第14話 そうなんだ……(神園詩音side)
小春に真砂希のことを相談してから数日が経った。
相変わらず真砂希とは一切話せていない日々が続いていたそんな日の放課後、突然小春に屋上に呼び出された。
「どうしたの小春? わざわざこんな場所に呼び出して」
「桜木くんに詩音を避けている理由を訊いてくれないって言ってたでしょ。訊いてきたから話そうと思って」
「本当!? 訊けたの? それで……どうだって?」
真砂希、私以外の人とは話したんだ……そう思いながら私が尋ねると小春はやけに真面目な、深刻そうな顔を私に向けた。そんな彼女の様子に思わず背筋に嫌なものが走る。
「落ち着いて聞いてね。……その桜木くん、詩音のことが苦手なんだって」
「……」
真砂希が私のことを苦手……?日本語としては分かるが意味が分からない。
「頼んでもないのにお節介を焼きすぎで鬱陶しいって、それでこれからもうその……一生近付いてほしくないんだって」
「そう……なんだ」
真砂希がそんなことを思っていたなんて知らなかった。でも幼馴染をやめよう、そう言っていた理由としては確かに当てはまる。
なんで真砂希が私と小林くんが付き合っているのか勘違いしているのか、その部分に関しての理由が真砂希の口からは語られていないけれど、小春に何も言っていないということは少なくとも私が小林くんに提案されしたことについては知らない。つまり、それは関係がなく、私から離れるために適当に吐いた話というのが正解なのかなと思った。
「なんかごめんね……?」
思わず呆然としてしまっている私に、嫌な気分にさせるようなことを話したと思ったからか小春は申し訳なさそうな声で謝ってきたが、私は大丈夫、こちらこそごめんねと返した。
流れる沈黙に耐えかねたのか、それじゃあ私は帰るからと言って一人帰ってしまった小春の背中をぼうっと眺めているうちに、小春の話していた日本語の意味が呑み込めてきて、途端に目の前の世界が歪んできた。
そんな中、突然肩に手が置かれた。
「神園? 何泣いてるの?」
パッと背後を振り返るとそこには小林くんが立っていた。……思ったのは真砂希をいじめている主犯であるということだけ。
だから思わず冷たい声が出た。
「何の用?」
「いや、大変だなって思って。あんなやつを幼馴染に持った神園も不幸だよな。優しさをお節介って言っていらないとか、呆れて言葉も出ないわ」
「なんで知ってるの?」
「ごめん……。ちょっと屋上で空気吸おうと思って来たらたまたま聞こえちゃったからさ」
じっと彼の顔を見つめる。特に何も読み取れない表情。
「そんなやつ止めておいてもっと次の出会い探しなよ。その方が絶対に神園のためになるし。というかこの後暇だったりする? 俺で良かったら相談とかのるけど」
「……」
「どう?」
私の肩に手を置こうとしてくる彼。もう何もわからなかったけれど反射的に私の手は彼の腕を払いのけた。
「ごめんなさい」
私はそうとだけ言うととっととその場を後にした。
階段を駆け下りながらスマホを開いて、届かないことを知っているメールにごめんねお節介でと送る。
いつまで経っても既読のつかないメール。無駄なことだとわかっていても真砂希、真砂希、真砂希、真砂希、真砂希、真砂希、真砂希と同じ文章を連投をする。
「真砂希……、お願いだから返事くらいしてよ」
真砂希の名前を心の中で必死に叫びながら、何をどうすればいいのかもわからないまま、取り敢えず学校を出て真砂希の家まで走る。
そんな状態だったからだろうか、周りの見えていなかった私の体は突然何かにぶつかると空に浮いた。
全身を襲う鋭い痛み。
突然上がった悲鳴に何が起こったのかもわからぬまま薄れゆく意識。誰かが私に声をかけている気もするけれど、それもよくわからなかった。
「真砂希、真砂希、真砂……」
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十万文字書けないなと思う今日この頃
荒れたら逃げます
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