじく世は配信時代と言われるようになった、始まりはたった一人のVTuberの配信から始まった。

彼女の登録者数は今現在1000万人超でまだ誰もそこへ到達し、破った事がない。

彼女の事を世間では《トップVTuber》と呼んだ。

彼女の配信は全てを魅了した。


彼女の配信で救われた人もいた。


彼女の配信で争いも起きた。


しかし、彼女の配信で争いもなくなる事があった。

彼女の配信は、何かしらの力を持っている、皆はそう言った。

だが、そのトップVTuberは、突然と言葉を残して消えた。


「「VTuberは、ずっとは続けられないと、ふと思う時があるの……それを思ってしまったという事は、今の私には皆に伝えられる事、できる事を全てやったと感じている。私は、自分が今までできなかった事をしてみたい、普通に戻ってみたいと思う。だから、今日で配信は一旦休止、さよならなんかじゃない。また会えるから、だからその時まで楽しみにしていてね。そして配信時代と呼ばれていて誰が付けたかわからないけど、少しは私のせいなのかなって思う。でも、業界自体は盛り上がっているのは嬉しい、誰もが輝けるそんな時代になってほしい。ちょっとこんな事を言うのもおこがましいんだけど……私の後を継ぐトップVTuberが生まれてきてくれるといいなって、まぁ寂しいお別れも嫌だから曖昧なままこの配信を終わりにしたいと思います!こういうのも私らしくて良いでしょ!‥‥じゃあっ!またね!」」


彼女はそれを言い残し配信を終えた、彼女のチャンネルはまだ残っていて昔のライブ配信は見れるようになっている。

そして、彼女は今どこで何をしているかわからない。


彼女を追い、彼女を超えんとトップVTuberを目指し、たくさんのVTuberが生まれたしかし、輝けるのは一握りだけだった。

その中で、ランクというものができた。

大まかに100万人で《ゴールドVTuber》

500万人で《プラチナVTuber》

そして1000万人で《トップVTuber》

という区分だ。

推移に関しては100万人で500人以上。

500万人を超えるVTuberはたった4人しかいない、その4人の事をV4ブイフォーと呼んだ。

V4は別に登録者数ランキングもつけられていたりする。

そして1000万人を超えるVTuberは突如言葉を残して去っていた1人。

VTuberに限らず世界全体でみると5000万人、1億人もいるのだが‥‥それはまた別の世界のお話。

ナツミは現在102万人の登録者数がいて、ゴールドVTuberと呼ばれている。

そのナツミがコラボする相手は、プラチナVTuberの一角の美冬ユキでV4のランキングでいうと4位だ。


「‥‥ナツミ、お前もアイツと同じような道を辿るのか?」


俺は、自然と言葉が漏れた。

伝わらないはずなのに隣の家にいる彼女の家を見ながら。


「「詳細はまた発表するね!ユキちゃんの方からも告知はあると思うから要チェックだよ!それじゃあ今日の配信は終わり!」」


ナツミの配信は終わった。


「世界って狭いものなんだな」


俺は、そっとスマホを閉じ寝ころんだ。

寝れば少し嫌な事を忘れるだろう。

それに……。


「ナツミの配信が本当なら‥‥手紙が入っているはず」


俺は、それを頭に入れながらゆっくりと瞼を閉じるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝。


「じゃあちょっと取りに行ってくるわ」

「はーい行ってらっしゃい」


俺は家を出る、昨日はあんなことになっちゃたし。

平常心平常心。


「さて着いたわけだが」


いざインターホンを、目の前にすると緊張する。

そして俺は、インターホンを押す。

しばらくすると。


「「は~い、ってあらしゅん君じゃない」」


インターホン越しに出たのは夏美の母だった。


「どうもです」

「昨日はありがとうね……夏美~!しゅん君きたよ!」


バタバタと音を立てているのがインターホン越しに聞こえる。

そして玄関が開き。


「ハル……おはよう‥‥」

「………夏美、おはよう」


恥ずかしかったが俺は、下の名前で呼んだ。

そしてパジャマ姿の夏美が出てきた。そういえば、夏美は朝苦手だったな、そういう俺もパジャマ姿なんだけども。

俺は、夏美のパジャマ姿をじっくり見る。

本当の素の夏美。

まぁ、自分も健全なる男子だし、胸元から見える谷間には目がいってしまうのはしょうがなく。


「……ハル?どうしたの?じーとみて」

「その……パジャマ姿‥‥…可愛いなって」


あ…‥‥。


「え、あっ‥‥えっと‥‥あ、ありがとう」

「……」


想像とは違う反応で沈黙が続いてしまう‥‥。


「あの、お2人さんイチャついてるなか申し訳ないんだけど‥‥」


奥から、夏美のお母さんが声をかける。


「おおおおおお母さん!そそそそんなじゃないから!!ちょっと待っててねハル!」


夏美はまたもやバタついて家の中に入る。


「しゅん君、夏美はあんなんだけどこれからもよろしくね」

「え……?どういうことですか?」

「言葉どおりよ、ふふっ」


あまり深い考えはしなく、これからも仲良くしてという意味合いで捉えようと思った。


「はい!これ‥‥昨日はありがとう!」


俺は、おぼんを受け取った。

手紙は入っていないようだ。

これであのVTuberは夏美ではない事が確定し……。


「それと……」

「ん…?」

「これ‥‥帰ったら、すぐ読んでほしい」

「わ、わかった」


差し出されたのは手紙…ではなく一枚のメモ用紙だった。


「それだけ!またね!」

「う、うん」


手紙ではなかったがそんな事ってあるのか?

心臓のドキドキが止まらない。

俺は、高まる鼓動を抑えながら家に帰る。


「ただいま~!」

「お帰り~って…顔がニヤついてるわよ」

「そんな訳‥‥これ、おぼん‥‥」


俺は、おぼんを母に渡した。


「ちょっと待った!!!」

「え、何?」

「その手に持ってる紙何?」

「うっ」


く、この母親……洞察力は昔からすごい。


「あ~なるほどね~よかったね」

「な、なんだよ」

「まぁ……昔から夏美ちゃんの事好きだもんね」

「そ、そんな事は……」

「ま、青春ごちそうさまでした!ごゆっくりね~」

「……た、楽しみます」


否定する気もないけど本当の事を言うと俺は夏美の事が好きだ。

幼馴染での好きじゃない、ちゃんと異性としての好きだ。

でも、この気持ちを伝えたら今までの関係がくずれてしまうそうというテンプレートありきの事を考えている。

むしろ幼馴染ってなにかあったら関係がくずれそうな事ありすぎの様な気がする。

誰に言ってるいるかわからないが俺は一人ツッコミを脳内でしていた。


「さて……」


俺は、部屋に入りもらったメモ用紙を開ける。


『一緒に登校したい。追伸 懐かしいお皿ありがとうございますと伝えてください』


「夏美‥‥」


俺はそのメモ用紙をぼーとっ見つめるのであった。

登校までまだ少しだけ時間があったため俺は寝る事にした。


――――――――――――――――――――――――――――――

「夏美~早くしないと遅刻するわよ~」

「わかってる~!ちょっと待って~」


私は鏡の前に立って身だしなみを整える。


「変な所ないかな‥‥制服‥‥似合ってるかな?」


いつも着ているのに今日は何か違和感がある‥‥。


「その場のノリとは言え……あんなの書くんじゃなかった‥‥うぅ‥‥恥ずかしい」


何度も、何度も髪の毛や制服を弄る。


「も~夏美なにやってるのしゅん君が待っ‥‥‥‥」

「……ちょっお母さん」

「……ふ~ん、愛の力は偉大だね」

「そそそそ、そんなんじゃないんだからね!!!もう!!行ってきます!」


私はお母さんの言葉を無視して、ハルの家に向かう。


「……だ、大丈夫だよね…?」


インターホン前に立つ私、反射するカメラのレンズからもう一度私をみる。


「よし……大丈夫」


ガチャっ。

ハルの家の扉が開く。


「あっ……夏美ちゃん!?」

「あ、お母さん…!」


でてきたのはハルのお母さんだった。

私は、ハルのお母さんの事もお母さんという。


「もしかして、しゅんに用事‥‥?」

「えっと…」

「…‥まだ、寝てるから起こしてきてよふふ」

「……」

「大丈夫!大丈夫!きっと喜ぶから」


と、言われつつ私はハルの部屋に向かう。

昔は、いっつもお互いの家を行き来して起こしあってたし。

いつからだろうか、私達がそういう事をできなくなったのは、そんな事を考える。


「‥‥‥‥ぐぅ……すぴ……」

「良く寝てる……」


私は、ハルの寝顔を見る。


「ここで私が‥‥ハルに…き、キスをしたら…」


そんな事を考える。


「いやいや…そんな事……できるわけ……よし……昔みたいな…あの方法で」


私は、深呼吸をする。


「ハル~!!起きろ!!!」

「‥‥‥‥ん~夏美?ん~‥‥もうちょっと……」

「駄目よ!もう時間なんだから遅刻しちゃう!」

「‥‥ん~夏美ぃ‥‥」

「え、ちょっ」


寝ぼけているのか、私の腕を掴む。


「ハルっんっ……あっ……ちょっと‥‥‥‥」


私を包むかのように、抱きしめる。


(あったかい……ハルの匂い‥‥‥‥大好きな匂い……)


「って違う!!!起きて!」


私は、ハルを蹴り飛ばした!


「ぐえっ…な、何‥‥」

「何ねぼけてるの!」

「な、夏美!?」


驚いた顔をするハル。


「も~遅刻しちゃうよ!起きて!」


私は、毛布をハルから引きはがす。


「ちょっ、夏美…やめ」


ハルは、身体を隠そうとする。


「もーなんで隠すの早くしないと本当に遅刻しちゃうよ!」


私は、ハルに近づき身体をくすぐる。


「そ、それは」


ハルはくすぐりが苦手なのだ。


「ほれほれ~何を隠してるの」


次第に、ハルのガードが外れていくそして、参ったというポーズをするが‥‥。

ハルの身体の…一部が膨らんでいた…。


「あっ‥‥その‥‥」

「‥‥」

「私でのせいで……そういう風に…‥‥」

「……う、うん」


ハルは沈黙を貫く……。


「あ、あわわ‥‥あぁぁ‥‥」


昔とは、違うハルの身体。

そっか…そっか…私で…こんなに‥‥。


「‥‥‥‥って違ううううう!!ハルのエッチィ!!!!」

「ちょお!!これは違う!!!これは、男の生理現象だ!仕方ないだろ!!別に夏美の匂いに反応したとか、夏美の身体が柔らかかっ‥‥あ……」

「ん~~~~~~~バカあっ!!!!」


私は、ハルに毛布を投げつけた。


「うわっ!」

「も、もう!!早く着替えて!」

「あ、あぁ!わ、わかった」


ハルは、立ち上がろうとするがふらつくそして…わたしのほうに倒れて。


ドスンっ!!!

その大きな音からか、下からハルのお母さんがこちらにやってくる。


「もう~2人共!いつまで‥‥やってるの‥‥って…‥あらあらお約束って本当にあるのね!今日は赤飯ね!」

「ちょっ…これは…」

「んっ…あっ‥‥ハルぅ…そこ触っちゃ…んっあっ」


ハルが私の胸を掴んでしまう、大きくごつごつしているものが私の胸に入り込んで何とも言えない気持ちよさが優ってしまう…‥そして、私の胸の頂点が少し…大きくなって…まずい……感じてるのバレちゃう!?


「ちょっ夏美!!」


ハルが喋る。


「はっ!ハルっ!」


私は、ようやく今の状況がわかった、ハルに押し倒されている状況を、そしてそれをお母さんが見ている


「あっあっ‥‥」

「まぁ、私も大人だから何も言わないけど‥‥朝から‥‥お盛んね……でもちゃんと‥‥やる事はやりなさいよ~」


「「違うううう!!!!!!!!!!!!」」


私とハルは、全力で否定をした。


――――――――――――――――――――――――――――――

「はぁっはぁっ」

「もう‥‥ハルのせいで遅刻ギリギリじゃない!」


俺と、夏美は学校まで走る。


「ごめん…」

「もう‥‥わた‥‥の計画‥‥台無‥‥じゃ」


夏美は走りながらぼそぼそいう。


「ん、今何か言った?」

「言ってない!!!」


あんな事をしてしまったからな。

俺達は全力否定をしたが、母さんはまぁ、うん、しょうがないと流した。


「‥‥ごめんて」

「……わ、私もごめん‥‥でも‥‥」


足を止める、夏美。


「どうした?」

「‥‥ううん。なんでもない」


本当は、何か言いたそうな夏美でも俺は、問い詰めない。


「ん!あっ、やばい!予鈴のチャイムなってる」

「え!行こ…ハル!」

「あぁ」


なんとか本鈴のチャイムまで間に合った。

俺達が、2人で一緒に登校しているが珍しくクラスもざわざわとしていた。


「お~なんかざわざわしてますね。面白い事でもあった?」


担任の柊先生が入ってくる。


「まぁ…いいや。今日は転校生がきたので紹介する」


ざわざわとまた教室がうるさくなる。


「こんな時期に転校生か……っ‥‥漫画じゃあるまいし」


ガラっと入ってくる。


「っな‥‥」


嘘だろ、そんな訳‥‥。

その姿は黒髪のボブヘアそしてすらっとしていて誰もがモデル?と目を疑ってしまうスタイルだ。

彼女はゆっくりと歩き、黒板にチョークで自分の名前を書いていく。


美冬由紀みふゆゆきです。いずれバレるかもしれないの一応言っときますという名前でVTuberをやっています、宜しくおねがいします!」

「「ええええええええええええええ」」

「マジかよ」「うそだろ」「でも由紀さんの見た目がもう美冬ユキちゃんと同じだし」


クラスの皆それぞれの意見を言う。


「そうですね、美冬ユキは私そのものですから、私は他のVTuberとは違うので」

「やばい!」「めっちゃ可愛い」「夢じゃないよな」

「夢じゃないですよ……私はここに居る‥‥‥‥そして……私は、好きな人に会いに来ました」

「好きな人?」「誰々?」「由紀ちゃん好きな人がいるのか」「そういえば配信で言ってたな」

「それは‥‥」


美冬由紀がびしっと指をさす。

それは‥‥‥‥。


「春田く……ハル……?」


夏美がボソと呟く。

そう、俺の方を指さしていた。


「春田春歌‥‥!いえ‥‥ハル!!やっと会えた!ずっとずっと‥‥探してたんだよ」

「っ」

「え!」「まじ!?」「なになに」「なんで!」

「私も、興味あるな。2人はどういう関係なんだい?」


担任の柊先生はも興味をもったらしく止めもしなく話を続けさせる。


「先生も興味あるんですね」

「あなたは有名だからな……そういう話私好きなんだ」

「そうですか‥‥では‥‥続きを‥‥」


美冬由紀は俺をじっと見つめる。


「私と春田春歌との関係‥‥‥‥…私は春田春歌によ」


彼女はとんでもない発言をした。

クラスの中は、先ほどの盛り上がりとは裏腹に静かになった。


「でも、私は‥‥春田春歌‥‥いえ‥‥ハルが大好きだから‥‥此処にきた」


ゆっくりと、近づいてくる美冬由紀‥‥そして、座っている俺の前に立ち顔を近づける。


「えっ」

「っん…」


俺の唇に、彼女の唇が交わる、柔らかくそして甘く‥‥。


「これは、再会の記念のキス…そして…今でもあなたを狙っているという誓いのキスよ…そして…絶対にあなたを私の物にする」


美冬由紀は、チラっと誰かの方を見たような気がした。

だが、それは誰かはわからなかった。


「お~。やるね~面白くなってきた。んじゃま~自己紹介は終わり!ちょうど春田くんの隣あいてるからそこ座りなよ、つもる話もあるだろうし…ってもういっぱい話したかあはは~」


先生は、面白おかしく対応をした。

さて‥‥一体俺はどうなるのか。

――――――――――――――――――――――――――――――

4月〇〇日 

ナツミ:チャンネル登録者数 105万人 スパチャ額ーーー円

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