疎遠だったツンデレ幼馴染は大人気VTuber!?スパチャ額で俺への態度変わる!?~登録者1000万人達成でデレるまで~
峰尾ゆい
第1章 WHAT IS ”VTuber”?
第1話 幼馴染はVTuber??
「ねぇ、もっと……激しくしてよ……ハル」
「…………っ」
このような始まり方はもう見慣れたような日常だと思うが俺も色々な先輩方を見習って同じような事をしようと思う。
俺の名前は、
成績も普通、スポーツも普通、交友関係も普通。
至って普通なのだ、名前を覚えてもらうにはもっとインパクトある名前だったらいいのだが本当に普通の名前だ。
いやそんな事はないか‥‥春と歌でしゅんか、みんなからはしゅんかハルと呼ばれている。
まぁ、ハルと呼ぶのは俺の幼馴染と手が届かない雲の上の存在のあの人だけだった。
以上、俺の自己紹介。
さて――話を現実にもどそう。
「……夏美、本気なんだな?俺、1度やったら止められなくなるぞ」
「う、うんわかってる……きて、しっかりと奥で受け止めたい……ハルの本気を直接感じたい」
この状況も幾度のパターンをくぐり抜けた方なら予想はたやすいだろう。
「……肩が凝りすぎ」
「あ~気持ちいい~」
そう、俺は幼馴染の肩をマッサージしてるのだ。
「久しぶりに夏美の家に来たと思えば……これか」
「なに~?不満なの?この美少女で可愛いくてモテる、夏美ちゃんが相手してるのに」
「はいはい‥‥こんな姿、クラスのみんなに見られたらどうするんだよ?」
「見せないよ!こんな姿みせるのはハルだけなんだからね!」
彼女のその言葉が天然で言ってるのか狙って言っているかわからない。
「そ、そうか……ん?なんかパソコンついてるけど大丈夫?」
「あっ!えっ!?」
夏美は慌てた様子でパソコンを閉じる。
「……なんか隠す事でもあった?」
「ううん、別に……」
「そっか」
夏美は、髪の毛をくるくると触る。
彼女は嘘をつく時に髪の毛をくるくるする癖がある、本人は未だに自覚をしていないが幼馴染である俺はわかる。
でも、俺は深くまで聞かない。
パソコンを隠した理由、それは多分――
彼女は登録者数100万人超えの大人気VTuberでそのたぐいのものが画面に映っていたからだ。
「パソコンはいいから肩もんでよ」
「んっ‥‥‥‥あっ‥‥‥‥そこっ‥‥好きぃ」
「……」
今日は機嫌が良い、昨日の配信でファンからのスパチャが500万円を超えていたからだ。
俺も、彼女の配信をなんとなく見ていたがスパチャによってその日の気分が変わる。
教室での雰囲気は貰ったスパチャに反映されている事がわかった。
例えば、今回みたいなスパチャ額500万円だと教室での対応が良く明るい。
そして100万円以下だと、ちょっと素っ気なくなる。
10万円以下もしくは1万以下だと……。
むちゃくちゃ機嫌が悪いオーラを出してくる。
そもそも学生の身分でそんな大金を貰っている事自体すごいのだが、まぁそれはそれとしよう。
そして彼女の機嫌は普通の人には分からない。
なんたって彼女は人気者で周りからは高嶺の花とみられていて彼女は演技をしているからだ。
でもそれを分かるのは幼馴染である俺だけ。
おっと話が反れた……まず初めになんで疎遠だった幼馴染の家に俺がいるか?
そして、何故彼女が大人気VTuberとわかったのか、そこからお話をしよう。
――――――――――――――――――――――――――――――
「「おはっしゅ~!こんにちっしゅ~!こんばんっしゅ~!今日も、ナツミの配信見てくれてありがと~!」」
クラスの教室、今は朝のホームルームの前だ。
「なぁなぁ、しゅん。昨日のナツミちゃんの配信見たか?」
モブAこと、高橋がナツミというVTuberの配信動画を見せて話をかけてくる。
彼女のアバターは桜色の髪でツインテールだ。
「うーん冒頭だけかな、あんまりわからないし配信って長いじゃん!なんでそんなのを見て楽しめるの?」
これがいつもの返し。
「相変わらず冷たいなぁ……そう言うなよ、騙されたと思って今日の配信みてくれよ」
「なんでだよ?」
「重大発表があるらしいんだ!」
「重大発表?」
「そうそう」
俺はあまり分からないがこういう重大発表は大して重大発表でもないという。
正直、俺はこういうのは苦手だ。
「分かった分かった見てやるから落ち着け」
友達付き合いも大事だし、たまに息抜きにでもいいか。
時々、ナツミの配信は勉強の作業用で聞いていたりはする。
ナツミの声を聴いてると何故か懐かしい感じがして心地が良くなり勉強が捗る。
「「ということだから明日の21時に重大発表があるから良かったらよろしくね!それじゃあ!今日も1日お疲れ様〜!はっばば〜い〜♪」」
「終わった?」
「うん。お前、ナツミちゃんもそうだけどVTuberがお前に何をしたって言うんだよ〜?」
「特に何も無いよ……」
と、言うのは嘘だ。
昔は、俺もVTuberが大好きだったのだがとあるきっかけであまり見なくなった。
「あ、なるほどなぁ」
高橋は何故かニヤニヤしている。
「おはようございます夏美さん」
「おはよう」
声の方向を見る。
長い金髪に、すらりとした長身。
誰もが振り向いてしまう顔立ちの良さ。
「愛川さん……今日も美しくて可愛いなぁ……」
「そうか……?」
「流石、幼馴染は言うことが違うよ……お前は、ナツミちゃんより幼馴染の愛川さんだもんな」
「別に夏……愛川とはそういうのじゃないし」
中学校までは普通に話していたが高校生になったその時から自然に話さなくなってしまった。
彼女は元々可愛かったしモテてもいた、もちろん彼女を好きな男子はたくさいる。
告白をした男子もいるのだが結果は、玉砕。
どうやら、今は恋愛には興味がないらしい。
それを聞いてホッとした自分もいた、何故かって?
ずっと一緒にいた幼馴染が離れていくのが嫌だったのだ。
幼馴染がいる人ならわかる気持ちだと思う。
そして運が良いのか悪いのかあの桜色の髪の毛VTuberナツミと名前が被っているのだ。
「おはよう」
「愛川さんおはよう」
俺は、苗字で夏美を呼ぶ。
夏美は、表情を一つも変えずに挨拶を返した。
でも俺は、わかってる夏美は俺と前の様に話したいと顔にでていた。
俺もそうはしたいが、周りの目が気になって中々話しずらい。
自然に異性の幼馴染と話せる環境になってほしいと世界になんとなく願うのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「起立、礼」
今日も何事もなく一日が終わり、帰宅をする。
「高橋、じゃあまた明日」
「おう明日!配信の感想聞かせてくれよな」
「はいはい。期待しないで待っててくれ」
俺は、夏美が先に教室から出たのを確認をする。
「何をしてんだろうな俺は……」
気まずさと同時に、恥ずかしい自分がいた。
「ただいま」
「しゅんおかえり~。あっそうだ、頼みごとがあるんだけどいい?」
ちなみに母は俺の事をハルと呼ばずにしゅんと呼ぶ。
「ん?どうしたの?」
「今日、愛川さんの所、留守で夏美ちゃんしかいないの~それで、夕食をつくったから届けてくれないかな~」
母は、おぼんを用意してぱっぱと夕食を乗せる。
「デコレーションもパーペキね」
「母さんはいつまでも若いんだね」
「まぁね」
夕食はご飯・味噌汁・唐揚げ・そして、デザートのリンゴ。デコレーションは食べ物ではなくお皿の方だった。
ハート型や星型のお皿だ。
「これって」
「あ、わかった?昔、あんたと夏美ちゃんがよくお互いの家で食べっこした時に使っていたお皿だよ」
「そ、そうなんだ……」
「また、前のように話したいんでしょ」
「……」
「まっ……そういう年頃なのはわかってるけどね」
「母さんには関係は……」
「よし!じゃあ行ってきなさい!あっ……夜遅くなるなら言ってね…ふふっ」
「母さん‥‥‥‥そんな事はしないからね」
しょうもないツッコミを入れる俺。
母さんと夏美の母も実は言うと幼馴染同士なのだ。
「仕方ないか‥‥」
夏美の家は、隣の家だ。
「もう、帰っているだろうか」
俺は、インターホンを押す。
……。
………。
反応なし。
「ま、母さんも勝手にあがってる所みたことあるしあがるか」
俺は、夏美の家の鍵を使う。
このご時世良いのか?というのはさておき、それほどに仲が良いのだ。
「じゃあ、お邪魔‥‥」
鍵を差し込もうとしたその時。
ガチャっ。
「ん、ごめんなさい‥‥」
「あっ……」
「あ、ハルっ‥‥」
夏美が出てきた。
俺は、何を言おうかわからなくってしまい咄嗟に。
「えぇと、これ!母さんから!今日、1人だって言うから!じゃあ!」
「えっ!ハル!?」
久しぶりに夏美の口から聞いた俺の名前。
「食器とか明日、朝回収するから!!おやすみ!!」
「は、ハル‥‥待っ‥‥」
夏美が何か呼び止めようしていたが、俺は恥ずかしくなってしまって家に戻ったのだった。
「はぁ、はぁ」
心臓の鼓動が、はやくなっていく。
どうしてこうなってしまったんだ。
普通に話せばいいだけなのに。
「あら、もう帰ってきたの早いわね」
「母さん‥‥」
「ん?」
「幼馴染って大変だね」
「そうね。焦らずで良いと思うよ」
「‥‥そうだね」
「まっ、ご飯でも食べようか」
「うん」
ご飯を食べた俺は時計をみた。
時刻は20時55分。
「あぁ…そういえば高橋が言っていたな‥‥見て見るか」
俺は、スマホをつけ彼女……ナツミの配信を見る。
「「おはっしゅ~!こんにちっしゅ~!こんばんっしゅ~!今日も、ナツミの配信見てくれてありがと~!今日は、重大発表なんで実写でいくよ~!っと言っても手元配信で、食事をしながら配信するよ~」」
いつもの桜色の髪でツインテールのアバターではなく。
実写での配信だ、ナツミの手が映る。
「見えてるかな~ピースピース」
ナツミはカメラに向けてピースサインをする。
「今日はねいつものインスタント系の商品じゃなくて、手作りなんだ」
そう言うと、ナツミは手作りした食事を写す。
「え…?」
その食事は、ご飯に、味噌汁、唐揚げ、そしてデザートのリンゴだった。
「そんな訳‥‥」
視聴者が投稿できるコメントには、【おいしそう】【唐揚げ食べたくなった】【ナツミちゃんに食べられたい】
というコメントが流れている、そして‥‥‥‥【食器可愛いね、ハートと星のお皿だ】
そう、今日俺が、幼馴染に渡した夕飯と全く同じだった。
「「あ~!そうそうハートと星のお皿!さっき、手作りって言ったんだけどこれ、隣の家のお母様から頂いたんだ~」」
ナツミは、自信満々に言う。
「「隣の家とは仲がよくてね、幼馴染ちゃんが今日届けてくれたんだ~!でもね、その幼馴染ちゃんと話そうとしたんだけどその幼馴染ちゃんとちょっと気まずくなって話せてなくて残念‥‥」」
【ケンカでもしたの?】というコメント。
「「ううん、喧嘩なんてしてないよ」」
【男?】
「「そうそう男の子!でも、別に好きとかじゃないよ!私が好きなのは、リスナーの皆なんだからね!」」
【よかった】【ナツミキュンのツンデレ可愛い】【一生推してく】【ナツミに男いても恋愛には発展しなさそう】
そんなコメントが流れていると同時に、リスナーからスパチャが。
五千円、一万円、二、三、五万円と…どんどんとナツミにスパチャが投げられていく。
「……夏美……なのか…?」
俺は、その言葉をコメントしようと文字を打ち込む。
「待って……でもそんな事したら‥‥」
今まで積み重ねてきた、関係が一気に崩れる、それよりも何コイツと言われそう。
「やめておこうまだ、ナツミが夏美って確定したわけじゃないし」
俺は、打ち込んだ文字を消した。
「「ごちそうさま!本当に美味しかった!お礼の手紙でも書いて明日、幼馴染くんが取りに来てくれるから一緒に入れとこう!」」
先ほどまでの幼馴染ちゃん呼びが幼馴染くん呼びに変わった。
リスナーはあまり気にしてないようだ。
そして、ペンの音が聞こえ手紙っぽいものを書いたようだ。
「できた!」
【ナツミちゃん真面目】【嫁にしたい】【幼馴染くん昇天するぞ】【そこ変わってほしい】【お手てちっちゃい】
と、コメントが飛び交う。
「「さてと、お待たせしました~重大発表しますね‥‥‥デレレレレレレレ……ででんっ!今回、大物の方とコラボ配信することに決定しました!」」
【コラボ!!】【だれ?だれ?】【ついにコラボ解禁か!】
コラボの発表、そういえばナツミは誰ともコラボせずに一人で配信していた事を思いだした。
「「そのお相手は‥‥‥
【うええ!!!マジ!】【大手じゃん!】【何事!?】【何繋がりなんだ!?】【V4じゃん!】
「嘘だろ‥‥」
俺は、美冬ユキと言うVTuberタレントを知っている。
だって……。
「くそ……なんで」
俺が最初に好きなった女性VTuberタレント、自慢でもないが最初に俺が彼女の事を見つけずっと応援をしていただけどそれと同時に―――
この世で一番大嫌いなVTuberの名前でもあったからだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
4月〇〇日 現在
ナツミ:チャンネル登録者数 102万人 スパチャ額 500万
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