第2話 拉致誘拐
そんな状態がずっと続いていたのだが、なぜか、お隣の門松署管内では何も起きていなかった。
ちょっとしたことはあったりするのだが、組織が絡むようなことはあまりなかった。だが、ここ最近では、凶悪犯と呼ばれるようなものはそれほどないのだが、詐欺事件であったり、金銭に絡むような公金横領的な犯罪はちょこちょこあった。
福岡刑事が関係する事件とは少し種類が違うので、それほど意識はしていなかったが、そうもいっていられないことが、最近増えてきたようだったのだが、いまだ刑事課では、その意識はなかったのだ。
そもそも、県警本部もそれほど意識しているわけではなかった。あくまでも、酒殿署管内での事件を中心に考えていたのだが、それは、ある程度まで、組織が解散した後の残党が、今どのようにしているかということが、分かってきたからだった。
他に移り住んだ人間もいるが、それは隠れ蓑であって、活動拠点を、酒殿署管内において、裏で暗躍している連中が多かったのだ。
そのことは、内偵捜査などである程度までは分かってきたが、その割に、本部管轄で出た犯罪者の足取りが途中から、まったく分からなくなっていることに、変わりはなかったのだ。
「どこで、どのようになっているのか、すっかり分からなくなってしまっているのは、どうしたことなんだろうか?」
と、本部の刑事もすっかり困っていたのだった。
門松署の連中は、気にはなっているが、気持ちとしては、
「対岸の火事」
である。
「世の中が平和ならそれに越したことはない」
と思っていて、
「その火の粉が降りかかってこないことが一番だ」
と、大っぴらい口にしている。
ただ。最近増えてきている詐欺事件には、注意をしているのだが、それは、
「組織の活動資金に回っているのでは?」
と考えられたからだ。
昭和の頃の、組織の活動資金とは、かなり変わってきている。
昭和の頃というと、一般的に考えられるのは、
「密輸した麻薬によっての利益」
であったり、
「パチンコ屋や風俗店などから上がる、いわゆる、「みかじめ料」だったり」
そんなものが、主な資金源だったりするだろう。
風俗も経営もその一つなのかも知れないが、最近は、ギャンブルも、風俗も、昔のように、あからさまに、
「組織がやっています」
などというのは、通用しなくなってきている。
法律も厳しくなってきているのもあるが、昔のような、
「極道による任侠」
というのが、流行らなくなってきているのだろう。
そういえば、同じ組織と言われるものでも、ある時期、宗教団体も、
「反政府組織」
という括りで、大きな社会問題になったこともあった。
それまでにも、
「赤軍」
と呼ばれる組織であったり、宗教団体というわけでも、暴力団関係というわけでもない組織が大きな犯罪を起こしたりというのが定期的にあった。
食品業界を同時に脅迫するという事件もあったりして、結局、未解決だったので、あの事件の主犯が、
「どういうグループだったのか?」
ということも分からずじまいであった。
あれは昭和の最期の時期だっただろうか?
何が目的なのか分からない、食品メーカーへの脅迫事件と似た時期に、まったく違う事件が、社会を震撼させたことがあった。
もっとも、この二つの事件は、県警本部があるこの県とは、関係のない、帝都であったり、大阪などの大都市で起こったことであった。
どちらが先だったのか、ハッキリと覚えていないが、もう一つの事件というのは、完全な詐欺事件であり、しかも、やり方のえげつなさが、世間の注目を浴びたのだった。
今でこそ、
「オレオレ詐欺」
であったり、ネットを使った脅迫などの犯罪があるが、当時は、ネットなどもなく、携帯電話などもない時代だった。
ただ、これは組織が暗躍をしたわけではなく、表向きは普通緒商事会社なのだが、そこの人間が、他人の家に入り込んで行った犯罪である。
何が汚いかというと、
「お金を持っているが、家族から相手にされなかったりする、老人をターゲットにしていた」
のだった。
その頃になると、核家族化してしまい、それぞれの家族が別々に住むというのが当たり前になってきていた。
息子たちも、親の資産を知らなかったのだろうが、それよりも、親との同居を鬱陶しいと思うからだろうか。親を放っておいて、自分たちだけで、都会でマンションを借りて過ごすということは当たり前になってきた。
会社の事情もある。
会社は、社員を定期的に転勤させ、そこで、キャリアを積ませようというのが、当たり前であり、転勤ができないというと、出世ができなかったり、就業規則違反ということで、窓際族となったりしていた。
だから、転勤覚悟ということで、すぐにでも引っ越せるようにm賃貸マンションに住んだりしていて、気が付けば、
「息子夫婦は、北海道にいる」
などということで、何かあっても、すぐには飛んでこられないような時代になっていったのだった。
会社によっては、海外勤務ということもあり、それこそ、
「実家の家族よりも、実際の家族を日本において、単身赴任」
ということも、当たり前だという時代になっていたのだ。
そうなると、実家には老人だけになってしまう。特に、男性だけが、残ってしまった家庭などは、家事もうまくできず、寂しい毎日を送らなければいけなくなるだろう。
詐欺組織はそんな老人過程にターゲットを定めたのだった。
放っておけば、
「老人ホームにでも入るか?」
と考えているところに入り込み、女性社員を送り込んでは、家事などを積極的に行い、今でいう、介護のようなことまでしていた。
下手をすれば、
「下の世話」
までしていたかも知れない。
寂しい老人の気持ちに付け込んで、色仕掛けもありで、まるで、
「家政婦」
でも来てくれたかのような状態に、さらに話し相手にもなってくれれば、
「まるで、子供か孫が同時にできたみたいだ」
といって、大喜びするに違いない。
それこそ、
「盆と正月が一緒に来た」
と思うことだろう。
「薄情な古戸たち夫婦に比べて、何と優しい、女神のようではないか」
と思い込むのも当たり前のことで、そうなると、後はもう言いなりだった。
遺産を、この女性に譲るなどという遺言を書かせて、正式文書にしてしまえば、もうこっちの勝ちであった。
それほど元気ではない、いつ死んでもおかしくないような老人に照準を合わせているので、後は時間の問題である。
きっと、老人は死ぬまで分からないだろう。死んでからも分からないままかも知れない。だから、これが世間に明るみになった頃には、かなりの被害者がいたことだろう。何しろ被害者本人に被害者意識がないのだから。
昭和の詐欺というと、酒類としては、少なかったかも知れないが、それだけに起こると目立つ。
しかも、その手口は卑劣さが前面に出てしまっていて。
「血も涙もない」
ということになっただろう。
この時のひどかったようで、連日ワイドショーのネタになっていたようだ。
何しろ、
「老人を、色仕掛けで狙った卑劣な犯行」
あるいは、
「なけなしの老後お金をむしり取るなんて、鬼でもしない所業だ」
とまで言われていたようで、さらにこのニュースをひどくさせたのが、当時の社長に、ワイドショーのカメラが、こぞって、取材に行った時のこと、その混乱に乗じて、一人の男がナイフを持って、襲い掛かり、そのまま刺し殺してしまったのだ。
ほとんど、放送事故の状態で、しかし、とっさのことだったので、防ぎようもなかったのだろう。
まさか、取材でごった返しているところに、傍観が襲い掛かるなど、誰が想像できたことだろう。
そんな状態が、その場面がもろに放送されたのかどうかは、今は分からないが、しかし、目の前で殺人が起こったということで、さすがの取材陣が大混乱したことでも、そのひどさは分かったことだろう。
惨殺現場が放送されるだけのショッキングなことだったに違いない。
それを知っている人は、もうほとんどの人は、初老くらいになっているのだろうが、それだけ昭和という時代が、遠くなってしまったということだろう?
そんな詐欺事件が起こり、さらに、食品会社を狙って、誘拐や脅迫を繰り返したこの二つの事件は、
「昭和の終わりにふさわしい」
というくらいに言われていたのではないだろうか?
今でこそハッキリしないが、そんな時代からくらべて、今の時代は果たしていい時代だと言えるのだろうか?
これは、少し違った見方も出てくる。
「被害者に被害者意識って、本当になかったのだろうか?」
ということである。
老人というのは、昔から、
「守銭奴」
と言われる人が多いくらいに、年を取ると、
「お金に対しての執着は大きくなるのではないか?」
という。
しかし、考えてみると、そんな老人は、一人孤独だったから、お金に執着するのであって、頑固だったりするのも、自分が相手にされていないという被害妄想から、自分のことを孤独ではないとまわりに言いたかったのかも知れない。
だからこそ、本当の孤独を知っているのだろう。
そうなると、却って騙しやすいのかも知れない。女が、
「私だけが、あなたの孤独を分かってあげることができる」
などといい、それまでに、
「私は、もう男として終わってしまった」
と思っている老人を、優しく包み込むようにすれば、コロッと騙される老人は結構いるだろう。
実際に、そこに目を付けた、その悪徳商事会社も、さすがと言っていいだろうが、人間の心の裏返しに潜むものを、このような形で狙うということは、本当にすごいことであり、えげつなさが群を抜いているといってもいい。
何ともやり切れない事件であったが、社長が殺され、事件は、真相という意味では、闇から闇に葬られたのかも知れない。
それを小説にした作品があったが、その作品では、
「社長の殺害は、その社長には黒幕がいて、変なことを喋られると困るから、殺害したのだ」
というような話になっていたが、さすがに信憑性は薄かっただろう。
小説としては面白いが、さすがに昭和の時代に、どんな頭のいい組織があったというのか、考えさせられるに違いないだろう。
福岡刑事が、どうしてそんな話を思い出したのかというと、この間、定年退職した先輩刑事から、その当時の話を聞いたからだった。
その刑事は、本当に叩き上げの人で、昭和の事件があった頃は、まだ、交番勤務だったという。
このあたりはそんな事件が起こるような土地ではなかったが、
「昭和が終わる」
というそんな時期に、ちょうど、警察に入り、いろいろ興味津々だった頃だったので、その事件はセンセーショナルに覚えているということだった。
まるで、自分が捜査に加わったかのような自慢げな話し方だったが、実際にはそうではない。ただ、せっかく話をしてくれるのを、むげにするわけにもいかないし、そもそも、福岡刑事は、聞き上手だったのだ。
人の話を聞いていると、自分の勉強にもなるし、何よりも、
「有意義な時間を使っている」
と感じるのが嬉しかったのだ。
最近の若い連中は、ゲームとかに無駄な時間を使っているというイメージが強い福岡は、自分もそんなに若いはずでもないのに、若い連中を、どちらかというと嫌っている。
警察に入ったのも、半分はそれもあった。
正義感のようなものが強くなければ、いくらなんでも、警察に入ろうとは思わないだろう。
そして彼の場合は、他の若い連中が、自分たちの世界で好き勝手に過ごしているのに、非難されず、真面目にやっているのに、ちょっとだけ世間から外れているような人が避難させているように見える今の世の中に大いなる不満を持っていた。
「そんなやつらは、俺が警察に入って、どんどん謙虚してやるわ」
と思っていたのだが、実際に入ってみると、警察官というものは、何の力もないことがよく分かった。
いわゆる、
「縦割り社会」
ハッキリ言えば。公務員というのがそういうものだということを、どうしてもっと早く気づかなかったのだろう?
ある意味、分かっていて、そんな社会も、
「この俺が変えてやろう」
などという、超が付くくらい、傲慢なことを考えていたのかも知れない。
だが、そんなことができるはずもなく。警察官はしょせん、
「上のいうことに逆らえない。逆らってしまうと、世の中を変えるどころか、自分の首が危なくなってしまう」
と考える。
「クビになっても、その覚悟を持って、立ち向かうんだ」
といってしまえば恰好はいいが、クビになってしまえば、どのように戦うというのだ?
権力もその力を発揮できる地盤がなければできない。その土俵の上に上がることすらできない人間に何ができるというのか。
それこそ、トレンディドラマが流行っていた頃の、キャリア組の人が、次第に現場の刑事に陶酔していく中で、言った言葉が思い出される。
キャリアが、
「お前は、自分の信念のもとに仕事がしたいか?」
と言われた、主人公の青年刑事が、
「はい、もちろんです」
というと、キャリアの人間が、少し微笑んで、
「だったら、偉くなれ、偉くなって、自分が好きなことができるだけの地位につかなければ何もできない」
と言ったのだ。
偉くなれということは、要するに、
「出世しろ。出世して、警部補や警部になって、捜査の指揮権を得られるくらいにならないと、自分の好きなような捜査はできっこない」
ということであった。
もっとも偉くなっても、まだその上にキャリアの人がいるのだから、上になったらなったで大変でもあるのだ。
平の刑事でいるのだから、そこまでは分からないだろう。そういう意味で、
「知らぬが仏」
とは、このことなのだろう。
今でもそのシーンは目に焼き付いていたのだった。
ただ、その先輩は、そんなキャリアの人とはまったく違い、出世とは無縁の人だった。その人を見ていると。
「自分も、出世など、まったく考えない警察官になりたい」
と思うようになった。
そういう意味では、門松署はちょうどいい環境にあった。大きな事件とは無縁だったことは、今のところ、自分としてはありがたかったのだ。
だが、そんな平和な毎日も、そんなに続くわけもない。その日の当直において、今までの自分の生活を覆すかのような事件が起きたのだ。
それが起こったのは、その日の当直でのことだった。その日は、普段なら、短い時間でも、熟睡できるのだが、その日は、熟睡できているつもりだったが、気が付けば、20分おきくらいに目が覚めていたのだった。
そんな状態が何度目かくらいだっただろうか? 夜中というよりも、早朝という時間だったのだが、刑事課の電話が鳴ったのだ。
福岡刑事は、一瞬、何が起こったのか分からないくらい、ビックリしていた。警察官としては、甚だ情けないのだが、それだけ、今まで何もなかったということを意味しているのだろう。
「はい、もしもし、門松署刑事課です」
といって、電話に出た。
すると、その先では、か細い声で、一人の女性が電話を掛けていた。
「もしもし、実は、私どもの主人が誘拐されまして」
という女性の声が入ってきた。
一瞬、何を言っているのか分からなかったが、すぐに我に返った福岡刑事は、頭をシャキッとさせて、話を聞く体制になった。
「どういうことでしょう?」
と、冷静になったついでに、彼はいろいろと考えてみたのだった。
「誘拐? こんな時間に?」
というのが、まず最初だった。
その次に考えたのが、
「どうして、刑事課の直通だったのだろう? 普通なら、110番に事件として入って、そこから、入電という形で連絡が入るのではないだろうか?」
例えば、
「県警より入電、門松署管内で誘拐事件発生」
などという風にである。
ただ、そうなると、すべてが明るみになってしまい、まずいだろう。特に誘拐事件などというと、犯人を刺激してはいけないということで、普通であれば、
「警察に連絡すれば、誘拐した人物の命はない」
などという感じである。
普通であれば、逆探知の装置を持って警察が、誘拐犯からの電話を待っているという形なのだろうが、今の時代は違うのだろうか?
そんなことを考えていると、
「営利誘拐だとするなら、当然、金を持っている人間を誘拐することになる。それに、普通なら子供を誘拐して、親に身代金を要求するものなのだろうが、そんな雰囲気でもない。つまり、誘拐されたのは、ご主人ということは、家族に身代金を出させるか、それともっ主人がどこかの社長か何かで、会社を揺すろうとしているのかとも考えられる。そうなると、顧問弁護士などがいるだろうから、まずは、そっちに相談するだろう。そこで善後策を練っていたのだとすれば、電話を掛けてきたのも、そして時間帯がこの時間だということも、分かる気がする。大げさにはしたくないということだろう」
ということが頭の中で整理ができたのだった。
「ゆっくりと、敬意をご説明願えますでしょうか? ちなみに、犯人は、警察には知らせるな、というようなことは言わなかったんでしょうか?」
と聞くと、
「ええ、警察へ知らせるなとは一言も言いませんでした。だから、まず弁護士さんに相談して、それで警察にとりあえず、連絡を入れてくださいと言われたんです。でも、犯人を刺激したくないので、110番で掛けると、この事件が白日の下に晒されてしまう。それも犯人を刺激することになるので、少し危険だと言われたんですね。だから、刑事課の直通にかけたんです。これは弁護士さんの指示ですね」
ということであった。
なるほど、弁護士というのは、なかなかの切れ者のようだ。やはり被害者は、どこかの社長か、あるいは、政治家か、あるいは、身代金が取れるくらいに著名人ではないかということは、伺えるのであった。
それにしても、犯人側からすれば、誘拐したということであれば、まず最初に、
「警察には連絡するな」
というのが、一番の筋ではないか?
警察に乗り出してこられるのが一番厄介なのは当然のこととして、それを口にしておくのには、もう一つ大きな意味があるのではないかと思えた。
というのは、
「犯罪のリアリティ」
である。
犯人側から、
「警察には連絡するな」
と、最初に言っておけば、ある意味、脅迫にもなるのだ。そういう意味で、そのことを口にするのは、早ければ早い方がいい。
「こちらが誘拐したんだ」
ということを言った後であれば、早めに言って、相手に、
「これは冗談ではないリアルなことだ」
という証明にもなるのだ。
「俺たちは、お前のところの主人を誘拐して身代金を要求しているんだ」
というシナリオを、
「警察には知らせるな」
という一言で、すべてを理解させるだけの言葉の魔力だといってもいいだろう。
だが、相手の犯人は、それを言わなかった。最初に言わないどころか最後まで言わなかったのだ。これでは、誘拐などという大それた事件を引き起こすだけの資格も何もないように思えてならない。一体何を考えているのだろう。
一人でできる犯罪でないことは分かり切っている。入念な犯罪計画が練られたはずだし、少なくとも本当に誘拐に成功したのだとすれば、それができるくらいの頭は持ち合わせているはずである。
だから、犯人グループがバカだと思えない。しかし、これだけの犯罪を犯すのであれば、細部に至るところまで計画は出来上がっているはずである。それなのに、こんな初歩的なミスを犯すというのは、信じがたい。電話を掛けるにしても、最初に原稿くらいは作っておくだろう。それすらもしていないのだとすれば、何ともお粗末な犯人だといってもいいだろう。
だから、犯人が、
「警察にはいうな」
ということを言わなかったということは、最初から計画のうちであり、そうなると、今被害者側が警察に連絡を入れているのも、最初から分かっているということだろう。
もし、誘拐が本当だとすると、犯人グループの狙いは何であろう。営利誘拐など、成功する確率は非常に低いと思われる。いくらの身代金を要求するのか分からないが、計画を立て、そして、人を集め、さらに犯行を実行。皆で一緒に一つのことをしているというよりも、役割分担をしていることは分かり切っている。
誘拐するための実行犯、そして、拉致してくれば、監禁するための場所と要因が必要である。
その場所も完全な密室だったり、人とかかわりのない場所に監禁するなど、ひょっとすると、犯人グループは、そんな私有地のような場所を持っているのかも知れない。
そう考えると、
「やつらは、一体、いくら持っているんだろう?」
ということになる。
だったら、身代金誘拐というのは、少し辻褄が合わないのではないだろうか?
誘拐するくらい、計画の段階でかかるだけのお金があるのであれば、身代金は、数千万では足りないのではないかと思える。いくら、有名企業の社長と言えども、さすがに億単位になると、却って目立ってしまう。秘密裏に行うということは難しいであろう。それこそ、割に合わないと言えるのではないか?
だとすると、お金がないからの誘拐だということになる。しかし、お金がないと計画しても実行などできない。金で第三者を巻き込むというのであれば、身代金を受け取っても、口を封じる必要がある。そうなると、一体いくらくらい必要だというのか、それも身代金を受け取った成功報酬だとするならば、普通のはした金ではどうしようもない、
となると、もう一つの目的として、
「目的は金ではなく、被害者自身の命ではないだろうか?」
といえるのだ。
そうなると、今度は警察に言わないでほしいというのは、もっときつくいうはずだ。それもないということは、
「一体、犯人は何を考えているのだろう?」
ということであった。
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