472

 どんな魔物であろうと耐えるの事のできない必殺の一撃。それがデッドクラウンの胸を貫いた!

 手応えがあった。君の手に、勝利を確信させる手応えが。


 しかし流石に不死の魔物。デッドクラウンは自ら刃を掴み、引き抜く。

 だがもはや戦う力など微塵も無い事は、君も、敵もわかっていた。

 道化の仮面の下で敵が呻く。


「ああ、見事だとも。これほどの騎士ならば認めてやろう。我が祖国は私の軍門に降った、私の方が上だった! ただお前がいたから、私の支配はここまでだったのだと、な」

 血も流れない傷口を抑え、デッドクラウンはよろよろと後ろへ退く。その先は‥‥壁の無い最上階の端、最も深い谷が下に口を開ける所だ。

「ここまで来れた貴様の剣は受けてやったが、エインシェント国の腰抜けどもになど、我が破片の一つとして鞭うたせるものかよ‥‥」

 そう言うと、彼は身を投げた。


 君は最上階の端まで行き、千尋の谷を見下ろす。

 当然、妖術師の躯など見えよう筈もなかった。広大な山脈の谷底のどこかで、彼は怨霊となり、永遠にエインシェント国を呪うのだろう。


 その谷に陽の光がさす。夜が明けたのだ。

 日輪の輝きはこの最上階をも照らした。その眩しさを少しの間感じ取り‥‥君は最上階を降りる階段へと向かう。

 王に勝利を報告せねばならない。

https://kakuyomu.jp/works/16817330663030599833/episodes/16817330663790408585

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る